現在、厚生労働省の社会保障審議会(年金部会)で次期年金改正に向けての財政検証や改正項目の内容を審議している最中ですが、国の財政の点から財務大臣へ毎年建議を行っている「財政制度等審議会」が令和6年度の春の建議「我が国の財政運営の進むべき方向」を取りまとめて、5月21日に財務大臣へ提出しました。(建議の内容を知りたい方は、ご自身で「我が国の財政運営の進むべき方向」をネットで検索してください。)パソコン

 

 なぜこんなことを書くのかということですが、ご存じの方もいると思いますが、公的年金制度である基礎年金の給付の原資は、公的年金制度加入者が納付する保険料とその積立金(運用利息を含む)及び国庫負担(国税つまり税金)です。

 

 次期年金改正で検討されている改正によっては、この国庫負担が将来的に増減することもあり、年金制度(医療・福祉を含め)の改正が国の財政に大きな影響を与えることになるため、将来に向けた国の財政の点から財務省へ「こうしたらどうか」と「財政制度等審議会」で検討して建議を取りまとめて財務大臣に提出しているのです。(視点を変えると、厚生労働省の年金制度改正に財務省が財政面から注文を付けるということですかね?)ポーンガーン

 

 なので、次期年金改正について財務省がどう考えているかを知っておいて損はないと思うので書いてみようと思いました。ウインク

  審議委員の意見と財務省の考え方

 審議会委員からは、基礎的財政収支(プライマリーバランス)を令和7年度に黒字化するという財政健全化目標を確実に実現した上で、黒字を維持する必要性を強調する意見が相次いだそうです。また、その中で「社会保障など中長期的な視点での財政健全化の必要性について、継続的に発言・発信し続ける必要がある」との考えが示されたそうです。

 これまで2018年・2021年に閣議決定された「財政健全化目標」の推移の中で、社会保障関係費については、「高齢化による増加分に相当する伸びにおさめる」としています。

 

 財務省は、「財政制度等審議会」への資料提出の中で、年金制度は平成16年の改正で「基本的な仕組みは概ね完成している。」と認識しているようです。つまり、年金制度の根本的な土台は変えたくないように見受けられます。びっくり

 その上で、106万円や130万円のいわゆる「年収の壁」については、今回の年金財政検証を踏まえた年金制度改正で「制度的対応を実現する必要がある」と国庫負担に影響しないように対応するようにと言っているように見受けられます。

 また、「繰下げ制度」について触れており、「高齢者の労働参加が進んでいるにも関わらず、活用が進んでおらず、その要因を分析して、対応を検討すべきではないか」として「繰下げ受給」を進めるようには言っていますが、受給開始年齢の引き上げには触れていません目

 

  建議の内容

❶勤労者がその働き方や勤め先の企業規模・業種にかかわらず、ふさわしい社会保障を享受できるようにするとともに、雇用の在り方に中立的な社会保障制度としていく観点から、被用者保険の適用拡大を進めていくことが重要だと指摘し、次期年金改正において確実に実施すべきと強調したのは、「短時間労働者への被用者保険の適用に関する企業規模の撤廃及び個人事業所の非適用業種の解消が位置付けられる」ということのようです。

❷「年収の壁」については、「制度的対応を実現する必要がある」と求めています。

次期制度改正で、厚生労働省が検討している①「基礎年金保険料拠出期間を45年に延長した場合」②「基礎年金と報酬比例のマクロ経済スライド調整期間の一致」について、過去に示された試算では後年度に多額の国庫負担が生じる(①が1兆円強②が2兆円程度の見込み)とされているとし、「財政検証後にこうした各施策を議論する場合には、国庫負担に対する財源を確実に確保する方策とあわせて検討を行う必要がある。」と言っているようです。真顔注意

 

 個人的な感想

 あくまで個人的な感想ですので、気分を害された方がおられたらご容赦願います。

 財務省は、「財政健全化目標」で社会保障関係費は「高齢化による増加分に相当する伸びにおさめる」とあり、年金制度は平成16年改正で、年金額は名目賃金上昇率未満に抑え、マクロ経済スライドと合わせて、高齢化による増加分以下の伸びに押さえられてきているから、年金制度の基本的な仕組みは完成していると認識していて、現行のままマクロ経済スライドが続いて行けば、基礎年金の所得代替率が長期にわたって減少していくので、将来の国庫負担が減少するから、本音では、基礎年金制度部分は改正せず、保険料で賄う報酬比例年金部分でカバーしてくれればいいと思っているように見えます。

 少子化対策の原資も税ではなく医療保険料に上乗せしていることからも、今後は社会保障の充実の原資は国民の保険料で賄おうと思っているように見えるのは私だけでしょうか?

 そして、次の金制度改正では、保険料で賄える範囲での改正を行い、収入の少ない労働者にも報酬比例の年金を支給して基礎年金の減少を補うような改正は認めつつ、国庫負担が増えるような改正は、その財源の確保を条件にしているように見えます。

(財務省も金融庁も、年金額が減っていくと言って、貯蓄から投資へと誘導し、私的年金制度を充実しながら、一方で金融課税を匂わせていますが、諸外国に比べて2倍にもなる企業の内部留保があるなら、法人税率を上げるとか、給与や設備投資、下請けへの適正支払に取り組まず、内部留保のまま翌年へ繰り越した資金に課税する方法もあるのでは?税のエキスパートである財務省が、税財源を付けて法律改正をするように迫るって何かおかしくないですか?なぜ一緒に考えようとはならないのでしょうか?)

 もしどうしても増税が必要なら、私個人としては、基礎年金確保税として基礎年金のみに使途を限定した目的税にしてほしいと思います。(財務省に勝手に使われたくないと思いますので。昔、消費税ではなく福祉目的税とするような話を聞いたような記憶がありますが、それだと他に使えないから消費税としたんじゃなかったですかね。ムキー