私がまだサウジアラビアに暮らしていた頃、憎きコロナの足音がサウジにも聞こえ始めていた。
隣国イランでは患者数が急増して大騒ぎになっていた。
そしてある日とうとう「2名の患者が発生し、今日からカティーフ市が封鎖された」との情報が流れて来た。
カティーフ市に通じる道路が突然封鎖され、連れの会社の一部従業員は会社に来ることが出来なくなった。
そのエリアに住む友人に連絡してみると、食料品・日用品の運搬車の出入りは許可されているので、当面の生活には困らないし、町も整然としている。」とのことだった。
カティーフは、サウジアラビアで反主流派シーア派(↔︎主流派スンニ派) 教徒が多く住むエリアなので、この都市封鎖は、後々国際的にサウジ政府を批判する格好の材料に利用された。
しかし実際のところ、患者急増中のイランにあるシーア派聖地へ巡礼に出かけて戻った2名が罹患したのだった。
いよいよサウジにもコロナが上陸したと知り、私たち外国人もサウジ政府の対応を固唾を飲んで見守ることとなった。
2名の患者が発生し、カティーフが閉鎖されたのが2020年3月8日。
同時にサウジ保健省からは「既に1400床の隔離治療室が設置されたので心配しないように」とのコメントが発表された。
また、「巡礼の受け入れ中止&現在巡礼中の人をそれぞれの国に責任持って送り返すことにした」とのニュースも流れた。
サウジ政府の動きはかなり早いらしいと判断され、私を含む数名の帯同家族は3月半ばに一時帰国することとなった。
予想は見事に的中し、翌日から数ヶ月の間、サウジの飛行機は全て飛ばなくなった。国際線のみならず、国内便もストップされた。国内患者発生から10日に満たない国策決定だった。
サウジよりも患者が多く出ていた日本に帰国してみると、「スペインから来た人は申告してくださ〜い」と空港検疫で声がかかる程度だったし、市中も通常通りに動いていた。(2020年3月時点の話)
サウジに残っている連れや同世代の友達からは、「最寄りのスーパーへの買い物以外、外出禁止になった」、
「ワクチン接種を受けてきた(日本より半年ほど早かった)、携帯でデータ管理されて、なかなか合理的な接種の流れだった。」
といった情報が入ってきた。
その後、こうした努力を上回る勢いで、患者が増えたことは世界共通だが、とにかくサウジ政府の対応は早かった。
サウジは絶対王政で、基本的にトップダウンで物事が決まる。
民主主義で何事もまずは法律を定めるというのが当たり前の世界の人間からすると恐ろしくもあるが、こういう有事の時には、サウジの王政がなんとも頼もしく思われた。
勿論、トップが正しい決断を下すことが絶対条件だし、それでも「絶対はない」ということを私たちは歴史から学んで来たのだけれど・・・。
ともあれ、
一時帰国がそのまま本帰国になってしまった私は、サウジに未練が残った。
だから、ちょいちょいアラブニュースを覗いていて、「コロナを克服した患者一号が病院職員に見守られて退院」という記事を見つけた。
退院患者の手には、大きな花束と共に、サウジで売られている高級チョコの紙袋があった。
あぁ!!未だに私は、一時帰国を急ぐ余りに買いそびれたパッチのチョコレートが食べたくて仕方ないのだ!!!(結局。そこっ?!)
中東のゴディバと言われるヨルダン発のチョコレートはサウジ王室御用達。残念ながら、日本で買えない。
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