独身時代の話です。


会社で同僚の女子社員から言われました。


「マニキュア塗ってみる?」


いきなり何を言うのかとも思いましたが、ちょっと嬉しい気もします。


女子社員にしてみれば、後輩の若い男子をからかってみたかったのでしょう。


躊躇しながらも手を差し出し、薄ピンク色のマニキュアを塗ってもらいます。


自分の手に触れる女子の手の感触が、何とも言えません。


マニキュア独特のにおいが鼻をつきます。


両手を塗り終わって、しばし自分の手を眺めます。


ああ、何か女子っぽい。


女子社員からは、「なかなか似合うじゃん」と言われ、悪い気がしません。


でも、このままでは仕事ができないので、「あのう・・・・」と言いかけたときでした。


「あっ、マニキュア落としを持ってくるの忘れちゃった。」と、その女子社員。


「明日、持ってくるね。」


えーー!!明日まで、マニキュアを塗ったままいるの??


これは困りました。


マニキュアを塗った爪を見せるわけにはいきません。


会社の隣の部署に書類を持っていくにも、手が見えないように、ささっと置いてきます。


机の上でもなるべく手を握って、爪が見えないようにします。


そして、その日はなるべく残業せずに帰宅。


でも、帰りはいつもコンビニに立ち寄って、食事を買うのです。


レジでは爪が見えないように、手のひら返すことを意識していなければなりません。


いつものコンビニ店員は若干不審顔。


逃げるように家に帰りました。


次の日になって、やっとマニキュアを落とすことができました。


でも、今になってよく考えてみると、あの女子社員にはめられたのではないかと思います。


ムカつくけど、ちょっと嬉しい気もする経験でした。








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