浪人するか、それとも第二志望の大学に行くか。
どうしても第一志望の大学に行きたいと言えば、きっと親も理解してくれて、浪人させてくれるだろう。
でも、また一年間勉強をするのか。
もう、力尽きただろ。
第一志望の大学に行くことが、ほんとうの目的じゃないだろ。
そう思って、浪人するのはやめた。
僕の本当の目的は、東京に行ってミュージシャンになること。
大学の4年間は、そのための期間に過ぎない。
そう考えていた。
もっとも、第一志望の大学に受かった上でミュージシャンを目指すっていうのが、理想ではあったのだけど。
それと、もうひとつ、第一志望の大学に入りたい理由があった。
その大学に受かったら、好きな女子に告白しようと考えていたのだ。
見た目も良くない、スポーツもできない、ちょっと不良っぽい男子がもモテると言われる思春期の時期、一部の女子から「仁科君って危険な匂いが一切しないよね」と言われるほどの平凡さを兼ね備えていた僕にとって、一流大学に合格するというのは、これとないアピールになると思っていた。
その子とは、高校2年のときに同じクラスになって、ずっと気になっていた。
たまに話すことはあったけど、仲が良いというほどではなかった。
その子が好きなタイプは、ちょっとヤンチャな感じの男だったので、正直言って、僕には彼女にアピールできることが何もなかった。
「好きって言われて、そこから男として意識しだすこともあるよ。」
別の女子が言っていた言葉が、僕の心の支えだった。
その子は、ヤンチャな男の他に、尊敬できる人が好きだと言っていた。
ヤンチャ要素の一切無い僕は、そこに賭けるしかない。
第一希望の大学に受かったら、きっと尊敬されるから、告白したら付き合えるかも知れない。
そんなことを考えていた。
でも、結果は不合格。
この妄想も、実現することはなかった。
