第六章 司法

第百二条       (旧第七十六条)

すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関及び軍その他戦力組織は、終審として裁判を行うことができない。軍法会議は下級裁判所の第一審に属するものとし、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置及び監督される。

関白に対しての弾劾裁判所は最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する。

すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。

【説明】

この条文は最高裁判所以外のいかなる組織も終審とする事は出来ないとするもので、すべての裁判所は最高裁判所の管轄とするものである。

軍法会議をつけ加えたのは、第9条の修正により自衛権としての軍の保有を認めた事で、軍法会議を開く可能性ができたためだ。軍法会議は一審のみの設置とし、その管轄は軍では無く、最高裁判所とする事にした。これは旧軍のような滅茶苦茶な軍事法廷を避けるためだ。

また関白に対する弾劾裁判所は、中立性を保つために最高裁判所の管轄とする事にした。

関白への弾劾裁判についての細かい規定、要件については法律で規定するが、基本的に弾劾裁判所は有罪か無罪かだけの判断を行い、実際の司法的な判決は通常通りとする。

 

第百三条       (旧第七十七条)

最高裁判所は、訴訟に関する手続き、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。

検察官は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。

最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

 

第百四条       (旧第七十八条)

裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことはできない。

 

第百五条       (旧第七十九条)

最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律定める員数その他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、関白がこれを任命する。

最高裁判所の裁判官の任命は、衆議院の承認を必要とする。

裁判官は任命後初めて行われる国政選挙の際に国民の審査に付し、その後四年の期間を置いて国政選挙にて同様に審査に付すとする。

前項の場合において、投票者の多数が裁判官の信任を否決したときは、その裁判官は、罷免される。

審査に関する事項は、法律でこれを定める。

最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齡に達した時に退官する。

最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

【説明】

まず任命は内閣総理大臣から関白へ変更している。そして承認は衆議院のみとした。

参議院を含め無い理由は、この憲法案では参議院は地方の代表であって、必ずしも国民全体の意思を表していないからである。

裁判官の国民審査は期間を10年から4年に変更した。変更した理由は国民の司法への参加をより積極的にするのと、裁判官による国民視点での司法運用を促す為だ。

また信任方法も現行憲法では「裁判官の罷免を可」と言う文言を変え、この憲法案では「信任を否決」に変更した。

何故このように変えたかと言えば、現在国政選挙で行われる国民審査は、辞めさせたい裁判官にX印をつけると言うもので正直分かりにくいからだ。何故このような分かりにくい方法で行うのか、長い間不思議に思っていたが、今回の憲法案を作成する際に現行憲法を読み返して原因が分かった。前述した内容が現行憲法に記載されていたからだ。

この分かりにくい国民審査の方法を変える為、文言を変え、国民審査は裁判官を続けて良い人物に◯をつける方法に変える。

 

第百六条      (旧第八十条)

地方裁判所及びそれに類する下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、最高裁判所及び法律で定められた地方裁判所が管轄する地方自治体の議会が承認の上、地方自治体の首長により任命される。

なお、軍法会議の裁判官については、衆議院の承認を経て総理大臣の同意の元、担当する国務大臣が任命するものとする。

高等裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した名簿によって管轄する各地方自治体の議会及び

首長が承認の上、総理大臣がこれを任命する。

地方裁判所及びそれに類する下級裁判所、それに高等裁判所の裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齡に達した時には退官する。

地方裁判所及びそれに類する下級裁判所、それに高等裁判所の軍法会議以外の裁判官は、任命後初めて行われる、管轄する地方自治体の選挙にて住民による審査に付し、その後四年の期間を置いて管轄する地方自治体の選挙にて同様に審査に付すとする。

前項の場合において、投票者の多数が裁判官の信任を否決したときは、その裁判官は、罷免される。

地方裁判所及びそれに類する下級裁判所、それに高等裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

【説明】

この条項は現行憲法より大幅に変更した。

まず前提として第一審は、各都道府県に置かれた地方裁判所である事から、各地方自治体も司法に関与させ、尚且つその裁判官の信任は(例え他所から転勤で来たとしても)その管轄地域の住民が直接関与出来るようにした。

地方裁判所はその管轄地域での司法を司るので、住民や自治体は自分達を管轄する司法に対し責任を持って参加するべきだ。

しかしながら、第二審の高等裁判所については、管轄する都道府県が明確とは言え、多数の自治体に渡るため自治体の首長が任命するわけにも行かず、任命は総理大臣とした。

ただし、管轄地域が複数になっても管轄地域は決まっているので住民審査は行える。

軍法会議については住民となるべき者はおらず、管轄場所は組織となるので任命は国務大臣(現行憲法下で言えば防衛大臣)とし、審査は無しとした。

(軍による審査も考えたが、逆に司法に軍が介入する口実を与え危険なためやめた。)

 

第百七条      (旧第八十一条)

最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

適合していない場合、最高裁判所は即日停止の命令を行う事が出来る。

【説明】

当初、条項を別に追加したが現行憲法の条項を修正する内容に止めた。

ただ、現在の裁判所のように数年かけて判断するような事はせず、最長でも一年以内に判断をしてもらいたい。

特に関白が制定する勅令や、制限行動を伴う非常事態宣言、それに軍の行動に影響を与える戒厳令や海外派兵は最長でも1カ月から2ヶ月で判決を下してもらいたい。

 

第百八条      (旧第八十二条)

裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行う。

裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する恐れがあると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行うことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。

 

第七章 財政

第百九条       (旧第八十三条)

国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。

 

第百十条       (旧第八十四条)

あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

 

第百十一条     (旧第八十五条)

国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。

 

第百十二条      (旧第八十六条)

内閣は、関白の委任により毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。

 

第百十三条     (旧第八十七条)

予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いてう予備費を設け、総理大臣の同意のもと関白の責任でこれを支出することができる。

すべて予備費の支出については、関白は事後に総理大臣を通じて国会の承諾を得なければならない。

 

第百十四条      (旧第八十八条)

すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。

 

第百十五条      (旧第八十九条)

公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

 

第百十六条     (旧第九十条)

国の收入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報吿とともに、これを国会に提出しなければならない。

会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。

 

第百十七条      (旧第九十一条)

関白を除く総理大臣及び内閣の各閣僚は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報吿しなければならない。

 

第八章 地方自治

第百十八条      (旧第九十二条)

地方自治体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

 

第百十九条      (旧第九十三条)

地方自治体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。

地方自治体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方自治体の住民が、直接これを選挙する。

 

第百二十条       (旧第九十四条)

地方自治体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

 

第百二十一条    (旧第九十五条)

一の地方自治体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方自治体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

 

第九章 改正

第百二十二条    (旧第九十六条)

この憲法の改正は、衆議院がこれを発議し、各議院の総議員の三分の二以上の賛成を経て国民に提案され、その承認を得なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

【説明】

憲法の改正発議は参議院を含めた国会では無く、民意を反映させている衆議院とした。

 

第十章 最高法規

第百二十三条     (旧第九十七条)

この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

 

第百二十四条     (旧第九十八条)

この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その效力を有しない。

日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

 

第百二十五条     (旧第九十九条)

天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。

 

第十一章 補則

第百二十六条     (旧第百条)

この憲法は、公布の日から起算して一年を経過した日から、これを施行する。

この憲法を施行するために必要な法律の制定、参議院議員の選挙及び国会召集の手続並びにこの憲法を施行するために必要な準備手続きは、施行日までに制定しなければならない。

【説明】

施行日を現行憲法の半年から一年にしたのは、今の政治家が全く信用できないからだ。

この憲法案が国民投票で承認されたとしても、なんだかんだと難癖をつけて施行日までに法律を作ることが出来ないと予測している。

正直、1年の期間を設けても出来るとは思えない。

もう一度進駐軍に占領してもらって、政治家達を脅かせば出来るのかも知れないが。

その前に、この憲法案は私的なものであるので、世の中に出て議論される事があるのかすら怪しいが。

 

第百二十七条     (旧第百一条)

本憲法が施行されてから最初の十一月に関白指名選挙を行い、翌年の一月第三週迄に関白が任命されるものとする。

また施行されてから最初の九月までに、従来の参議院は解散し、十月までに改めて議員を選出しなければならない。その場合、衆議院議員は国会としての権限を行う。

衆議院は施行日より最初の十二月第一週までに解散し、三十日以内に総選挙を実施し、三十日以内に国会を召集しなければならない。

【説明】

これは前述した通り、関白指名選挙、衆議院選挙を近い日程で行わせ、政治の安定を図る為である。

 

第百二十八条     (旧第百二条)

この憲法による第一期の参議院議員のうち、その三分の一の者の任期は二年とする。残りの三分の一の者の任期は四年、更に残りの三分の一の者の任期は六年とする。

その議員は、法律の定めるところにより、これを定める。

 

第百二十九条      (旧第百三条)

この憲法施行の際現に在職する国務大臣、衆議院議員及び裁判官並びにその他の公務員で、その地位に相応する地位がこの憲法で認められている者は、法律で特別の定をした場合を除いては、この憲法施行のため、当然にはその地位を失うことはない。但し、この憲法によつて、後任者が選挙又は任命されたときは、当然その地位を失う。

 

【終わりに】

以上が、私的に考えた憲法の修正案だ。

どうせ憲法を修正するのであれば、第九条のみならず、政治システムの変更、現在の社会にあった項目も変更するべきである。その思いから、大幅な修正と追加をした。

ただ、これも何度も強調したいが、決して先の大戦の悲劇を招いてはならないし、忘れてはならない。

政治的権力を強めた関白を誕生させたものの、同時に過去の政治家が犯した失敗を繰り返さないように、関白を暴走させない為に国会によるチェック機能をつけた。また何処かの大統領のように、独裁化する事も無いようにしたつもりだ。

平和を謳ったものの、自衛権の保持を宣言する事を明確にしたが、それでも諸外国に比べたら大幅に制限を設けている。内容は国際法や国連憲章で規定されている内容でもあるが、それでも武力行使を憲法でここまで制限している国は無い。どこの国とは言わないが、反日を叫んでいる国でもここまでの規制は無い。むしろ、その国は日本に対する武力行使を仄めかすような事もする。

本文の中でも述べたが、今の世界には国家間の武力衝突を他の軍事力で警察のように止める機関は存在しない。まるでアメリカの銃保持規制反対者のような理屈だが、自分達の国は、自分達が武器を持つ事で守るしか無い。

それではアメリカの銃規制反対と同じではないかと言うかも知れないが、銃規制の前に、今の時代、アメリカにはよほどの田舎で無い限り警察官がいて、それなりに治安は保たれている。西部劇のように、盗賊や白人に反感を持つネイティブアメリカンが攻めて来る事は無いのだ。

しかし、国家間となると話は別だ。世界政府的な警察機関はいないのだ。だから同じ価値観を共有する国同士で同盟を結ぶしか無く、そして自分自身も軍を持たなければならない。

ただ、繰り返しになるが、我々日本人は第二次世界大戦に枢軸国側として参加した前科がある。この事は、これからもずっと言われ続ける事であり、我々は決して逃れる事は出来ない。

いくら反省の態度を見せても、時にはヤクザのような国から揚げ足を取るために利用され、例え友好国でも昔日本が行った悪行として取り上げられるだろう。

しかしながら、我々日本人は例え相手が理不尽に責めたてようと、例え友人の国が陰で過去の日本の悪さを話していたとしても、常に反省の態度を示し、決して繰り返さない歴史であると表明し続けるべきだ。

これが礼儀を重んじ、過ちを素直に認める日本人の心意気であると自分は信じる。

こう言うと、だから日本人は舐められるんだと言う人がいるが、揚げ足をとる国がいたら逆に、我々は戦後70年以上他国に攻め入った事は無く、平和を保ちつつOECDなどで途上国の発展に貢献して来たと言い返せば良い。決して過去の過ちを世代が代わっても繰り返してないし犯してない。それでもまだ反日的な事を言うのであれば、それこそが対立をわざと深めさせ、いもしない敵を作り上げるナチスの手法と同じだと責め立てるべきだ。実際、今の反日運動は管制によるものか、マスコミに唆されたものが多く、もっと言えば直接の被害を受けた者では無い連中が騒ぐ、ネット風に言えば単なる祭りだ。そんなくだらない祭りを本気で相手にする必要はない。

大事なのは、そんな祭りに付き合って本質を誤り、再び自由のない、敵や味方の命が軽んじられる暗い時代に自ら戻らない事だ。

何度も言うが、戦争の惨禍を忘れずにかつ現状に即して自衛の軍を持つ。

これの何が問題だと言うのか?

いい加減、本当に日本の事を思うなら、盲目的な反社会的な新興宗教のような主義主張で互いに罵り合うのを止めて、もっと建設的な議論をするべきである。

そして時代にあった憲法を作り、自由で平和な国家を作り上げるべきだ。

常々こんな事を考えていたが、自民党や新聞社が作ったり、主張したりする憲法修正案が自分の思いからかなりズレており、危機感を覚えたのでこの憲法案を作成した。

この憲法案が誰にも見られず、ただ埋もれていくだけかも知れない。

ただ、たった一人でも良い。読んでくれた人が共感して貰えれば、これ以上にない幸せだ。