真実告知から数年たって大学生になってからも、あまり特別養子縁組の当事者意識はありませんでした。

他人事のようでいて、でも何なのか知りたい、そんな感覚でした。

だからこそ、大学の構内でボランティア募集の張り紙の中に「里親・里子」という言葉を見つけていってみようと思いました。
キャンプも、新しい出会いも、新しい環境も苦手な私が、友達も誘わずに一人で飛び込んだのは、このキャンプに参加すれば、自分の何かが分かる気がしたからです。

特別養子縁組と里子さんは措置されている制度が全く違います。
しかし、実親のもとで育つことができないという境遇だけは共通しています。

私はもともと小さい子供が好きで、よく私の養親の友人の子供たちと遊んだりしていました。
中学生のころ、本気で幼稚園の先生になりたくて、職場体験も幼稚園に行ったほどでした。
始まって二日で担当するクラスの園児の名前をフルネームで覚えて、「いつもはいないちょっと大きなお兄さん」という子供が好きそうな肩書で、担当のクラスの子供以外にも、大人気でした。

その後、高校生・大学生になってからは長らく小さい子供と接する機会はありませんでした。
キャンプで接する子供たちが、真実告知後初めて接する幼児さんたちでした。

私は、キャンプに参加して初めて、子供を見るのが辛くなっている自分に気付きました。
子供たちと暮らしているのが里親であろうと実親であろうと関係ありません。
はたから見たら親子にしか見えないそんな関係をみて、初めて自分は親に捨てられたんだと、実親の喪失感を感じました。

実はそのキャンプで実感して以来、3年間ほど、外を歩いていて抱っこされている子供や、ベビーカーを押してもらっている子供が視界に入るたびに、目をそらしたくなりましたし、辛かったです。

あんなに大好きだった、子供たちと遊ぶ時間を辛く感じている自分がさらに嫌でした。
でも間違いなく、あのキャンプに参加して初めて私は特別養子縁組当事者として歩み始めることができました。
自分の中に埋もれて、言語化できていない複雑な想いを少しずつ表出する機会を得ました。

これからあと三回、ボランティアスタッフとして参加したこのキャンプについて記事にできればと思っています。