初めて女装して外出したのは、横浜のアルテミスでした。

それは初めてアルテミスを訪問した日。

まだ、アルテミスもできて1年くらいの頃ではなかったかと思います。


事前にインターネットで申し込むときに、外出も希望と書いたんです。

でも、本当は初回は外出できないシステムらしいのです。


しかし、訪問すると、「本当はだめなんだけど」と言われながらも、外出を許可してくれることになりました。


アルテミスでは何着か衣装を着て写真を撮った後、いよいよ外出することになりました。

衣装は長めのスカートにブラウスとカーディガンのような感じだったと思います。

外出は、派手ではなく、街になじむような不自然ではない衣装というのがルールなのです。


女性用下着もつけて、ストッキングも履き、メイクもし、ウィッグもつけています。

イヤリングやネックレスのアクセサリーも身に着けています。

ヒールのある靴も履きました。

上から下まで完全に女の子です。


女性用のかばんを借りて、いよいよ外出です。

ちょうど時間は夜でした。

建物の外に出ると、一気に緊張が走ります。

一緒にアテンダントの女性がついてきてくれています。


女性らしく歩くためには股を閉じて、膝が触れ合うような歩き方がいいと教わりました。

その通りにやってみますが、何だかぎこちない歩き方です。

アテンダントの女性が小さい方なので、私も目立たないように背を丸めて歩いていました。

そんな時、「背筋は伸ばしてください」と注意されます。

背が丸まっていると、逆に目立つのだそうです。

堂々と歩きなさい、ということですね。


アルテミスから横浜駅の方角へ歩きます。

駅にいくには高台から長い階段を下りるのです。

階段はとても歩きにくいのですが、ヒール独特のコツコツという音で、「ああ、女なんだ」と実感できるのです。


階段を下りると、横浜駅前の繁華街に出ます。

いきなり繁華街を歩いてみましょうということになりました。


横浜だけに結構な人出です。

そこを女性2人?で歩きます。

アテンダントの方は、ここのお店はこうだとか、あのお店はこうだとか、歩きながらもいろいろ教えてくれます。

しかし、私は極度の緊張で、それが耳に入りません。


道行く男性のグループは、やや怪訝な顔をして私をちらりと見ます。

さすがにガン見はされませんでしたが、やっぱりバレてるかな?という気もしてきます。


横浜駅の前まで来たところで、じゃあ、戻りましょうかということになりました。

また同じ道を引き返します。

今度は慣れてきたせいか、ちらりと見られてもあまり気になりません。

逆に見ていない人の方が多いようです。

傍らに本物の女性がいれば、あまり疑われないのかもしれません。


繁華街を抜けて、また階段を上がっていきます。

ヒールのコツコツという音を聞きながら、ああ、もう外出も終わりなんだと少々寂しく思いました。


最初の極度の緊張と、その後に味わった楽しさ。

そんな初外出の話でした。




↓ふりむかないで、横浜の女(ひと)

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