久しぶりに大がかりな芝居をやりたいなんて考えた。思えば池袋に貸し劇場のシアターKASSAIを開設した2010年からは、ずっとこの80名キャパの小さな劇場での公演を続けてきた。初めの内は持ち小屋の稼働率を上げる為だった。しかしKASSAIの認知度が高まり、貸し劇場として賑わい始めてからもほとんどの公演をシアターKASSAIで打ち続けてきた。何と言っても自前の小屋での自由度の高さがあったからだ。その間、昔書いた大人数が出る芝居、大掛かりな舞台美術や広さが必要な演目は封印してきた。
そして、東池袋の再開発に伴う立ち退きでシアターKASSAIが閉館した今、東京ストーリーテラーは活動拠点を新宿のスペースBANRAIに移した。KASSAIとほぼ同規模の、オープン間もない劇場だ。様々な条件の良さから考えると、暫くはここを使い続ける事になるだろう。でも、東京芸術劇場の小ホールや、今は閉館してしまったシアターV赤坂と言ったキャパ250~300人規模の劇場で20年前には普通にやっていた様な演目もまたやりたい。KASSAIやBANRAIみたいな小さな劇場でやる芝居も大好きだが、もっと大きな劇場じゃないと出来ない芝居もまたやりたい、そう思ったのだ。特に、これは絶対にやりたいという演目が一本あった。2006年にシアターV赤坂で上演したきり、一度も再演した事のない時代劇「かりすま」という芝居だ。これは死ぬ前に何とか一度は再演したい、そういう思いが沸々と湧いてきた。死ぬ前に一度は…そうだ、自分では老いた自覚は乏しいが、古希を迎えた今、常識的に考えたら残された時間は本当に少ない。やっぱりちゃんと考えよう。そして、これまで続けて来た演劇人生の締めくくり、これを一つの終活としよう。そう考えたら何だかワクワクしてきた。時代劇の上演には金がかかる。ましてやこの「かりすま」という演目、舞台一面に広がる捕り方に囲まれた主人公が、屋根に登り、大見栄を切る、そんな芝居だ。恐らく一年やそこらの準備期間では上演出来ないだろう。数年かけて準備する必要がある。だとしたらそれも終活にはぴったりだ。初演時には百着を超える着物を使った。当時の私は劇団を主宰していて、初演のこの舞台は劇団員の献身があって初めて成立した舞台だった。あの頃の劇団員には今も本当に感謝している。しかし、公演ごとにフリーの役者や他団体所属の役者が集まって芝居を創る演劇ユニットの東京ストーリーテラーでこれをやるとなったら、まずは団体としての体力作りが必要だ。資金、出演してくれる役者、スタッフ集めが大変な事になる。とりあえず、三年を目途に、その間の一つ一つの公演を大切に創り上げよう。これまでウチを支えてくれた仲間達と力を合わせ、新しく出会う人達との縁を大切に、チーム創りを始めよう。そんな事を考え始めたら、何だか心躍る終活が見えてきた。

東京ストーリーテラー2026年夏公演
「点描の絆」幕を降ろしました。
ご来場頂いた多くの皆様に心より感謝申し上げます。

↑Aチーム出演者
前列左から、箆津弘順、稲益佑亮、鈴木達夫、森原輝、
後列左から、青木奏、縞典花、山下香織、波子、庄司勉、
大塚紘子、加藤敦洋、本宮未晴、横山陽向
Bチーム出演者
前列左から、箆津弘順、森裕雅、上野照真、高木朋広、
後列左から、若林佳吾、堀北輝、岩崎さとし、西沢ゆかり、
三崎ゆきこ、本宮未晴、横山陽向、日南田果鈴、亀井千寛
ご来場頂いた多くの皆様に心より感謝申し上げます。
アンケートで寄せられたお客様の声を、公式サイト
に掲載いたしました。是非、ごらんください。


