インターネットのなかった頃の話です。


エリザベスは神田にありました。

都営新宿線の岩本町駅の出口の階段を上がって、脇のビルがエリザベスでした。


この日もエリザベスに行こうかどうしようかと迷っていたところ、便意を催して、岩本町駅のトイレの「大」の方に入りました。


ふとトイレの壁を見ると、あちこちに女装の思いをつづった落書きや、女装の友人を求む落書きが。

よく、公衆トイレに卑猥な落書きはありますが、女装に関する落書きを見たのは初めてでした。

大をしながらも、しばし見入ってしまいました。


今はインターネットのブログや交流サイトがあり、便利な世の中になりました。

しかし、今から25年前は、こんなところがブログや掲示板の役割を果たしていたわけです。

女装ばかりの落書きがあるトイレなんて、全国でもここだけだったかもしれません。


この後、エリザベスは亀戸、浅草橋と移転します。

何年か前、仕事の途中、岩本町駅のトイレに入ったら、さすがに落書きはなくなっていました。

あれは貴重だったんですけどね。