伝統 | 徳本一善オフィシャルブログ「-ICHIZEN-」by Ameba

伝統

大学時代からの友人である邑木と飲んだ時の話なのですが、実に彼は熱い話を語ってくれました。

私はこの話ですごく考えさせられましたんで紹介でもしようかと。


邑木 「おれはチームを強くするためには、絶対に四年生の力が必要だと思う。だから就職活動の合間でも時間の許す限り絶対にグランドに足を運んでもらう。


そのことである一人の選手をやめさせてしまった。


しかもエースだよ。インカレも優勝しているぐらいのすごい選手。


おれはその年は、彼に賭てた。彼がいればマイルリレーもインカレで優勝できるぐらいの戦力があった。


徳本 「なんでやめさせたの?」


邑木 「合宿があった。一日でもいいから時間があるときに顔を出してほしいと彼に頼んだが、彼はできないと答えた。


何度も説明した。今後チームが強くなるには、おまえが顔を出して一緒にトレーニングを一日でもするのと、しないとでは天と地ほど違ってくる。就職活動に差し支えない程度でいい時間を作ってほしいと。

それでも彼は首を縦には振らなかった。


だから彼に言ったよ。役目を果たせないのならおまえはチームには必要ないって。グランドに顔を出さない選手をインカレに出すわけにもいかないしな。


両親にも彼を説得するようにお願いした。彼に思いとどめてほしいかったからな。」


徳本「結局彼はどうしたの?」


邑木「やめるって言われたから、了承したよ」



結局彼はやめたそうです。


邑木はそんな自分を悔いてました。彼を引きとめられなかったことを。


親にも謝罪したそうです。自分の力の足らなさを痛感したと。


それでも譲れないものがあると言います。


今の四年生にも同じことを言ったみたいです。(今の四年生は了承してくれグランドにいることでチームの雰囲気が良いみたいです)


邑木は言います。


「就職活動で忙しい中でも顔だして一緒に汗を流してくれる4年生を見て、後輩も同じように後輩のために一肌脱いでくれる選手になる。


そうやって、チームの雰囲気を作っていくと同時に、選手自身が人間的に大きく成長することになる。


その経験は必ず今後に生きてくるはず。


俺らもそうやっていろんなこと考えてきただろ?


もちろん俺らの大学は、入ったときから強かった。強い先輩の背中見て負けたくないと思っただろ?その強さを守ろうと思って必死だっただろ?


おまえだって箱根常連校だから箱根は絶対でないといけないって思ってただろ?


どの選手よりもグランドに最後までいたのは俺たちだっただろ?


それを下の連中に伝えようと必死だっただろ?


でないとあんなに後輩に怒らないだろ普通(笑)


うちのチームはそういう意味ではまだまだなチームだからこそこういうことの積み重ねが必要なんだよ。


指導者は相当辛いぞ。だからこそやりがいがある。とくにおれみたいに若くして監督になれば、勧誘だってあいさつにいっても目の前でパンフレット捨てられるわで相手にしてもらえない。


すごい歯がゆいぞ。


でもそれでも誠心誠意頭下げて伝えていかないと勧誘だってできない。


おれの武器は情熱のみだよ。(笑)あとは預かった選手と全力に向き合う。


その向き合うのが死ぬほどきついと思い知らされるよ。だからある意味楽しいんだけどな。」


とまぁ話は長いのでこの辺にしておきます。(まだまだいい話たくさん聞いたんですけどね)


この話で私はまだまだ小さい人間だなということを実感したというか同い年である邑木に劣等感すら感じました。


経験とはここまで人としての差を広げてしまうんだなと。


彼の話で私は、伝統とは何か?ということを考えるきっかけになりました。


伝統の意味を調べてみるとある民族・社会・集団の中で、思想・風俗・習慣・様式・技術・しきたりなど、規範的なものとして古くから受け継がれてきた事柄。また、それらを受け伝えること。「歌舞伎の―を守る」「―芸能」


と書いてありました。


では私が思う伝統とは何か?ということです。

私が思うに、伝統を継承するとともに進化させていくことなのではないかと。


「伝統=進化するためのもの」


同じことをするのではなく、古くから受け継がれてきた事柄をより素晴らしいものに進化させていくことが伝統に必要な要素なのではないかと思うのです。


時には失敗することもあるでしょう。その時は古くから受け継がれてきたいいものに戻ればいいまたそこから良いものへ進化させればそれこそが伝統になるのではないかと。


また伝統というのはいつでも生まれるし、なくなるものと解釈してもいいかもしれません。(これは進化しすぎると起こることもあるのかもしれません)


長く続けば続くほど伝統という言葉の重みが増してくる。


伝統という言葉だけではおそらく語りつくせぬほどの話が出てきそうなので、話を戻して考えます。(すいません考えてしまうとあれもこれもになってしまいました!汗)


私の身近な伝統とは、今回の邑木がやったことのように意思を伝えていくことに尽きるのではないかと思います。


良いものにするために時には苦しいことや辛いこともあるでしょう。


それは伝統を守りぬく意思とよいものにするための進化という努力を怠らないようにするための戦いなのではないでしょうか?


今回の話は確実にチームの伝統になって、チームを大きく飛躍させる良いことだと感じました。


それは彼の思う意思を選手に伝えて、今度は選手が選手に伝えていくものになるからです。


伝えることは、言葉であるときもあれば、行動であるときもあります。


それはどちらにせよ伝えるということです。


今回の話は、チームが一つ伝統を作ったにすぎません。しかしこれをもっといいものにし、受け継がれていけばきっと良い結果が出るのではないかと思うのです。


そんな話を聞いて、日清食品陸上部の伝統ってなんだろう?と考えてしまいました。


創部15年というチームなので、まだまだ伝統といえるほどのものがないのかもしれませんが、一つ一つ良い伝統を作っていきたいと思いました。


とまぁそんな話です。