■ファーストイメージの重要性

ああぁぁ、しんど。ああぁぁ、やる気ねぇ。俺なんか、生きてる価値ないわ。マジ駄目だわ。うぃぃぃ~。

——かずにい、振られたね。

ああ、そうだよ。どうせ振られたよ。も~~う、だめだ。今回こそだめだ。気力わかねえ。もう人生投げた。

——重症だね。ダサいね。うひひひひ。

てか、俺のせえじゃねえよ。俺の性格、こんなにひねくれさせた親が悪いんじゃ。

——中二か。

いや、違うな。それだけじゃねえな。会社だよ。俺のまわり、みんなもてねえ奴ばかりだもの。いつの間にか、うつったね、もてないメンタリティがよ。まわりが、だせえんだよ。

——うん、うん。

もっと言えばよ、社会が悪いんだよ。この日本って奴がよ。女をあまやかしてんだよ。だいたい、テレビの観客席があれだ、ぜんぶ女ばっかだろ。つけあがるって。こんなんだからよ、男のことすぐ振っちまうんだよ。

——でもさぁ、もててる男の子いっぱいいるよね。

喝~~~~っ。

——なによ。逆ギレしないでよ。

いや、自分に喝だよ。俺、忘れてた。彼女のこと、あんまり好きすぎて、忘れてた。ファーストイメージの大切さ、忘れてた。

——なに? 一塁的なこと?

違います。じゃあ、解説すっぞ(キラッ)

——いま目、光ったね。

戦争が起こる理由って考えたことある?

——ない。

そう? 前にね、偉い人が調べたわけよ。ケネス・ウォルツっていう。で、その人が調べてわかったのは、一つは人間の性(さが)だな。業っていうの? 要は人間の本質が悪いから、争いが起きるってわけ。個人に理由を求める。

——うん、かずにい見てると納得できる。

ほっとけ。それで、次は、組織。たとえば、ナチスが悪いからとか、戦前の日本なら軍部が暴走したとか。

——いまでいったら、マスコミが悪いとか、官僚が悪いとか、そんな感じ?

うん、そんな感じ。特定の組織に原因を求めるってこと。で、最後は国家ね。国と国の関係でもって、戦争が起こるっていうわけ。

——で、どれが正しいの?

どれがってわけじゃなくて、いろんな理由があるってことかな。それで、個人が原因っていうのをファーストイメージ、組織が原因っていうのをセカンドイメージ、国家が原因っていうのをサードイメージって呼んだ。

——王、篠塚、長嶋って感じ?

微妙に年代が。まあいいや。でね、人生生きていく上で、どのイメージが一番大事かっていうと、それは?

——それは?

それは?

——それは?

ファーストイメージだよね。つまり、人生、楽しく過ごせるかどうかっていうのは、全部自分が原因だってイメージしとく。どんな状況に置かれたとしても、自分にすべて責任があるってこと。それは、世界に対する態度でもあるよ。世界をどう変えるかは、自分自身なんだから。

——世界って変えられるのかな?

わからないよ。でも、変えられるって考えるかどうかは、態度の問題だよね。

——なんか哲学的。

うん、哲学って、つきつめれば、その人がどう生きるかってことだから。やべ、決まった。決まりまくった。

——長嶋のおかげね。

・・・・。哲学者でアランっていう人がいる。その人は、人間っていうものを見つめるために、戦争にまで行ってしまったっていう人なんだけど、そのアランの言葉に、「悲観主義は気分のものであり、楽観主義は意志のものである」っていうのがある。

——どういうこと?

つまりね、すんごく、なにもかも飽きて、つまんない人がいるとするよね。でも、その状況を楽しくするには、どこかの王子さまみたいに、ほっといても次から次へ楽しいことが降ってくるような環境にある人じゃない限りは、自分から動かなきゃならない。楽しくなるように、自ら働きかけていかなきゃならない。むしろ、そうしていくからこそ、楽しくなる。

——確かに、反対に悲観的になるときって、自らそこから抜け出さないって感じもあるかもね。気分が滅入るのにまかせていると、どんどん悲観的になっていく。

そう。だから、その状況を変えようかどうかってのは、そうするか、しないかっていう、意志の問題なんだね。態度の問題とも言えるよね。たぶん、アランはそんなことを言いたかったんだと思うよ。

——それって、単に、いまの状況をポジティブに受け入れるっていうのとも、ちょっと違う感じね。

うん、自ら動いて変えていくってことだからね。ケネス先生の言ったファーストイメージってのは、個人が原因っていうイメージでしょ。自分が楽しい人生を過ごすかは、結局、自分で決めることだからね、ファーストイメージが大事になるわけよ。ランラン。なんか、自分で話してたら、楽しくなってきた。やる気でてきた。へへへ。ファースト、ファースト。

——それって、なんか気分に左右されているような気が。てか、聞いてあげた私のおかげだよね。

アホか~、自らの意志じゃ(ニコ)

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——かずにい、最近なんかつらいのよ。

なんじゃい、さっそく失恋したか?

——そんなんじゃないわよ。この前の話聞いて、戦略が大事だと思ったわけ。それで、すんごい目標たてて、がんばってるのね。スーパーモデルになって、世界征服って目標をたてたのね。

世界征服?

——そう。なんていうの、いわばナオミキャンベル? ナオミになるの。3年後になろうと思ってね・・・。来年、日本選手権優勝。さ来年、アジア選手権優勝、そして3年目についに世界選手権優勝よ。で、まずは読モあたりに、サクッとなっちゃえと思ってね。雑誌に写真送りつけてるの。読モになって、プリンターのCMに出て、有名になって日本選手権に乗り込むわけよ。えへへ。

ああ、ならわかるよ。ぜんぜん問題ないじゃんか。戦略的にもステップアップをちゃんと考えてて。いいよ。おまえ地道にがんばる女だな。

——でしょ、でしょ。でもね、最近つらいのよ。なんか、思ったより成果出てないっていうか。道筋ははっきりしてるんだけど、それを考えると逆に気が遠くなっちゃってね。やる気でないの。

喝ーーーっ。お前、わかってないよ。戦略わかってないよ。

——だから、愚痴こぼしたんじゃないの。プン。男って、だめよね。

どうせだめだわい。でも、今日の俺は宝くじが300円あたって最高に気分がいいから、特別におしえてやるよ。名づけて、幸せは足下に転がってる戦略じゃ。

—なんか、ワクワクするようなネーミングね。

お前、ポジティブだな。ポジティブな子は好きだよ。でね、トイレ掃除やれよ。心こめてやれよ。

——なにそれ? わたしのこと、女だと思って甘く見てるのね。

いま、おれ、極意さずけたっす・・・。実は、戦略には2種類あるんだ。一つは順次戦略。これは、順番にいつくかの方法を組み合わせてやっていくような戦略で、目に見えるようにはっきりしているのが特徴。つまり、目標をたてて、それに向かって、やるべきことをリストアップしていくような戦略だね。いまはやりの目標志向的な。

——私の世界征服への道ね。日本→アジア→世界と、順番に征服していく感じね。

そうそう。でも、それだと成果がでないとつらいだろ。目標に向かって努力することは大事だけど、世の中、そう計算通りにはいかないからな。うまく行かないときのモチベーションを保つのが難しい。それで、もう一つの戦略は、累積戦略っていう。

——積み重なる?

うん。成果がいつでるかは、わからないけど、それを続けることによって、ある日圧倒的な成果が生まれるような戦略だね。「顔はやめなよ、ボディボディ」って名言、知ってるだろ。三原じゅん子の。まさにあれだよ。ボディ、つまりお腹を打たれると、1発、2発じゃ、どうってことない。でも積み重なると、あるとき、あっ、俺ダメだ。もう倒れるって瞬間が生まれる。その瞬間まで、コツコツ、ボディ打ちを積み重ねる。これが累積戦略だね。

——で、それと、トイレ掃除とどうつながるわけ?

うん、よくわからない。

——殴るよ。ボディ殴るよ。

わかんないから、いいんだよ。デルモになるんなら、なんていうの、内面からにじみ出てくる美しさみたいなものが大事だろ。結局、顔じゃねえんだよ。心の錦よ。そんで、それを磨くにはどうしたらいい? 便所掃除だろ。それしかないだろ。いつ効果がでるなんてわかんねえよ。でも、いつか気づく。なんで私、こんなに心がきれいなんだろ。なんでだろ。あっ、トイレ掃除だってな。

——なんか、説得力ありすぎ。

本当にあった? まあ、戦略には2つあるんだってこと、決して忘れちゃなんねえよ。順次戦略と累積戦略。本当は両方やることが大事。目に見えるような目標と方法を決めて、数値化して結果をはかること。そして、いつ実るかわかんないけど人知れず地道に取り組んでいくこと。これを両輪のごとく、やっていくんだな。

——うん、わかった。わたし、毎日、毎日きれいになるわ。トイレが鏡になるぐらい磨き上げて、それで、きれいになった私を映すの。

おまえ、女の鏡だな。

で、ちゃんとした方は
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——かずにい、戦術と戦略ってどう違うの?

たとえば、今日子に好きな男の人ができたとする。

——そんな人、いないも~ん。

たとえば、の話だよ。その時に、今日子ならどうする? どうやって、その男を落とす?

——落とすって、なんか言い方が嫌だ。でも、そうだな、今日子は料理が得意だから、おいし~い、料理を作ってお家に呼んじゃうかな。男の人は、まず胃袋をつかめって言うでしょ。

喝~~っつ。それ、ぜんぜん喝だよ。その彼氏が、食べることに、あんま興味ない男だったらどうするよ。とりあえず、カップラーメン食っとけばいいみたいな。フランス料理も、イタリア料理も、違いよくわかんねみたいな。

——そんな男いるの?

いるよ。最近、結構いる。だから、今日子が料理がすんごい得意なのは知っているけど、それ、いくらがんばっても、たかし君の心はゲットできないってわけよ。

——たかし君って、誰よ?

いいんだよ、誰でも。でもそれって、日本の製造業と同じなわけ。日本人、モノ作り得意だろ。それにアドバンテージあると思ってるだろ。だから、商品が売れなかったら、もっと性能がいいもの作ろうって思っちゃう。でも、そもそもそんなものいらなかったら、どうするよ? がんばっても、元も子もないだろ。

——なんか、その言い方冷たくない?

現実をみなきゃだめだよ。リアリズムが大事なんだ。今日子の場合は、料理いくらがんばても、たかし君は落とせない。じゃっ、どうする?

——たかし君が、好きそうなものリサーチするかな。職場のふだんの会話で、それとなく聞いてみるとか。たかし君とつるんでる、男友達に聞いてみるとか。

そう。いい線いったな。まず調べるだろ。それで、たかし君は食い物には全くこだわりがないけど、洋服気違いだってことがわかった。いわゆるヨウキチだね。

——かずにい、言っていい? 前から思ってたけど、言葉感覚、変だよ。まあ、でも、洋服が好きだったら、一緒にお店行って、良さそうなの選ぶお手伝いしてあげるとか、それとなく趣味聞いといて突然プレゼントしちゃうとか、いろいろ方法はあるわね。そもそも、一緒にウインドウショッピングしてるだけでも、いいかもしれない。こいつといると、なんだか楽しいんだよね、とか思われたらシメタものよね。落ちる寸前、イヒヒ。

わーっ、女、怖っ。でも、わかってきたろ。男を落とすには、彼がどんなものを好きなのか、リサーチして、その結果に応じて、対応すればいい。料理だとか、洋服だとか、そういう個々の具体的なレベルじゃなくて、目的をゲットするための一般的な考え方、それこそが戦略なんだ。

——ふ~ん、戦略は抽象的なんだ。

そおっす。そして、その戦略によって、導きだされた方法、それが戦術。料理で落とすとか、洋服で落とすとかね。それは相手によって変わってくるわけ。それで、さらに、料理の腕前をあげるとか、洋服のセンスを磨くとか、そういったレベルのことは技術のレベルのお話しになる。つまり、戦略→戦術→技術って具合に、抽象的なものから、より具体的なものになっていく。

——じゃあ、恋愛っていう勝利を得るためには、まず、戦略に焦点をあてるってことが大事ってわけね。

その通り。いきなり戦術を決めても外してたら意味ないし、ましてや技術ばっかり磨いてても、勝利を得ることはできない。

——なんか、戦争みたいね。

人生は、戦争なんじゃ~~。

——かずにい、いま遠くみたね。振られたこと思い出してたでしょ。彼女、あけみさんだったけ。

あゆみさんじゃ、ぼけっ。そんで、もうちょっと、話しとくよ。たとえば、英語のスキルアップをがんばってる人が多いだろ。でも、それって、なにレベルのことかな?

——スキルっていうぐらいだから、技術レベルね。

そう。一番下の技術レベルなんだ。だから、盲目的に、英語だけを磨いても、それを人生というステージの中で、どう生かしていくか、わかってなければ、意味がない。

——かずにい、いまひょっとして、良いこと言った?

いや、さっきからずっと・・・。たとえば、オレは地球を狭くすることが生きる目的だとするよね。

——なんか、微妙にわかりづらいんですけど。

つまり、国と国との垣根、人と人の垣根をなくして、距離を縮めることが目的だっちゅうことだ。

——かずにい、そうなにいい人だったけ?

たとえば、の話だよ。おれが、そんなにいい人のわけないだろ。で、そんな崇高な目的を達成するために、どうするか? 俺は考えたね。外人とも、タメでわたり合えるような交渉力を身につけよう。それで、コミュニケーション力をウルトラマックスにして、世界に打ってでようと。

——相変わらず、なんか大げさ。

ほっとけ。まあ、いまのが戦略さ。そんで、そのために、まず外資系の会社に入ることにした。これが戦術ね。外資系の会社じゃなくても、いいんだよ。日本の商社だっていいかもしれないし、外国の大学の研究員になるんだっていいかもしれない。その辺は、いろいろ選択の余地がある。

——わたしは、バレリーナになるわ。小さい頃からの夢だったもの。

はげしく、関係ないな。おまえ、懲りない性格って言われたりしない? で、外資系の会社に入るために、英語をナイフのように磨きあげると。これが技術さ。戦術があって、戦術を達成するために、技術力をアップさせる。これでようやく、英語の勉強ってものが、戦略、戦術の次の段階にちゃんと、位置づけられた。

——なんか、そうなると、英語も勉強する気になるわね。

そう。おのずと、どんな風に英語を勉強していけばいいかってこともわかってくるし、目的意識があるから、勉強の仕方も変わってくる。だから、英語の勉強って言っても、こんな風に位置づけをしっかりしていくことが大事なんだ。

——人と人の垣根をなくすってことなら、もしかしたら英語を勉強しなくてもいいかもしれないわね。歌舞伎役者になるとか。歌舞伎を世界で見せて回るとか。

そうだね。うん、そうだね。でもそっちの方が難しそうだけどね。じゃんじゃん。


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