ハープスターが衝撃的な勝ちっぷりで桜花賞を制覇【スポーツナビ】
JRA3歳牝馬クラシック第一冠、第74回GI桜花賞が13日、阪神競馬場1600メートル芝で開催され、川田将雅騎乗の断然1番人気ハープスター(牝3=栗東・松田博厩舎、父ディープインパクト)が優勝。最後方追走から直線大外を豪快に伸び、全馬まとめて差し切る離れ業で初のGIタイトルを手にした。良馬場の勝ちタイムは1分33秒3。
ハープスターは今回の勝利でJRA通算5戦4勝。重賞は2013年GIII新潟2歳S、14年GIIIチューリップ賞に続き3勝目。騎乗した川田は桜花賞初勝利、同馬を管理する松田博資調教師は93年ベガ、09年ブエナビスタ、11年マルセリーナに続き桜花賞4勝目となった。
クビ差の2着には2番人気だった昨年の2歳女王、戸崎圭太騎乗のレッドリヴェール(牝3=栗東・須貝厩舎)。さらに3/4馬身差の3着には岩田康誠騎乗の5番人気ヌーヴォレコルト(牝3=美浦・斎藤厩舎)が入った。
まるで、格が違う、とばかりに
「最後はレッドリヴェールと馬体が合う形になりましたが、ひるむことなくアッサリかわしてくれましたね」(川田)
パトロールビデオを見ると分かるのだが、外から猛然と迫るハープスターに対し、戸崎レッドリヴェールは馬体がぶつかるギリギリくらいまで併せに行っている。急激にインから他馬に迫られては、普通ならひるんで外に逃げたり、スピードを緩めてしまうもの。しかしハープスターは違った。川田が語ったように実に“アッサリ”とパスしていったのだ。まるで、格が違う、とばかりに。
4角最後方、普通の馬ならば絶望的な位置
「リズムを取って乗ることだけを考えていました。直線で追い出せば必ず届いてくれると、強い思いで信じていました」
とはいっても、今年の桜花賞の流れは特殊だった。横山和生フクノドリームが敢然と逃げ、最初の半マイルが45秒3。これは阪神マイルがゆったりと走れる外回りコースとなってからは、最速の超ハイペース。すでに死滅してしまったと思っていた“魔の桜花賞ペース”という言葉がふと浮かんだ。こういうときは何かとんでもない波乱が起きるものである。事実、フクノドリームが直線入り口に差しかかっても、ハープスターは依然として最後方で、しかも4コーナーの大外をぐるりと回っている。その差はまだ15馬身くらいはあっただろうか。普通の馬だったら、絶望的な位置だ。
ハープスターの馬券を握りしめていたファンはこの時、何を思っただろうか? それでもなおハープスターは勝つと信じていただろうか? それとも差して届かずの場面が頭をよぎっただろうか?
オークスから凱旋門賞へ
「ゴールまでに全馬捕まえられるだろうと思っていました。ヤバイと思う瞬間はなかったですね」
さすがに今回はいい展開ではなかった、と川田自身も認めてはいるものの、それでもなお負けるイメージが浮かぶ瞬間さえなかったなんて……繰り返しになるが、ハープスターは恐ろしい。そして、だからこそ、この先が楽しみで仕方ない。
“この先”の話に関して、松田博調教師は「オーナーと相談して決めることになると思いますが、どうなるんですかね? 私は分からないです」と、含み笑いしながらの返答。もちろん、これはすっとぼけただけで、次走は5月25日の牝馬クラシック二冠目、GIオークス(東京2400メートル芝)が既定路線だ。
「距離はもつと思いますね」と話したのは生産牧場ノーザンファームの吉田勝己代表。オークス後はフランスのロンシャン競馬場で秋に開催される世界一の芝レース・凱旋門賞への挑戦もにらんでおり、すでに登録は完了。吉田代表はこの場で明言こそしなかったものの、「ハープスターは完全にヨーロッパ血統ですからね」と、すでにその視線は府中2400メートルではなく、ロンシャン2400メートルを見ているようだった。
「負けられない馬になった」
「桜花賞でこれだけ強い勝ち方をしたので、余計に負けられない馬になりましたね。ひとつ、ひとつ、取りこぼさないようにしていきたい」
他陣営には申し訳ないが、この1戦で同世代との勝負づけはすでに終わってしまった印象だ。次のオークスは“世界”へ挑戦状を突きつけるデモンストレーションになるのだろう。日本にはキズナだけじゃない、ハープスターがいるぞ、と。