平成26年(行ケ)第10163号 審決取消請求事件

請求棄却
意匠法3条1項3号
意匠に係る物品 携帯情報端末
共通点が需要者の注意を惹く部分
相違点は需要者の注意を惹く程度は大きくない

 

主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が不服2013-14651号事件について平成26年2月25日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)
原告は,意匠に係る物品「携帯情報端末」に関する部分意匠につき,平成24年7月5日を出願日とする意匠登録出願(意願2012-15986号。パリ条約に基づく優先権主張・2012年1月6日(以下「優先日」という。),大韓民国。以下「本願」という。また,本願に係る意匠を「本願意匠」という。)をした。
原告は,平成25年4月24日付けで拒絶の査定を受け,同年7月31日,拒絶査定に対する不服の審判(不服2013-14651号事件)を請求した。特許庁は,平成26年2月25日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を,同年3月11日,原告に送達した(出訴期間90日附加)。
原告は,平成26年7月8日,上記審決の取消しを求めて,本件訴えを提起した。
2 本願意匠の形態(甲1)
本願意匠の形態は,別紙第1のとおりであり,実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願実線部分」という。)である。
3 審決の理由
審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,本願意匠は,独立行政法人工業所有権情報・研修館が2011年11月1日に受け入れた 「株式会社小学館,2011年11月1日発行の雑誌「DIME」20号 第21頁所載(製品名:GALAXY Nexus) 携帯情報端末機」(特許庁意匠課公知資料番号 第HA23007213号)の意匠(別紙第2参照。乙1の1,2。以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。)の本願意匠に相当する帯状面(以下「引用相当部分」という。)に類似する意匠であり,意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当する,というものである。
審決が認定した本願実線部分と引用相当部分(以下,これらを併せて「両部分」という。)の各形態の主な共通点及び相違点は以下のとおりである(これらの共通点及び相違点の認定自体は当事者間に争いがない。以下,各共通点及び相違点を示す場合は,審決において付された符号を用いる。)。 

(1)共通点
「基本的構成態様として,
(A)正面視略縦長俵形の携帯情報端末本体の周囲に施された細幅の帯状面である点,
具体的構成態様として,
(B)側面視において,上下端部より中央部分に向け,正面側及び背面側の各辺を背面側に向けてわずかに湾曲させている点,
(C)上下端部より中央部分に向け,帯状の幅を漸次わずかに幅広に形成したものである点,
において共通する。」

(2) 相違点
「具体的構成態様として,
(ア)側面視において
本願実線部分は,上下端部の短辺をわずかに背面側に傾斜させているのに対して,引用相当部分は,上下端部の短辺をわずかに正面側に傾斜させている点,
(イ)背面視において,
本願実線部分は,側面側から背面側に向けて回り込むように構成されており,背面側からでも当該実線部分が本体左右端に視認することができるのに対して,引用相当部分は,正面側と側面側のみの写真版であるため,背面側から当該相当部分が視認できるか否かは不明である点,において相違する。」

 

 

第5 当裁判所の判断
当裁判所も,本願意匠と引用意匠とは類似するので,本願意匠は意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するとした審決の判断には誤りはないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
1 類否判断の前提となる事実
(1)本願意匠と引用意匠が,それぞれその意匠に係る物品を共通にしていることは当事者間に争いがない。

(2)本願実線部分と引用相当部分は,共に携帯情報端末の前面パネルの周囲に施された帯状面であって,その用途及び機能並びに位置,大きさ,及び範囲が一致することは当事者間に争いがない。
2 両意匠の類否判断
(1)共通点について
携帯情報端末の性質,用途,使用方法に照らすと,需要者が携帯情報端末を観察する際には,携帯情報端末の全体の形状,及び一見して目に入り,かつ,操作の際に最も使用頻度が高いものと考えられるパネル画面等の正面視の形状,並びにこれらのまとまりが最も注意を惹く部分であるということができる。 

前記1(2)のとおり、両意匠は共に携帯情報端末の前面パネルの周囲に施された帯状面であり(共通点(A)),携帯情報端末全体からみて両意匠の占める部分の割合は大きなものではなく,しかも,携帯情報端末の側面の形状であることに照らすと,上記説示のとおり,需要者の注意を惹く程度はさほど大きくないものといえる。このような需要者による看取のされ方を前提とすると,需要者において両意匠の細かな点についてまで詳細に看取するものとは考え難いから,両意匠の類否の判断において影響を及ぼすのは,主として両意匠においてその基調を占める部分であるというべきである。
そして,両部分は,側面視において,上下端部より中央部分に向け,正面側及び背面側の各辺を背面側に向けて僅かに湾曲させている点(共通点(B)),及び,上下端部より中央部分に向け,帯状の幅を漸次僅かに幅広に形成したものである点(共通点(C))において共通するところ,これらの部分は,両部分の基調を占める部分であるから,両部分の中では需要者の注意を惹く部分であるということができる。
そうすると,両部分の共通点が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものというべきである。

(2)相違点(ア)について
他方,両部分は,側面視において,本願実線部分が上下端部の短辺を僅かに背面側に傾斜させているのに対して,引用相当部分が上下端部の短辺を僅かに正面側に傾斜させている点において相違する(相違点(ア))
しかし,前記(1)の説示のとおり、携帯情報端末において、側面部分の形状が需要者の注意を惹く程度には大きくない上に、相違点(ア)にかかる部分は、側面視における上下端部の部分における細幅の帯状部の傾斜の方向の相違にすぎず,側面視から見た両部分の上下の末端の僅かな部分に関するものであることも併せ考えると、相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きなものではないというべきである。

(3)相違点(イ)について
両部分は,背面視において,本願実線部分が,側面側から背面側に向けて回り込むように構成されており,背面側からでも当該実線部分が本体左右端に視認することができるのに対して,引用相当部分が,正面側と側面側のみの写真版であるため,背面側から当該相当部分が視認できるか否かは不明である点において相違する(相違点(イ))。

 しかし、相違点(イ)に係る形状は正面視からは看取できず,背面から見て初めて看取できるものであり、前記(1)において説示した点に照らすと、上記形状が需要者の注意を惹く程度は大きくない。その上,本願意匠は,背面図においても,正面図と概ね同様の形状の部分が背面の大部分を占める反面,本願実線部分における上記相違点(イ)に係る部分は、背面側から見たときに本体左右辺に僅かな弧状の細帯として視認されるにとどまるのであるから,需要者に与える美感に大きな影響を及ぼすものとはいい難い。
そうすると,仮に,引用相当部分につき背面側から当該相当部分が視認できなかったとしても,その差異が両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものとはいえない。
(4)小括
以上によれば,本願実線部分と引用相当部分との間の相違点(ア)及び(イ)は、特段需要者の注意を惹くものではなく,類否判断に及ぼす影響は大きいとはいえず、上記各相違点が、前記(1)において説示した共通点から得られる美感の共通性を凌駕するものであるとは認められない。
 

以下略