大学に受かった。
第二志望の大学だった。
本当に行きたかった大学は3学部受験したけれど、すべて落ちた。
高校の卒業式の日、第一志望の大学の合格発表の日だった。
3学部受けた中でも、一番自信のある学部だった。
合否は電話で確認することができたので、こっそり大学の合否確認システムの番号を携帯電話でダイヤルした。
僕の通っていた高校は、いわゆるバカ高ではなかったが、進学校でもなかった。
生徒の半数以上が大学に行くような、ちょっとだけ進学校よりの普通の高校だった。
ただ、僕が第一志望にしていた大学に行く人、というか行ける人は、毎年1人いるかいないかぐらいだった。
先生を呆れさせながらも受験したその大学の合格発表、しかも、試験が終わったときに「完全に受かったわ」と思ったその学部の合格発表の日が卒業式の日だった。
クラスの友達は卒業式が行われた体育館から教室に戻ってきていて、高校生活最後のホームルームが始まるのを、卒業アルバムを見ながらおしゃべりしながら待っていた。
ここで、僕がその大学に受かったことを報告すれば、絶対に盛り上がるに違いない。
― そんな独りよがりの考えだけが、僕に合否システムへの電話をさせた。
結果は、不合格。
もちろん、僕は誰にも何もいわない。
教室はさっきと何も変わらない平和な喧騒があるだけだ。
数分前に抱いた妄想は、早くも非現実のものになった。
卒業アルバムにメッセージを書きあう気もまったく起きず、ただひとり、ぼーっと自分の席に座っていた。
クラスで一番仲の良い奴が話しかけて来た。
伊藤だ。
伊藤は学校の推薦枠で、僕が第二志望にしていた大学に11月の時点で合格していた。
「おい、仁科、どうした。なんでそんなテンション低い。」
僕は、事情を話した。
「お前、ほんとバカだな。普通このタイミングでそんなことする?しかも、受かったらみんなに言うとか、ほんとやらしいわ。」
何も言えなかった。伊藤の言うとおりである。
ホームルームが終わり、無理やり知り合いの後輩に学ランの第2ボタンを渡し、太陽が昇りきった3月の快晴の空の下、家が同じ方向の友達と一緒に自転車で帰った。
高校生活最後の日なので、せっかくなら何かしてから帰りたいと思ったが、特に何も思いつかなかったので、友達とふたりでマクドナルドでバリューセットを食べてから帰った。