ダイヤ | 東京夜時

東京夜時

宇都宮秀男によるコラム。月木更新。

昨夜、学生時代からの友人である
よっちゃんと飯を食いに行った。

彼女は今、医者として働いている。

慶応義塾大学の法学部から大手メーカーに就職し、
あまりに仕事に向かなかったのか
泣きながらの電話相談を受けたことを覚えている。
その後、すぐに辞めて、猛勉強して1年足らずで医学部に入学。
そして現在に至っている。

「石の上にも三年」と言うけど、時に例外もあるのだ。

先の熊本地震では救援にかけつけ、
それが日経新聞に紹介されたらしい。

その時の記事はこちら
上から2番目の写真が彼女である。

めちゃめちゃ嬉しかったなぁ。

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よっちゃんとは、学生時代、国際協力のNGOで知り合った。

当時から海外を含め苦しんでいる人たちの役に立ちたいという
思いをを強くもっていた。

彼女ともう1人仲のいい友人と
別府・熊本に旅行に行ったことがある。
楽しい熊本を知っているからこそ、
苦しんでいる熊本の力になれたことを誇りに感じていた。

「仕事がハードすぎてなかなか人と約束ができない」と言っていたけど、
医療のことを語る彼女の眼はダイヤのようにキラキラと輝いていた。

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終電間際の恵比寿駅ホームにつくと、
ぎゅうぎゅう詰めの満員電車に2人のおばさんが駆け込んだ。

1人はなんとか間に合ったが、
1人は乗れないままドアが閉まろうとした。

その時、間に合ったおばさんが、
いきなり身を乗り出してドアが閉まるのを食い止めた。
その瞬間、ドアが開いた。

「ほら、早く乗って!」

気の強そうなおばさんだった。
しかしもう1人の乗り遅れた気の優しそうなおばさんは
遠慮して手を横に振り、ドアは再び閉まろうとした。

しかし、またおばさんが体当たりして
ドアが閉まるのを食い止めた。

「ほら、早く!!」

乗客は冷たい視線を浴びせていたが、
山手線のダイヤを乱してでも、
身を張って友人を乗せようとする姿が妙に心地よかった。

そのやりとりがさらに何度かあったが、
結局、もう1人の友人は乗れないまま電車は過ぎ去った。

いいシーンを見させてもらった。
体当たりしたおばさん、きっと車内では居心地悪かったにちがいない。
でも僕は感謝している。