Heaven knows I was just a young boy | In The Groove

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a beautiful tomorrow yea

  
シンディ・クロフォードは、ただのモデルではなく、スーパーモデルだった。
新しいのはその言葉自体ではなく、その現象だ。クロフォードの先輩のドリアン・リーは、クロフォードと同じように飛行機で飛びまわって仕事をし、自由で気ままな暮らしをし、行く先々で大きな話題やスキャンダルを巻き起こした。だが、クロフォードや、クラウディア・シファーリンダ・エヴァンジェリスタナオミ・キャンベルクリスティ・ターリントン、ステファニー・シーモア、ポーリーナ・ポリツィコヴァなどは、体だけが売り物ではない偉大な存在になっている。

 

彼女たちは何百万人という人々の投影であり、現代的な魅力の宝庫であり、全盛期のハリウッドの映画スターに劣らず有名で、大きな影響力をもっている。90年代のスーパーモデルは、商品イメージを利用することによっていっそうの発展を遂げた工業社会の偶像、象徴だ。写真や広告(そして、ときには実生活)のなかでイメージを売る商人の手によって、こんにちのモデルは服や化粧品ばかりか、ライフスタイルという名の虚構も売っている。製品の売り上げを伸ばすために、デザイナーやフォトグラファーやファッション雑誌はこぞって話を作り上げるのだが、そうした話の中心となるのが、モデルたちだ。男の子がスポーツ選手に憧れるのと同じく、現代の女の子はシンディやクラウディアやナオミのようになりたがり、グラビア雑誌で紹介されるスーパーモデルとそっくりな生活を送りたいと思っている。

 

女の子はみんなシンディになりたがっています」と言うのは、モデル・スカウトのトゥルーディ・タプスコットだ。「シンディはきれいなだけじゃありません。頭がよく、大学へ行き、仕事で成功をおさめ、世界一すてきな男性と結婚しました。夢をすべて実現した女性のシンボルなんです

マイケル・フロス著『トップモデル きれいな女の汚い商売』より

(原題「MODEL: The Ugly Business of Beautiful Women」)』(1995年

 

のブログ

 

今夜は、ジ・アントラーズが昨年6月にリリースしたニューアルバム“Familiars”をBGMに選択し、気まぐれにブログを書き始めたが、昨のちょうど今頃、2014年9月26日(金)付ブログ“This place has changed for good”では、ガブリエル・ガルシア=マルケスの名言「何を生きたか、ではない。何を記憶し、どのように語るか。それが人生だ」を引用し、長崎県の軍艦島をはじめ、シンディ・クロフォードが訪れた(1983年に世界遺産に登録された)15世紀のインカ帝国<マチュ・ピチュ遺跡>、そして誘惑の秋について、色々と書き綴ったが、早いものであれからもう1年が経過した。当時のブログから、一部抜粋して紹介したい。

 

1970年代生まれの俺が、この軍艦島を知るきっかけとなったのは、1982年のAC公共広告機構のTVCMだ。最近、同CMYouTubeで改めて観てみたが、高度成長期に、日本の近代化における基幹的役割を担った黒いダイヤモンド「石炭」が、その後、国のエネルギー政策の方向転換により、不要となったのだ。この島には、石炭が発見された1810年(文化7年)から、1974年(昭和49年)の閉山までの164年間(三菱社の端島買収から84年)のさまざまな歴史があるはずだ。

 

CMがオンエアされた翌1983年にリリースされたのが、他でもないデヴィッド・ボウイのアルバム『レッツ・ダンス』だった。それは、日本経済のバブル前夜にあたり、バブル絶頂期の80年代末には、シンディ・クロフォードをはじめとする非現実的な、完璧な肉体を持つ、スーパーモデルたちが登場し、華々しくもてはやされた時代だった。

 

ニューヨークも東京も、快楽主義者の楽園に変貌し、時代は正に、狂乱の80年代のピークを迎えたのだ。当時のバブルを象徴する代名詞が、アルマーニとシャンパンだろうか。あの時代の空気は、レオナルド・ディカプリオ主演作『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年)や、クリスチャン・ベール主演作『アメリカン・サイコ』の世界観そのものだろう。誤解のないように付け加えておくが、シンディはバブル世代だが、ディカプリオや俺は70年代生まれゆえ、バブル世代ではないので、あしからず。

 

1990年

 

英国を代表するロックスター<デヴィッド・ボウイ>のアルバム『Let’s Dance』がリリースされた1983年当時、俺はただの子供だったが、それから7年の歳月が経過し、日本経済のバブル絶頂期にあたる1990年、俺は生意気にも、アルマーニの高級服を身に纏い、高級スポーツカーに乗り、優雅な大学生を気取っていたが、当時、流行っていた曲のひとつが、生涯忘れることはないであろう、同じく英国のロックスター<ジョージ・マイケル>の名曲“Freedom '90”だった。そして俺は、ニューヨーク旅行の際、デヴィッド・ボウイスーパーモデルが好むような、彼らが贔屓にしていた高級ホテルや高級レストランを中心に足を運んだのだ。NYでボウイ本人には会ったことはないが、スーパーモデルには幾度となく遭遇したことを、今改めて振り返ると、幸運に恵まれていたと思う。正に、ニューヨークの魔法だとも言えるが、90年代後半、例えば、フォーシーズンズホテルをはじめ、高級イタリアン<Bice>で、彼女を何度か目撃した。

 

付け加えるならば、1975年に設立され、今年40周年を迎えたジョルジオ・アルマーニ社のイタリア製高級ファッションが有名となったのは、リチャード・ギア主演作『アメリカン・ジゴロ』(1980年/米)にアルマーニが衣装提供を行い、同作品がヒットしたのが大きな転機だとも言える。
 
そして、先述したジョージ・マイケルの曲の
PVに起用されたひとりが他でもないスーパーモデル<シンディ・クロフォード>その人であり、彼女は翌91年、(当時、世界一素敵な男性と形容された)ハリウッドスター<リチャード・ギア>と結婚するまでに至ったのだ。アルマーニマン<リチャード>と、ヴェルサーチウーマン<シンディ>の、対照的な伊ファッションブランドのアンバサダー同士の結婚だったのだ。
 

 
俺の人生において、現在68歳の<デヴィッド・ボウイ>(ジャンル「音楽」)をはじめ、スーパーモデル(ジャンル「モデル」)や、現在81歳の<ジョルジオ・アルマーニ>(ジャンル「ファッション」)、そして映画ニューヨーク(テーマ「旅行」)などなどへの思い入れはここ最近に始まったわけではなく、80年代からずっと続いており、俺の人生の一部といっても過言ではないくらいに、その熱は未だ冷めることなく、趣味の領域を超え、私的な探究の分野となり久しい。それくらいに好きなのだ、音楽が、映画が、ファッションが、モデルが、そしてニューヨークが。

 

 
話を戻すが、1966年に三人姉妹の次女として、イリノイ州のディカルブで生まれ、今年で49歳となったスーパーモデル<シンディ・クロフォード>に関する、私的な鮮明すぎる記憶の数々は、1990年から始まり、彼女が
MTVの司会をやっていた若かりし頃まで遡るのだ。土地勘がない人のために、補足すれば、彼女の故郷は大都市シカゴの西に位置している。ブログ冒頭で引用した(『Esquire』誌や『GQ』誌のライターとして有名なニューヨーク在住の)マイケル・フロス著『トップモデル きれいな女の汚い商売』に関しては、以前のブログでも何度か取り上げたかと思うが、同書は1993年のミラノの話題から始まり、シンディ・クロフォードをはじめ、世界中のトップモデル達について書かれた暴露本なのだ。尚、邦訳本が出版されたのは翌96年だ。シャンパン片手に読むにふさわしいそれではあるが、ファッションモデル業界に幻想を抱いている人には、私的にはオススメはできない。とはいえ、それはとても興味深く、面白い本だけれど(笑)。

 
モードプレスの9月28日付ニュース“シンディ・クロフォード、ファッション界の期待に押しつぶされそうになる」”は、彼女の本音が垣間見えるそれだろうか。オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』の主人公ドリアンを彷彿とさせるインタヴュー記事でもあり、彼女の考えが分からなくもない。

 

Becoming Cindy

 

 
前回のブログでも少しばかり触れたように、シンディ・クロフォードの写真集『
Becoming By Cindy Crawford: By Cindy Crawford with Katherine O' Leary』が、イタリアの有名出版社<リッツォーリ>から刊行された。彼女のツイートを見る限り、ニューヨークの有名書店を皮切りに、10月半ば頃まで、ロンドン、マイアミ、シカゴ、ダラス、ロサンジェルスの書店を回るようだ。
 

 
先日、彼女はセス・マイヤーズが司会を務める米
NBCのテレビ番組「レイト・ナイト」にも出演し、同写真集の中の、80年代に撮影された、椰子の木みたいに髪をアップし、へんちくりんな服を着て、パラソルを差し、しかめっ面の、黒歴史的な写真を番組内で指摘されたが、ユーチューブで見る限り、90年代前後の若かりし頃とは比較はできないが、49歳の彼女は今もなお、スーパーモデルとしての体形を維持し、知的で、落ち着いた、2児のママといったイメージはさておき、世界を代表する元祖スーパーモデル「シンディ・クロフォード」のオーラを放っていたのは誰の眼にも明らかだ。

 

また今年は、テイラー・スウィフトの曲“Bad Blood”のミュージック・ヴィデオに出演するなど、今もなお、話題が尽きない彼女だが、ジョージ・マイケルの“Freedom '90”(1990年)に出演したスーパーモデルの仲間たち、クラウディア・シファー、リンダ・エヴァンジェリスタ、ナオミ・キャンベル、クリスティ・ターリントンなども健在だ。付け加えるならば、現在日本で劇場公開中のコリン・ファース主演のコメディ・スパイ映画『キングスマン』の監督<マシュー・ヴォーン>は、ドイツ人スーパーモデル<クラウディア・シファー>の現夫だ。したがって、同監督の子供向けのおバカなスーパーヒーロー映画『キック・アス』(2010年/米)がお好きな人であれば、『キングスマン』も楽しめるはずだ。

 

Freedom '90

 


何になりたいかもわからなかった

飢えた女生徒にチヤホヤされてた

それで充分だったんだろう

レースに勝って、カワイコちゃんをつかまえて

新しい服を着て

ロックンロールTVで見た流行りの場所に行った

でも今じゃ遊び方もすっかり変わってしまった

―ジョージ・マイケル『フリーダム90』より 

 
1990年
当時、24歳だったシンディ・クロフォードも素敵に歳を重ね、あれから25年もの歳月が経過し、あの時代にはなかった
SNSの登場により、今もなお、スーパーモデルたちの日常をリアルタイムで知ることができるのは、驚きであると同時に、嬉しいものだ。今、時計の針は、9月30日(水)の24時20分を回ったが、最後に、マイケル・フロス著『トップモデル きれいな女の汚い商売』の中で、あの時代を象徴する、とりわけ印象に残っている(香水を例にした)一節を、一部抜粋して紹介したい。

 

音楽がはじけ、シャンパンがふるまわれる。

あたりには、プワゾン(毒)や、

オブセッション(妄想)や、

ヴァンデッタ(確執)が燃えさかっている。

 

Good night!