ずいぶん前の話になりますが、結婚をしてひとり暮らしのアパートを引き払うことになりました。


そこには5年くらい住んだでしょうか。


その間、ため込んだ女装用品類が押し入れに詰まっています。


何着あるかわからない女性服。特に制服類が多い。


数多くの下着類、何種類かのウィッグ、そして、メイク道具。


これだけ集めるのにいくらお金をかけたでしょう。


怖くて考えられません。


すでに家財道具は引越業者に引き渡し、女装用品だけが部屋に残りました。


このあと、しばらくすると不動産業者が部屋にやってきます。


そうすると、そこで部屋を明け渡さなければなりません。


それまで2時間ほどあったでしょうか。


最後は一番気に入っていたセーラー服を着て過ごしました。


そのアパートで女装していた日々が思い起こされます。


フル女装したまま、酔っぱらって、厚塗りメイクをしたまま寝てしまったり。


ストレスの絶頂期、仕事に行く前、急に女装がしたくなって早朝にしてみたり。


ネットオークションで女子校制服フルセットや憧れのバスガイドの服を手に入れたり。


どれも懐かしい思い出です。


やがて、不動産業者がやってくる時間となりました。


着ていたセーラー服を脱ぎ、お世話になった女装用品ともお別れです。


女装用品は新婚家庭には持っていけないのです。


当時はまだOKだった黒いごみ袋に制服やらメイク用品やらを詰め込んだら、4袋ほどになりました。


それらを近くのゴミ置場に出しに行きます。


寂しくつらい別れでした。


ほどなく不動産業者がやってきて、部屋の鍵をわたして部屋をあとにしました。


新居に向かう途中、ごみ置場の前を通ります。


私の宝物がごみとして積まれています。


これを持っていければ・・・・・・と何度も振り返りました。


それからというもの、女装の回数は激減し、できてももっぱらサロンでの女装となりました。






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