厚生労働省が6月の第2回の自民党の「医療・介護保険における金融所得の勘案に関するプロジェクトチーム」会合で、国民健康保険や後期高齢者医療制度などの保険料賦課対象とならない金融所得の不公平を是正する議論を巡り、保険料額の差などの試算を示したようです。

 

 これは、昨年12月に「全世帯型の社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」で、負担能力に応じた負担を求める全世帯型社会保障の構築を進める中で、金融所得の勘案検討が政府の方針として初めて閣議決定され、自民党にも具体化に向けたプロジェクトチームが設置されて4月に初会合が行われていました。

 この改革工程では、金融所得の勘案は令和10年度までに実施の可否を含めて検討する課題と位置付けられ、厚生労働省は、初会合でされた質問への対応として、❶被用者保険における金融所得勘案の課題等、❷確定申告の有無による窓口負担割合、保険料額の現状の取扱いの差、❸国民健康保険、後期高齢者医療制度、介護保険における保険料賦課事務の現状、❹諸外国の医療保険における金融所得の勘案状況をこの6月の会合で示したようです。

  確定申告の有無が保険料額や窓口負担に影響?

 試算では、70代後半、単身者のケースで、後期高齢者医療制度は令和6~7年度の全国平均の均等割額と所得割率、介護保険は令和6~8年度の全国加重平均の介護保険料基準額を用いています。

収入が320万円で、すべて年金収入の場合・・・確定申告の有無を問わず、後期高齢者医療制度の保険料額は年220,896円、介護保険料額は年112,050円となり、介護保険の窓口負担割合は2割

年金収入が270万円で、金融資産2,500万円への配当(金融所得)が50万円の場合・・・【確定申告しない場合】は、後期高齢者医療制度の保険料額は年169,846円、介護保険料額は年97,110円となり、介護保険の窓口負担割合は1割

 その結果、後期高齢者医療制度と介護保険の保険料合計では、❶-❷=年65,990円の差が生じ介護保険の窓口負担割合でも❷の方の負担割合が1割も軽減されるという試算になっています。ガーンガーン

 ⇒ 厚生労働省は、今回の検討は、加入者間の負担の公平を求めるもので、金融所得の勘案により保険料負担が増える者がいる場合、それ以外の者の保険料負担は軽減される構造になっていると説明しているようです。

  被用者保険での金融所得勘案には慎重?

 被用者保険で金融所得を勘案する場合の課題(被用者保険の保険料は労使折半で負担している。)

金融所得以外にも一時的な収入や不動産収入などもある中、金融所得だけを保険料賦課の対象とすることに理解が得られるか?

賃金以外の収入を事業主が把握することは難しく、給与からの天引きが困難となる。

労使折半の場合、賃金以外の収入に係る保険料負担を事業主にも転嫁することになる?

などから、厚生労働省は、課題が大きいとして、慎重な姿勢を示したようです。

 そのほか、国保などの保険料賦課の現状やフランスでは、加入する医療保険を問わず、譲渡、利子、配当などの所得の種類にかかわらず、金融所得の30%を源泉徴収又は口座振替で徴収し、その内17.2%を社会保険料に充て、残りの12.8%は所得税としている諸外国の例も示したようです。

 ⇒以上のことから、自民党のプロジェクトチームでは、現状金融所得を考慮していない被用者保険ではなく、同じ金融所得でも確定申告するかどうかで保険料の賦課ベースが変わり、不公平が生じている国民健康保険や後期高齢者医療制度、介護保険制度の議論を先行させる考えだそうです。ポーンキューン

  金融所得の新規勘案で他資産へのシフトを懸念

 NISAは検討の対象とはしていないと明確化しているようです。この話で賦課ベースが増えるという話になれば、他の資産へのシフトが起こりえると懸念されるという意見もあったようですが、不公平を是正するという観点からの検討だと説明した方がいいとの意見もあったようです。ひらめきあせる

 今後、対象者数や対象となる金融所得の額などの全体像を秋頃を目途に次回会合に報告するよう政府に求めたようですよ。キョロキョロOK

 

 個人的感想です。

 これは、金融資産を持っている方には、「えっ」という話しかもしれません。金融資産の所得税を分離課税することで、その収入が所得税には反映するけど、確定申告をしなければ医療保険などの保険料には反映しない(特に国民健康保険や後期高齢者医療制度、介護保険)というものでしょうから、基本は確定申告を義務付けすれば解消すると思いますが、そもそも医療保険を複数の保険者に分けることが必要かと思っています。医療保険は、医療機関から受ける療養の給付と被保険者への個別給付に分けられますが、療養の給付については、全国で1つの保険者に集約すれば、保険者間を移動してもいつでも診療が受けられるし、医療機関での資格確認業務も省けます。個別給付は各保険者独自の制度として運営すればいい(解体して再構築)と思いますが?今回の話しは、確定申告するかしないかで、不公平が生じているというのですから、同一保険者内で公平な負担をするという点では評価できるのではないかと思います。秋頃にまた会合があるようですから、法改正が予想されますので、追いかけて見て何か出てきたら書いていこうと思います。注意グッド!