多くの方々にとっても記憶に新しい、そして何より事業にインパクトを与えたであろうコロナ禍は、塾にとっても同様に大きな影響をもたらしました。

 

特に対面型授業を価値として提供していたことと、時を合わせて普及しつつあったオンラインサービスの存在は、塾が今後どう存在意義を訴求していくべきか深く考えさせられるきっかけになりました。

 

結論としては、対面であることに価値を感じる層が失われることはなく、またそこに真摯に向き合ってきたことの成果か、危機“感”で済み、事業の存続にまでその影響が発展することはありませんでしたが、むしろ別の論点で大きなきっかけとなります。

 

私自身が40代に突入して心身の変化を感じたり、家庭を持ち一人の父親としての存在意義を考えたり、そんな私個人の生き方に関して様々に思いを巡らせる機会が増えてきたのです。

 

一方で、それまで多くの仲間のサポートがあってやって来れたこととはいえ、まだまだ実務レベル一つとっても私に依存するところが大きすぎました。そうした状態を打破するにはもっと組織として機能的な体制を構築する必要がありましたし、その為には固定費増を吸収できるだけの規模も必要でした。

 

すなわち、多店舗展開への構想です。

 

実はそれまでにも、チャンスはありました。が、塾という社会性の高い事業の性質故に、安易なスクラップ&ビルドという展開は避けるべきですし、であれば、より高い成功確率を求め、慎重な調査と計画が必要・・・という事情もあり、結果的に実現できずにいました。

 

またこの頃には、一度巣立った生徒たちが、講師として戻ってきてくれるという嬉しいケースも生じており、彼ら彼女らに少しでも夢のある体験をさせてあげたい親心のようなものもありました。

 

そんな中、「ここならば!」と思える物件が出現したのです。このチャンスを逃せば、次はいつになるか分からないと考えた私は、意気揚々と温めていた事業プランをオーナーにプレゼンしました。

 

が、結論は芳しくないものでした。私の未熟さもあったでしょうし、まだコロナ禍がどう影響するか分からない中での経営判断とすれば、オーナーにも心苦しい部分はあったと今となれば推察されます。

 

とは言え、否決という結果を受けて、私の心はある方向に傾いていくことになります。