前回のサロン放浪記の記事で、エリザベスについてあまり触れませんでした。
エリザベスの存在があたりまえすぎて、書かなかったのですけど、エリザベスの存在はやはり大きいものがあります。
エリザベスが開店したのは、1978年だそうです。
私が初めて行ったのは、それから10年後ですね。
当時、「女装趣味」というものは、まったく世間から認められるものではありませんでした。
女装=変態という概念で間違いなかったと思います。
「おかま」という語は廃れつつありますが、女装好き=おかま=男好きという構図で考えられる傾向にありました。
世間から疎んじられる女装というものを好きになってしまう。
あの時代、それは女装が好きになってしまった人の心を苦しめていたかもしれません。
大っぴらに女装ができる場所がありませんでしたから、エリザベスはそれを実現できる貴重な場所でした。
その存在に救われた人は多かったのだと思います。
インターネットなんてなかった時代、エリザベスの存在を知るには、雑誌やスポーツ紙などの媒体の広告でした。
私も、高校で友人がたまたま見ていたアイドル系の雑誌に、エリザベスの体験記が載っていたのを見て初めて知ったのです。
全身に衝撃が走り、普段雑誌なんか買わなかった私は、隠れるようにしてその雑誌を買いました。
あと、深夜帯のテレビでもエリザベスを取材している場面がありました。
新聞のテレビ欄をくまなくチェックし、たまに女装に関することを特集している番組があるとビデオに録画したりしていました。
大概、「11PM」か「トゥナイト」で特集していましたね。
しかし、それらの番組でも、やはり女装はキワモノ扱いで、女装者に対して「どんな男性が好みですか?」と尋ねているなど、やはりそもそも趣味としては理解されていませんでした。
我々世代の方の中にも、女装したい一心でエリザベスを目指した方は多いと思います。
ただ、前述のような女装の扱い、世間的には「やってはならないこと」と捉えられていることもあり、エリザベスに辿り着いたものの、躊躇したあげく中に入れなかった方も多いことでしょう。
かく言う私も、岩本町駅の通路や階段を何往復もして、さんざん迷った末に、決死の覚悟で店に入りました。
ある日、緊張して岩本町駅の「大」の方のトイレに入ったのですけど、ふと見ると壁にたくさんの女装者の落書きがありました。
ああ、ここは女装者が集まる駅なんだ・・・・と思いましたね。
以前のエリザベスは、イベント以外では外出禁止でしたね。
これは近隣に配慮したものでもあり、また、外の世界では女装が受け入れられていなかったことにもよるのだと思います。
エリザベスのメイクは、当時は舞台用化粧で使うようなドーランを用いていたように記憶しています。
ドーランはカバー力が強く、男性のような粗い肌でもバッチリと隠せるのですが、どうしても厚化粧になります。
当時、水商売の女性くらいしか使わなかったつけまつげも使い、口紅は真っ赤なもの。
男性を女性にさせるのですから、当時はそれが当たり前でもありました。
私は、厚化粧の方が萌えるので、それが楽しかったのですけども・・・・・・
下着は最初に自分で購入するのですが、初心者用に下着セット(ブラ、ショーツ、スリップ、ガードル、バット、パンスト、つけまつげ付き)が販売されていました。
メイク室には、衣装もウィッグ(当時はかつらかな?)も靴も完備され、所望すればウェディングドレスや着物も着ることができました。
レンタル用に主な衣装を着た女装子さんのサンプル写真があり、それを指して衣装を借りることもできました。
完全女装をするには、この上もない環境でしたね。
4階がメイク室になっていて、衣装を着て、メイクが完了すると、吹き抜けの階段を上がり、5階のルームに行きます。
新人が上がるときは、上に向かって「新人さん、上がりま~す」と声を掛けてくれました。
ルームでは、ワンドリンクがサービスで、ポラロイド写真を1枚撮ってくれました。
最近の女装サロンは、確かに厚化粧なのですが、厚化粧に見えないようなメイク技術を確立してますね。
今のエリザベスも、以前とはずいぶんメイク用品も変わったし、メイク方法も変わったと思います。
撮影もデジタルになったので、かなり綺麗な写真が残せるようになりました。
撮影をメインとするサロンでは、ポーズやしぐさも研究し、ライティングや構図も工夫しているので、かなり女性らしい写真が撮影できます。
女装子さんの写真を見ると、これが男性??と思うような写真が多いですよね。
まあ、昔のポラロイドの一発勝負とは違い、今はデジタルで何百枚も撮るので、その中には奇跡の写真が何枚かはあるのですが(笑)
インターネットのなかった時代、女装者向けの趣味雑誌「くいーん」がありました。
これもエリザベスで発行されていて、さまざまな女装子さんのグラビアや記事、交友メッセージ欄がありました。
確か隔月刊で2500円くらいしたのですが、女装を知る唯一の手段だったと思います。
表紙の女装子さんの写真はプロが撮影したものですが、実に美しく、こんな写真が撮れたらなあと思ったものです。
当時は、今のような美しい写真が残せる時代が来るとは思いもしませんでしたね。
エリザベスは現在もそうですが、ショップを併設していて、通販もありました。
インターネット通販もなく、男性が普通に店舗で女装用品を購入できなかった頃ですから、ここにはかなりお世話になりました。
市価よりは高かったのですけど、それは仕方がなかったですね。
私もいろんなサロンを放浪してきたのですけど、再びエリザベスへ行くようになりました。
仕事の関係で先の予定が決めにくくなり、サロンの予約が取りづらくなったことによります。
エリザベスはいつでも行ける気軽さと、良心的な価格がいいですね。
今まで会員にはなっていなかったのですけど、会員になり会員価格で入れるようになりました。
また、結婚して女装用品の置き場がなくなり、エリザベスにロッカーを借りました。
さまざまな女装子さんの姿を見れるのも刺激になりましたね。
最近は行けなくなってしまったのですけど、仕事で浅草橋を通るたびに、とても懐かしさを感じます。
やはり、エリザベスは原点なんでしょうね。
↓エリザベス出身の方も多いはずです。