スパークリングウォーターと一緒に運ばれてきた付だしの「枝豆」と睨めっこをしているナナコに、広げた「お絞り」を差し出した。
「手をおだし」
三角巾で吊っていない方の手をお絞りで拭いてあげると、漫画の目の蜃気楼のようにウルウルとしてるナナコの瞳に、不覚にもキュンときてしまった。
いかんいかん。相手は子供だ!なぜキュンとする
使用済みのお絞りを畳み直していると塵取りのような物を持った店員さんが来て、
ダンプカーが積み荷の砂を降ろすみたいに鉄板の上にソレを下ろしながら営業スマイルで呟いた...
「ホタテのバター焼きでございます」
鉄板に顔をぐっと寄せて物珍しそうに見つめるナナコの目が寄っていた。かわゆい♪
「パセリだよ。たぶん」
「ほら、スープなんかによく振りかけてあるやつ」
割り箸を上下に引っ張りながら、顔を鉄板に近づけたまま離れないナナコを見て、猫みたいな子だなーと思った。
小皿にバター焼きを二切れのせて、ナナコの前に置いた。
「さ。熱いうちに食べよう」
目上の人より先に箸をつけようとしないナナコを見ていて、きっと躾のよい家庭で育った子なんだろうなと思ったその時、猫みたいに顔を器に近づけるナナコ。
「おい。おい。」
「冗談やめて、ちゃんと手で食べなさい」
「ほーい。♪」
素直に返事をしたかとおもうと、悪魔が餌のネズミをつまみ上げるかのように素手でソレ掴むと、天を仰いで鷲掴みのホタテを口の中に入れた。
「んまっ。♪♪♪」
肩を左右に振りながら万弁の笑みを浮かべるピンクの口紅つけた、おませな高校生...
美味しい事を「やばっ。」と言う変な日本語を使う女子高生とは、些か雰囲気が違う様子だ。
「き、君は...」
「ジャングルから来たのか?」