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a beautiful tomorrow yea

 
 
歴史があることは素晴らしい。けれども、だからといって無敵ではない。経済的または戦略的な不幸から、かつての栄光に影を落とした歴史あるメディアブランドが無数にあるのだ。不景気は巨大メディアブランドの慢心を変える。不安定な時代には、人々は親しみのあるものに頼るのだ。成功するブランドとは、一貫しているものです。

―マーク・タンゲート(イギリス人ジャーナリスト)

 

の終わりとの始まり

 

が深まってきた。11月が始まった頃は雲ひとつない秋晴れが続き、11月6日(金)にブログを更新したものの、早いものであれから10日ほどが経過した。前回のブログでは、ヘルマン・ヘッセの「秋のが灰色の森の中をかき乱した」を引用したが、同週末の日曜日は、小が降る銀座でランチをいただき、ショッピングから帰宅後、それについていくつかツイートした。

 

が降る東京都心の日曜日夕方、超高層階に位置する自宅リビングで、ソニーの大画面TVのチャンネルFOXムーヴィーに合わせると、ジョン・トラボルタ主演作『パリより愛をこめて』(2010年・仏)が、翌月曜日の早朝には、シドニー・ポラック監督作『雨のニューオーリンズ』(1965年・米)が放映されていたことを未だ鮮明に記憶している。そして新しい週を迎えた都心の天気は、それまでの秋晴れが嘘のように、小の日が続いたのだ。

 
俺自身、この10日間もまた会食の日々が続いたとはいえ、各々の記憶は鮮明に残っているが、そんな先週末に起こったパリ同時多発テロについて、ここで言及するつもりはないが、G20が「テロと戦う」特別声明を表明し、トルコ大統領が「全人類に対する容認することのできない侮辱」と強く非難し、トルコで開催された同首脳会議は閉幕した。

 

クラリッジスのクリスマスツリー

 

最近の東京都心の気温は20度前後で推移しているゆえ、まだカシミアコートも必要なく、本格的なの到来はまだまだ先だと思われるが、ロンドンのメイフェアに位置する老舗高級ホテル「Claridge's(クラリッジス)」の、恒例となったクリスマスツリーが16日(現地時間)にお披露目された。同ホテルの、世界的にも有名なこのクリスマスツリーに関しては、以前のブログでも毎年のように取り上げているが、私的にベストだと思ったのは、ジョン・ガリアーノのデザインによるそれだが、2009年12月8日()付ブログ “Maison Hermes Window Display by Tokujin Yoshioka”の中で取り上げたので、興味がある方はどうぞ。

 
そんな世界が注目するクリスマスツリーを今年デザインしたのが、10月17日()付ブログ“Go forward into the future”の中で取り上げた英国の老舗ブランド『バーバリー』社の現CCOCEOである<クリストファー・ベイリー>その人であり、同ブランドの新宿新旗艦店を記念し、彼は10月に来日を果たしたばかりだが、そのニュースは、俺に限らずとも、ファッションに興味がある方にとっては記憶に新しいはずだ。

 

そう、10月のブログで、<バーバリーのアイテムを何ひとつ所有していない、同ブランドに全く関心のなかった俺が、同ブランドに目を向け始めたのは、バーバリーの最高峰ラインでありコレクションラインである「進化するバーバリー」こと「Burberry Prorsum(バーバリー・プローサム)」が世に登場して以降だろうか。同ブランドのデザイナーを務めるクリストファー・ベイリーについて補足すると、彼は他でもないトム・フォード・チルドレン(トム・フォードの下で、1996年から2001年までの5年間、グッチのウィメンズのデザイナーを務めた)のひとりであり、俺同様、音楽をこよなく愛する男なのだ>と記したばかりだったが、

 

周知のとおり、WWDサイトによる11月5日付の「バーバリーが3コレクションを1レーベルに統合」というニュースは、私的には衝撃的で、訳の分からない、そして俺を再びバーバリーから遠ざけるそれだったとも言えよう(笑)。そこには次のように説明されていた。

 

バーバリーは、「バーバリー プローサム」「バーバリー ロンドン」「バーバリー ブリット」の3つのコレクションを「バーバリー」レーベルに統合する。理由について、クリストファー・ベイリー=バーバリー・チーフ・クリエイティブ兼エグゼクティブ・オフィサーは、「ブランドの一貫性を図るためだ」と語った。「バーバリー」は2016年夏から店頭に並ぶ予定で、ブランドの統合は同年末までに完了させる。

 

したがって、「進化するバーバリー」こと『Burberry Prorsum』のブランド名はこの世から消え、今後はすべて「Burberry」レーベルに統一されるのだ。このニュースは、もう永久に、俺に「バーバリーよ、さよなら」と言わせる、そんな決定的なお別れになったような気がしてならない。そもそも、イタリア発のファッションブランドMade in Italy)をこよなく愛する俺にとって、英国発のファッションブランドには全く興味がなかったとはいえ、デヴィッド・ボウイがツアー衣装にマックィーンのそれを採用するなど、かつてボウイが身に纏ったという理由だけで、(以前にも何度か取り上げた)故・英国人デザイナー<アレキサンダー・マックィーン>のファッションに興味をもっていた時期があったというのは事実だ。そしてブランドとは?

 

今ふと思い出したが、俺のお気に入り画家のひとり<ジャクソン・ポロック>は、次のような名言を残している。

 

私はイメージを破壊することを怖れない。

なぜなら絵画はそれ自身の命を持っているからだ。

―ジャクソン・ポロック

 

付け加えるならば、ブランドを定義する際、ダリル・トラヴィスの言葉を借りれば、ブランドとは「本来備わっている価値を示す暗黙の了解である」「期待に応えることである」「顧客との品質保証契約である」「暗黙の保証書である」「誠実さの標章である」「評判である」などなど、高価格でも顧客の心を掴むことを可能にしているのだ。

 

アルマーニ自伝

 

現在、アルマーニ銀座タワー1Fにおいて、アルマーニ社創立40周年を記念したアルマーニの自叙伝(伊・リッツォーリ社より刊行)が部数限定で販売されている(アルマーニの40年に及ぶファッションの歴史を辿った写真集といった感が強い。また印税は全額、ユニセフに寄付される)が、今から10年半ほど前に、アルマーニが来日した際、同ビル1Fでお会いしたアルマーニ氏の鋭くも優しいあの眼差しを、俺自身生涯忘れることはないと思うが、2005年4月2日から6月5日までの期間、六本木ヒルズ森アーツセンターギャラリーにおいて、奇跡の大回顧展として『ジョルジオ・アルマーニ展』が開催された。当時2冊購入した同企画展のカタログの中で、とりわけ私的に印象に残っている一節を、以下一部抜粋して紹介したい。

 

アルマーニのスタイルは人を驚かせる。威厳とセックスとの間の、そしてまた衣装と権力との間の葛藤を取り除くのだ。またそれは、社会的少数グループやセクシュアリティの解放というレヴェルで感性を刺激する美の形を生みだす

 

空想や官能の世界に対してオープンでありながら、その普及や大衆文化への浸透を通して公共的な重要性を獲得する。自己愛的商品を作り出すが、それはもはや機能性のみついて基づいてデザインされるのではなく、性や地位といった象徴的な帰属化のモデルによってデザインされる。

 

スタイルを変えることによって、ローカルなモードからインターナショナルなモードへと移る自由を与えるが、これは、世界中の人々に、快適で、特権的で、エレガントではあるが冒険的でもある生活への憧れを持たせたブルジョワ的理想の世界化および普遍化という減少と符合している。

 

アルマーニのスタイルは、中流的趣味の現代化という流れの一部であると言える。というのも、それは審美眼的価値の供給というレヴェルにおいて、エリートだけのためのものではなく、大衆のためのものであるようなラッピングまたは衣装を与えるからである。

 

価格的には最高級の部類になるかもしれないが、アルマーニの製品は、世界の市民の洗練度の向上を反映している。世界の市民は、快楽主義や見せ物的な面白さへの志向を超えて、高度に意識化された自己の探究へと向かっているようだ。

―ジェルマーノ・チェラント

 


最後になるが、静まり返った深夜に「自己の探究
という言葉が頭から離れないが、来月4日(金)には、英国を代表するロックバンド<コールドプレイ>の新作が、
 
そして来年1月8日(金)には世界を代表するロックスター<デヴィッド・ボウイ>の新作がそれぞれリリースされる。Can’t wait! 

 
時計の針は今、11月17日(火)の24時20分をゆっくりと回った。

 

Good night!