折り返しなんてしなければよかった・・・。
今更後悔してもしょうがない。
とある製作会社で管理系の仕事をしている私「桜子」
派遣社員として採用されたのは去年の冬。
9時勤務開始!!
休憩12時から13時まで!!
こんなきっちりした時間の拘束にいつも不満を抱いていた。
やることやっていれば、拘束時間なんて必要ない。
いつも些細な決まりごとにうんざりしていた。
しかし、この会社は違う!!
製作会社ということもあり、お客さんのいうことには絶対服従!!
どんなに詰まったスケジュールでも締め切りには間に合わせないといけない!!
徹夜は当たり前。自分の寝る間を削っての仕事は日常茶飯事。
だから、製作の担当者は全てフレックス。
こんな状態なので、時間に関しては五月蝿く言われないのだ。
そんな開放感が気に入って、ここで仕事をしようと決めた。
しかし、現状はそんなに甘くはなかった・・・。
時間が自由な環境に付いてくるものは
開放感というよりは
社員の性格的な自由さだった。
製作に関しては天下一品!!
どんな人達にも負けない努力とクリエイティブな才能!!
そんな彼らは、当然自分たちの才能を生かすべく製作に夢中・・・
「若い会社」という肩書きが手伝っているせいか、社内の提出物・経理・総務に関する期限には
気持ちがないようだ・・・。
そんな彼らに対して売上に関する流れや、取引先との書類を作成すること・送付することについて
アプローチするも、心に届いているのはほんの一握り。
おかげで、私「桜子」は自分の頭のハエを追うことに必死というだけでなく、
製作者が入力する書面のデータにも目をむけていないといけない。
ああ・・・この人はいつ入力を終えるのだろう・・・
ああ・・・この人はいつ提出するんだろう・・・
ああ・・・まだ入力していない・・・
ああ・・・提出お願いしたのにどっかへ消えた・・・
より多くなった頭の上のハエをおいかけないといけないうえに、トドメを指した事といえば
仕事を教えてくれる先輩。
桜子よりは年下だけど、仕事は几帳面にやりそうだし、話し方もしっかりしているように見えた。
当時安心していたが、実際蓋を開けてみれば
・遅刻は多い
・引継ぎも中途半端
・言ったことはすぐに忘れる
・言っていることに統一性がない
・かなりの気分屋
・突然、重箱の隅を突っつくように細かくなる
・自分の言うことは絶対!!
・人のせいにしている
・身近な人の悪口は耐えない・・・
つかみどころがないかなりの曲者。
そのうえ、目立ちたがり屋で下から上がってくる人間を潰すときたもんだ・・・。
そのうえ、直属の上司と名乗る男(33)
桜子よりは年上の上司・・・。
見た目はベンガルに似ているという桜子から見た第一印象。
しかし、周りはベンガルに触れていないということもあり、今の今までずっと言わないでいた。
彼は、直属の上司であるにもかかわらず
桜子たちの仕事の面倒は見ない。
むしろ、経理の味方をしており
桜子たちが忙しいときに
「この仕事をやれ!!」と命令してくることは日常茶飯事。
桜子は経理の仕事はしていない。担当でもない。
「範囲外の仕事」
「やることもたくさんあるし、仕事に慣れていなくて大変である」とこちら側の訴えに対して
「範囲外なんて関係ない!!うちの会社の方針に従え!!」と無理やり押し詰めたり
「じゃあ、忙しいことはどのくらいで終わるのか?何時間あれば終わるのか?」
などと具体的な時間の数字を要求される・・・。
確かに、上司の言い分は間違っているとはいえない・・・
しかし、桜子から見る「はじめてのハイリスク」の上にこの圧力・・・
桜子はどうしても耐えられず、
徐々に寡黙になっていくのを日に日に感じていた・・・
更に、気分が落ち込みがちになることもしばしばあり、
迷いに迷ってようやっと決断していくことにした場所
それは「心療内科」
診察してくれた先生は、桜子に症状だけをきき
テンションが上がる薬と気分が楽になる薬をくれた・・・。
脳波も検査せず、心理状況もろくに分析しない・・・
このままだと薬漬けでおかしくなる・・・
そう判断した桜子は、未だにその薬に手をつけていない。
心療内科の件については未だにベンガル上司にも、多重人格な先輩にも
派遣会社にすら言っていない。
桜子の中で、これ以上耐え切れない何かがあったときの切り札に使おうか・・・と考えているからだ。
そして、派遣会社には契約を終了したいことを告げ
ようやっと、終了の目処がついたところだった。
気持ちが疲れているということは、自分でも自覚できていた。
そこで桜子は携帯を買い換えることを決意した。
去年、引っ越したが、そこでは現在使っていた携帯電話の電波が悪く
かなり不便に感じていた。
変更すべきか否か。1ねんくらい迷い続けていたが、今回を機に決意が固まった。
携帯のポイントは残っているが、そんなことに未練はない。
きっと、携帯を変える事で気分も変わるだろう・・・。
何かから離れ、新しい何かが見えるかもしれない・・・。
そんな一心で携帯会社と携帯を変更した。
今では古い扱いとなっている携帯電話・・・
すぐに解約したいが、番号移行や請求の〆の関係上実行に足止めをかけていた。
しかし、10日くらい我慢すればの話・・・。
10日後には、古い出来事と切り離しできるから。
そんな古い携帯のほうに、偶然にも他の派遣会社から問い合わせが相次いでいた
若い会社とは縁を切ろうとしているとき。しかも他社の派遣会社には何も声をかけていないのに
なんて幸せな偶然なんだろうか。
嬉しく思いつつも、折り返しの連絡が伸びたまま・・・
仕事の多忙さと疲労感が手伝って、時間のすれ違いが非常に多くそのままになっている。
そしてまた一軒の着信・・・
見たことがない携帯の番号・・・
これも、ひょっとしたらどこかの派遣会社かもしれない。
派遣の営業の方が連絡してくれたのかもしれない。
留守電を確認するも伝言がないことを確認し、用件を聞きたいことや
携帯番号なら、かけてもすぐにつかまりやすい。
そう思った桜子は、早速折り返しの電話をかけた。
・・・
5回くらいのコール音の後に出たのは
どこかで聞き覚えのある男の声だった・・・。