箱根駅伝から世界へとマラソンの強化の関係 | 徳本一善オフィシャルブログ「-ICHIZEN-」by Ameba

箱根駅伝から世界へとマラソンの強化の関係

良く箱根駅伝を否定的な内容に、箱根駅伝がマラソンの弊害になっているためオリンピックや世界大会で活躍できないという声が毎年のように各メディアに取り上げられている。

その理由としては、箱根駅伝を作った理由が「世界と戦う選手の育成」という名言が入っている事に関係しているのかもしれません。

最近Numberという雑誌にもマラソンと箱根駅伝を題材にした内容の記事が掲載されていました。No.http://number.bunshun.jp/articles/-/823104

箱根駅伝は大々的に「箱根から世界へ」というフレーズを使い続けてきて、お茶の間の皆さんは何となく、箱根駅伝の選手は世界で活躍する素晴らしい選手になる言わば「金の卵」というイメージを強烈に持つようになったのではないでしょうか?

余談ですが、走った事のある僕は、「こういうフレーズ作らないとかっこはつかないし、大義名分のキャッチフレーズとしては最高だろうな」と要するに視聴率を取るためのキャッチフレーズとしては最高なんだろうなーぐらいにしか思っていません。

また箱根駅伝は僕の頃は15校と毎年150人もの選手が走ってきましたが、今ではさらに増え200人にさらに記念大会では230人もの選手が走ってきました。

そんな選手達に世界で活躍できると思いますか?とアンケートをとれば自己評価としてそういった思いのある選手は200人中多くたって20人未満ではないかと予想します。(世界で活躍したいですか?という質問ならわんさか出てくるでしょうが)

その理由には、箱根駅伝を優勝した青山学院のメンバーの選手でさえ、卒業すれば一般企業に就職する選手がいるのですから、箱根駅伝に出場したからといって世界を目指すんだ!と次のステージに行くような選手は稀だと言う事ではないでしょうか?

オリンピックに出た過去の選手の中にも2つに分かれています。大学生から世界を意識していた選手と、意識はしていなかったけど一生懸命走っているうちに結果が出ていつのまにか自分も世界に行けるかもしれないと気づき目指すようになった選手です。

僕自身は前者で、「箱根駅伝を通過点でオリンピック選手になりたいと学生の頃から思っていました。」至極当然で僕は学生長距離界では、一番良いタイム、そして実績を当時は持っていましたので次ぎに目指すべきところは競技をするのであれば日の丸しかないのは必然なんですよね。(ユニバーシアードで銅メダルも拍車をかけましたね)

しかしロンドン五輪に出場した藤原選手はこんなことを言っています。
「箱根駅伝は一つの簡潔できるゴールがあって、オリンピックは別物で箱根の先にオリンピックではありません。箱根は箱根で完結して、オリンピックは仕切り直しでオリンピックを目指すので箱根とは関係ありません」というような事を言っていました。
これは逆に後者の、努力し続け気づいたら世界を目指せる位置にいたという感じではないでしょうか?

箱根駅伝から世界へという意識は、僕にとっても作られた意識でした。
オリンピックにいける力に近づきつつあったから日の丸をつけたいという意識があっただけで箱根駅伝に出場できるから世界を意識している事は全くなかったです。むしろ箱根駅伝は「自分がアスリートとして名前を売る場所」と考えていました。

要するに、日の丸をつけられる力がついてきたから世界で活躍する選手を目指すのであって、箱根駅伝に出場できるから世界を目指すだなんて事はあり得ないという事です。

学生で世界を目指す意識のある選手は必ずこういいます。「箱根は通過点です」とね。
それを着色を加え「箱根から世界だ!」というフレーズが飛び交う訳です。

おおよそ箱根駅伝選手の考える現実的な事で多い順は、
1良い企業に就職できる
2実業団に所属できる
3アスリートとして名前を売って世界を目指す

というこの三段階の選手の意識に分かれていると思います。

多くの選手が次のステージ実業団をゴールにしていると言わざる終えません。
実業団入りした選手のモチベーションは分岐点が個々にあるような気がします。箱根駅伝を経験し、目的が達成された彼らには、次に大舞台は日の丸しかないのですから。

それ故に、今井正人選手も記事で言っていますが、「目が輝いている選手が実業団には少ない」と感じている現状が物語っています。


実業団入りした選手の中で、おおよそ20%前後の選手しか生き残らずその他の選手は早い段階で戦力にはならず、引退を余儀なくされる。10年も実業団で競技できる選手はおよそ5%ぐらいでしょう。おそらく3年で競技を終える選手は半分はいるのではないでしょうか。(次から次へと選手は入ってきますからその都度誰かが首になる)

そして駅伝のメンバーにさえ入れば実業団として競技を続けられる。そこで満足している選手が大半です。

また引退を余儀なくされたしても、正社員として企業に残れるのですから選手は安心を手に入れているのでしょう

箱根駅伝の話はこれぐらいにし、では今回ご紹介している記事にも書かれている記事で過去5大会オリンピックマラソン選手で箱根駅伝に出場していない選手が一人もいないという事ですが、これも統計的に見れば、年齢別で5000m、10000mランキングを見ると、おそらく80%選手は関東の大学で箱根駅伝経験選手が占めることを考えれば確率的にはその中から日の丸をつける選手は多いでしょう。

また高校から実業団にいくような選手であっても、高校ランキングをみれば、箱根駅伝を目指し関東の大学に進学する選手はおおよそ80%ぐらいいます。箱根駅伝で活躍できる選手なのですから走るか走らないかだけでそれだけの力があるから選ばれるとごく当たり前な事なので、箱根駅伝を走ったから世界で通用しないと言う話ではありません。

なので焦点となるのは、日の丸をつけられる素質のある選手がなぜ箱根駅伝を走ろうと思うのか?
という話になるのではないでしょうか?

最近では、大迫選手が箱根駅伝には走りはしましたが、本当ならば走りたくないスタンスを崩しませんでした。チームのために走るという事はあっても箱根駅伝から世界を狙ってやるという意識は微塵もなかったでしょう。

彼は日清食品を退社し、プロの世界を選びました。その弊害は駅伝をしなければいけないとう企業システムに彼は違うと意思表示をしたという事です。

この記事のように過去をさかのぼれば、世界選手権とオリンピックでメダルを取った選手は箱根駅伝に出た選手と高校から実業団に進んだ選手の2パターンだけです。

公務員やプロランナーは少数派(数人)でアジア大会ではメダルはありますが世界大会で入賞すらありません。

それは彼らは望まなかっただけの話で、実業団という組織に加わる事も簡単にできるのですから。
今で言えば特殊な人たちという事になります。

そう考えれば、箱根駅伝は弊害でも何でもなく、そして強化でも何でもないと私は言い切りたいと思います。

箱根駅伝はマラソンの強化にはつながらない。僕は断言します。(そうはいっても今の箱根駅伝に出場している大学生は現状でマラソンを走っても2時間10分から12分で走る選手は結構いると思います)

ただ普及の面から言えば箱根駅伝は絶大な貢献度を誇ります。スポーツというカテゴリーで見ても駅伝が長距離選手が生き残る土壌を確立した決定的な物だと思います。

箱根駅伝はマラソンをやりたいと思う選手を一人でも増やす普及の場所というのが正しいのかと。

そして世界に通用しなくなったマラソンの課題は東アフリカ勢とどう戦っていくのか?だけです。

気が向いたらその課題を書きたいと思います。ではでは。