店の外に出ると小雨は止んでいて、
辺りはすっかり暗くなっていた。
「ごめん。遅くなっちゃったね」
「送るよ。お家はどこ?」
「この先の公園。」
「そっか、俺もよく通るよ。その公園」
お好み焼き屋さんから公園までの距離は徒歩10分程だったけど、たくさん喋ったせいか結構長く感じた。
公園が近づくにつれ、ナナコの足取りがゆっくりになった。
「お母さんやお父さん居なくて寂しいか?」
ナナコは無言でコクンと頷いた。
「ごめん。遅くなっちゃったね」
「送るよ。お家はどこ?」
「この先の公園。」
「そっか、俺もよく通るよ。その公園」
お好み焼き屋さんから公園までの距離は徒歩10分程だったけど、たくさん喋ったせいか結構長く感じた。
公園が近づくにつれ、ナナコの足取りがゆっくりになった。
「お母さんやお父さん居なくて寂しいか?」
ナナコは無言でコクンと頷いた。
「ある女優さんの話なんだけどね...」
「富山で生まれ育ったその女優さんが中学生の頃に、ご両親が離婚されて、お母さんと二人、親戚の人を頼って京都に移り住まれて、思春期の五年間くらいをこの京都の街でお過ごしになったんだって。」
「で、お母さんに高校進学を反対されて家を飛び出して、アルバイトを転々としながら自活して、お金を貯めて東京へ出て、銀座のホステスさんとして働いている時にスカウトされて女優デビューなさったらしいよ。」
「ね?」
「凄いと思わない!?この話。」
「凄いと思わない!?この話。」
「清楚で可愛らしい女優さんの見た目からは想像も出来ないんだけれど、たっくさん辛い思い経験なさっても、明るく頑張って居れば、どこでどう人生の転機が訪れるか知れないってことだよ!」
俺は相槌を求めるかのように、
下を向いて歩くナナコの顔を下から覗いた。
「ん。♪」
よかったっ。
笑った。
「これ、おにぎり。」
「おなかが空いたら食べて。」
「ん。♪」
「ありがとう」
しかし、俺いつも思うんだけど、笑顔とセットの「ありがとう」って言葉は、魔法の言葉だね。
「ん。♪」
よかったっ。
笑った。
「これ、おにぎり。」
「おなかが空いたら食べて。」
「ん。♪」
「ありがとう」
しかし、俺いつも思うんだけど、笑顔とセットの「ありがとう」って言葉は、魔法の言葉だね。
薄闇の背後から迫る自動車の音に、俺はとっさに車道側に立位置を代えて、テールランプを見送るとすぐ、公園側のナナコに振り返った。
「...!!」
いない。
ドラキュラがマントで身を隠すみたいにナナコを公園側に寄せて、車道側に立位置を代えて、過ぎ去る自動車のテールランプを見送るまでの一連の動作は、10、4、5秒といったところ。姿を隠すなんて無理だ....
もしや、あの子「くノ一」かぁ?
令和の世に?
令和の世に?
ない、ない。
いやいや、ここは千年の都だ。
鞍馬山には天狗が居るっていうし、
妙心寺の池には河童が出るって噂だ。
「くノ一」の方が幾分現実的か...。
「くノ一」の方が幾分現実的か...。
「おい。」
「どこ行った?」
....。
「急に消えるなよ!」
「...怖いだろ。」