平成24年(ワ)33752号 意匠権等侵害差止請求事件

差異点があることを考慮しても,看者に対して共通の美感を与えるものと認められるとした事案

 

主文
1 被告は,原告に対し,1億2915万3662円及びこれに対する平成25年9月3
0日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事案の概要

本件は,意匠に係る物品を「体重測定機付体組成測定器」とする意匠権を有する原告が,
被告による体組成計の生産,譲渡,引渡し,譲渡の申出,輸入及び輸出行為が原告の意匠権
を侵害すると主張して,被告に対し,意匠法37条に基づき,体組成計の生産等の差止め及
びその廃棄を求めるとともに,不法行為による損害賠償請求権に基づき原告が受けた損害の
額とされる意匠権侵害行為を組成した物品の譲渡数量に原告が意匠権侵害の行為がなければ
販売することができた物品の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額の損害2億8904
万0660円及びこれに対する不法行為の後である訴状送達の日の翌日(平成24年12月
7日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案であ
る。

 

1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。)
(1) 原告の意匠権
ア(ア) 原告は,平成23年3月18日,意匠に係る物品を「体重測定機付体組成測
定器」とする意匠登録出願をし,同年9月22日,意匠権の設定登録がされた(意匠登録第
1425652号。以下,この意匠権を「本件意匠権1」といい,その登録意匠を「本件意
匠1」という。)。
(イ) 本件意匠1は,本判決添付の意匠公報(意匠登録第1425652号)の【図面】
記載のとおりである。
イ(ア) 原告は,平成23年3月18日,原告が意匠登録出願している本件意匠1を
本意匠とする関連意匠として,意匠に係る物品を「体重測定機付体組成測定器」とする意匠
登録出願をし,同年9月22日,意匠権の設定登録がされた(意匠登録第1425945号
。以下,この意匠権を「本件意匠権2」といい,その登録意匠を「本件意匠2」という。)

(イ) 本件意匠2は,本判決添付の意匠公報(意匠登録第1425945号)の【図面】
記載のとおりである。
(2) 本件意匠1及び2の構成

 

第3 当裁判所の判断

1 本件意匠1と被告意匠との類否について

2 本件意匠2と被告意匠との類否について
(1) 本件意匠2と被告意匠との対比

(2) 本件意匠2の要部
前記前提事実によれば,本件意匠2は,本件意匠1と同じ体組成計についての意匠であり

,本件意匠1の関連意匠であることからすると,需要者の注意を惹く点についても本件意匠
1と同様であるというべきである。
したがって,本件意匠2のうち看者である需要者の注意を最も惹きやすいのは,①正面視
において,隅丸横長四角形の板状体からなる透明ガラス板の上下左右四隅近傍に同一形状の
縦長の隅丸四角形の電極部を配置し,上側の左右に配置された2つの電極部で囲まれた領域
のほぼ中央に横長の隅丸四角形であってその縦方向の長さが電極部の縦方向の長さより短い
液晶表示窓を配置し,上側に配置された2つの電極部分の上辺を結んだ線,左側に配置され
た2つの電極部分の左辺を結んだ線,下側に配置された2つの電極部分の下辺を結んだ線,
右側に配置された2つの電極部分の右辺を結んだ線からなる四角形の対角線の交点を中心と
して,隅丸四角形スイッチ模様が構成されている構成を組み合わせた点,②側面視において
,透明ガラス板と本体背面部とを積層一体とした構造であるという点であり,これが,本件
意匠2の要部に当たると認められる。

なお,被告は,本件意匠2に係る無効審判請求について平成26年12月24日にされた
審決の判断内容によれば,本件意匠2の要部は正面視ではなく背面視及び側面視の構成にあ
る旨主張する。しかし,上記審決(乙99の2)の判断は,当業者が公知意匠に基づいて容
易に本件意匠2の創作をすることができたか否かという事項についての判断であって,本件
で問題とされているような需要者である消費者が本件意匠2のどこに着目し注意を向けるか
という事項とは異なる事項についての判断であるし,また,本件意匠2の正面視と同一の構
成を備えた公知の意匠が存在することを認めるに足りる証拠もないのであるから,そうであ
る以上,被告の上記主張は,上記判断を左右するものとはいえず,採用できない。
(3) 類否
本件意匠2と被告意匠は,上記第3,2,(1),アのとおり,①正面視において,板状体
の正面ガラス板は隅丸横長四角形形状であり,板状体の正面には,4つの隅丸縦長四角形形
状の電極部分が上下左右に配置されており,上側の左右に配置された2つの電極部で囲まれ
た領域のほぼ中央には隅丸横長四角形の液晶表示窓があり,該液晶表示窓の下側であって,
かつ,上側に配置された2つの電極部分の上辺を結んだ線,左側に配置された2つの電極部
分の左辺を結んだ線,下側に配置された2つの電極部分の下辺を結んだ線,右側に配置され
た2つの電極部分の右辺を結んだ線からなる四角形の対角線の交点を中心として隅丸四角形
からなるスイッチ模様を複数配置して構成されており,②側面視において,透明ガラス板と
本体背面部とを積層一体とした構造であるという構成を有する点で共通している。
相違点について検討すると,正面視において,上記第3,2,(1),イのとおり,本件意
匠2と被告意匠とでは透明ガラス板の縦横比が異なっている(本件意匠2が約1:1.4で
あり,被告意匠が約1:1.43である。)ものの,その差異は極めて小さく,いずれも看
者に対し横長長方形であるという印象を与えるものというべきである。また,被告意匠には
,液晶表示窓の周囲にある縁取模様があることが認められるが,これは液晶表示窓の大きさ
と比較してさほど大きいものではなく,正面視において目立つ色彩でもない。
さらに,透明
ガラス板の隅丸半径,電極部分の幅と長さの比,液晶表示窓の底辺と上側の左右に配置され
た電極の底辺との関係やスイッチ模様の個数に差異があるが,これらは,透明ガラス板の形
状がほぼ同じであることから看者に対して与える共通の美感を凌駕するものとはいえない。
本件意匠2と被告意匠とでは,背面視において,上記第3,2,(1),イのとおり,本体
部の背面の形状に差異があるが,これは要部における差異ではない。

さらに,上記第3,2,(1),イのとおり,被告意匠には側面視において不透明プロテク
タ体があるが,不透明プロテクタ体は本体背面部と同系統の色彩であり厚みも薄いことから
,この点も要部における具体的構成の共通性から看者に与える美感の同一性を凌駕するもの
とはいえない。

したがって,本件意匠2と被告意匠とは上記のような差異点があることを考慮しても,看
者に対して共通の美感を与えるものと認められる
から,本件意匠2と被告意匠は類似してい
るというべきである。
(4) 以上によれば,被告製品の生産等は,本件意匠権2を侵害する。