甲子園が熱いのは今も昔も変わらないと思うが、あまり気温は暑くなって欲しくないものである。

球児や応援団、観客が熱中症で搬送されるというニュースを連日聞く。この類のニュースが流れるたびに中高年のクチから聞こえるのは決まって「昔はそんなことなかったけどなあ、今の子どもはクーラーで甘やかされているからな」という旨のつぶやきである。

若者が貧弱だとような発言に一瞬「カチン」ときたが、私も若者のつもりでいるだけで、充分中高年に分類される生き物である。

 

さて「夏の甲子園」が、昔にくらべて今が暑くなっているか寒くなっているかはデータを比べれば簡単にわかる話である。

 

客観的に比較している記事やサイトがなかったので、自分で計算することにした。

 

開催期間である8月の気温を比較することにするが、月平均にしてしまうと、

月初も月末も一緒くたにしてしまうのは乱暴すぎるのと、年によって台風接近の有無や回数などによって大きく影響されてしまうため、

旬間(おおよそ10日間)同士で比較することにした。

 

データは、充分昔から継続的に記録があり、甲子園に近くで測定されていて、手軽に利用できるデータとして、気象庁の神戸気象台のデータを選択した。気象台まで直線距離で15キロ程度、どちらも海近くの市街地だが、気象台はまさに海岸沿いの露場なので、海岸から1キロ程度の住宅地を隔てた球場よりも風通しが良く、気温が多少低くなるかもしれない。

 

1945年から2017年までの8月上旬、中旬、下旬の平均気温をグラフにして、トレンドを見るために6年間の移動平均を加えたものが図1のグラフである。

細い線が実値、太い線は過去6年間の移動平均である。

 

明らかに上がっているように見える。

平均気温が、(青で示した)28℃の線を中心に、下側にほぼ収まっていた1945-1990年までに比べて、それ以降は28℃線の上側に偏ってきている。

上旬の移動平均線を見ると、1945-1950年の27.5℃付近から、2012-2017年の29.4℃付近まで約2℃上がっているようだ。

 

(2018/8/11追記)2018年8月上旬の平均気温は29.8℃

(2018/8/23追記)2018年8月中旬の平均気温は28.4℃

 

気象台が公開しているいろいろなデータで推移を出してみたが、もっとも顕著だったのが最低気温の推移である。

下記の図2のグラフは、8月の毎日の最低気温を旬間ごとに平均したものの推移である。

8月上旬(赤い太線)の移動平均を見ると、1945-1950年の24℃強だったものが、2012-2017年には27℃にもう少しで届くところまで上がっている。

 

(2018/8/11追記)2018年8月上旬の最低気温の平均は27.1℃

(2018/8/23追記)2018年8月中旬の最低気温の平均は25.5℃

 

ちなみに、熱帯夜という用語があるが、夜から朝にかけて25℃未満にならなかった夜のことを呼ぶ。

この最低気温のグラフでは青で示した線が25℃だ。

つまり2000年以降の8月上旬と中旬にあっては、熱帯夜でなかった日がほぼ無いのではなかろうか。

 

これらから、夜も27℃以上あるような日が続き、日が登るとあっというまに30℃を超えて、

昔は涼しかったはずの第一試合ですら、現代は過酷な環境に置かれるように時代が変わってきたと言えるのではないだろうか。

 

観戦も、一度入場したら再入場は原則不可というルールのなかでは、朝から過酷な環境に晒される観客も多いと聞く。

 

時代や環境の変化に柔軟に対応していくことができないと、すぐに炎上するこのご時世。

万一、球児に犠牲者でも出ようものなら、致命傷になりかねないのは甲子園も聖域では無いはずだ。