R-5 成功とはある種の既得権である | INCORPORATE REPORT SEASON4 『CODE MAKER』

R-5 成功とはある種の既得権である

たとえば、ひとりの女優がいるとします。

彼女はブレイクして、テレビやCM、映画に出たいと思っています。


これがマンガやドラマなら、スポ根ばりに泣いて努力して、どろどろの人間関係にまみれて頑張れば、「予定調和」的にラストはハッピーエンドになったりしますが、実際は、どうやらそうではないようです。

表向きにはフェアなオーディションやコンテストなど、広く門戸が開かれているように見えて、実際には蜘蛛の巣のように、「ブレイクさせるための方法」が張り巡らされています。


どの事務所に所属して、どのプロデューサーにつき、どのPR会社に依頼すれば、そこからコネクションが派生しているから、上り詰めやすくなる、という、知る人ぞ知るルートが存在します。

もっとも、その女優に実力がなければ意味がありませんが、たとえば、同じ実力であれば、確実にそのルートを知っていた方が、成功の可能性が高くなります。


最近でも、韓国などではいわゆる「枕営業」をトップの女優が強制させられていたという話がありましたが、もしこれが事実であれば、この方法は実にシンプルな「裏技」なのだと思います。

実際は、とくに日本は、もっと巧妙かつ複雑になっています。

芸能界に限らず、ブレイクしようとすれば、知る人ぞ知るルートに乗るのが一番の近道であり、これは実に巧妙に入り組んでいて、外からはなかなか見えない仕組みになっているのだと思います。


すなわち、成功への手段も、既得権益化している。


この蜘蛛の巣を握っている人が、最大の力を持ち、つまりは最大の利益を享受することになります。


そうだとすれば、夢を思い描くとは、なんと窮屈なことでしょうか。

真っ正面からぶつかっていっても、かなりの確率で跳ね返されます。既得権者の気まぐれで、成功を手に入れられないこともないですが、そんなの宝くじのような確率でしょう。


「やっぱり、現実は厳しいよね」


そう、何も知らずに、素直に挑戦の舞台から降りる人が、おそらく、数多くいるのだと思います。


もしそうなら、人生とは、実につまらないものです。

何も、既得権というのは、旧来の政治家などの権力者に付随した言葉ではなく、我々の本当に直ぐ側にあるのだと思います。


あなたの業界にもいませんか。

あなたの職場にもいませんか。


既得権にどっぷりとつかって、それを保持することに全力を注いで、新しい芽が生まれるのを阻害している存在を、結構、近くに見つけることができるのだろうと思います。


有り体に申し上げますと、僕はこの既得権というものをぶっ壊したいと思っております。


理由は簡単です。面白くないからです。


若者の夢やチャレンジング精神を、まるでコンクリートでふたをするかのような社会は、間違いなく衰退します。もしかして、様々な分野で、日本の競争力が落ちているのは、この「コンクリートのふた」が強固なためではないでしょうか。


戦後、日本人は、広大な焼け野原に呆然と佇みました。

ですが一方で、これは既得権の多くが消滅したということでもあります。

けれども、高度成長期を経て、ビルが林立し、社会が爛熟すると、また既得権が社会の隅々まで張り巡らされるようになってきて、若者が自由に夢を思い描くことが難しい社会になってしまいました。


たとえば、江戸時代末期には260年以上にわたって張り巡らされた既得権で日本という国ががんじがらめとなっておりました。


これに対して、「おもしろくない」と思った若者達が起ち上がったのが明治維新です。

ここで一つ断っておくと、別に尊皇攘夷だ開国派だどうのという高尚な政治理論は、はっきりいってしまえば、どうでもいいのです。ここでより重要なのは、「おもしろくない」という、感情論的な想いなのだと思います。

「おもしろくない」は、やがて、「だったら、自分たちで変えてやろう」という想いに変わります。

その想いが、集まれば、社会に変革がもたらされることになる。


べつに、総理大臣になって日本を変えてくれ、と言っているのではありません。

ひとりひとりは、自分が戦うべき持ち場において、戦えばいいのだと思います。


僕は僕が戦うべき場所において、実に「おもしろくない」既得権をぶち壊すべく、ここにささやかながら、宣戦を布告したいと思います。


たしかに、きれいな理想を並べて、それを胸にしまって、一生懸命壁にぶち当たり続けるのも話としては美しい。

けれども、それは決して、勝つための賢いやり方ではない。


日本人は、特に我々の年代も含めて若者は、すこし、行儀がよくなりすぎたのではないでしょうか。


「おもしろくない!」


そう声高に叫んで、牙を剥き出しにして「おもしろくない」対象と戦う気概が必要なのではないでしょうか。


そして、それは他でもない、あなたにもできることです。