[56] 植物は〈知性〉をもっている/S・マンクーゾ、A・ヴィオラ(NHK出版) | 書評 精神世界の本ベスト100

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「植物は知性をもっている」と言ったら、ほとんどの人が驚くでことでしょう。動物のように脳がないのに、どうして知性をもっていると言えるのか。誰もが、そう考えるはずです。
 一般的に、私たちが植物に対して抱いているイメージは「動かない」「感覚をもたない」ということだと思います。だから、あらゆる能力が動物よりも劣っており、下位の生物だと考えているのではないでしょうか。

 しかし、著者によれば、最近の植物神経生物学の科学的研究によって、今まで知られていなかった植物の驚くべき能力が少しずつ明らかになってきているというのです。
「植物についてのごく最近の研究によって、植物は感覚をもっていて、コミュニケーションを行ない(植物どうしや動物との間で)、眠り、記憶し、他の種を操ることさえできるとわかってきた。さらに、植物はどこから見ても知的な生物だ。根には無数の指令センターがあり、たえず前線を形成しながら進んでいく。根系全体が一種の集合的脳であり、根は成長を続けながら、栄養摂取と生存に必要な情報を獲得する分散知能として、植物の個体を導いていく。つまり、植物は環境から情報を入手し、予想し、共有し、処理し、利用する能力をもったすばらしい生物なのだ」(マンクーゾ)
 植物は、私たちが考えているよりもはるかに洗練され、優れた適応能力と優れた知性をもった生物なのです。

 一般的に、人間はあらゆる生物の中でも最も優れた生物であり、絶対的な自然の支配者だとされています。しかし、本当にそうでしょうか。
 知性のかけらもない愚かな生物が、この地球上で生きのび進化することなどできるでしょうか? それに、本当に植物が愚かな生き方をしていたのなら、自然淘汰によって、とうの昔に絶滅していたはずです。著者は次のように述べています。
「じつは、地球上のバイオマス(生物の総重量)のうち、多細胞生物の99.7%は、人間ではなく、植物が占めている。人類とすべての動物を合わせてもわずか0.3%にすぎない。この事実からすれば、間違いなく地球は『緑の星』だと定義できる。地球は、植物が支配している生態系である」
 また、次のようにも述べています。
「もし明日、植物が地上から消え去ったら、人間の生活は数週間ももたないだろう。いや、もしかしたら数か月はもつかもしれないが、それ以上は無理だ。あっという間に、高等生物は地球上から姿を消してしまう。反対に、私たち動物が消えたら、植物はこれまで動物に奪われていた領土を、わずか数年で完全に取り戻すにちがいない。さらに一世紀も経てば、人類数千年の文明の痕跡は、植物によって完全に覆いつくされてしまうだろう。この説明だけで、植物と人間のどちらが重要なのか、すぐにわかるはずだ」
 私は、この本を読んで、今まで自分が植物に対する一種の「偏見」を持っていたことに気づかされました。みなさんも、ぜひ一読してみてください。きっと、植物を見る目が変わってくると思います。

【おすすめ度 ★★★】(5つ星評価)