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見ると智恵はシロップをガンガンにぶち込んで、カプチーノをかき混ぜている。

しおんは朝まで生テレビにでてくる、国際政治学者みたいな顔で智恵を見た。

「えっ?」

「コーヒー牛乳じゃん、それ……」

「いや」

しおんはシナモンスティックでカプチーノをかき混ぜる。

智恵はさすがにムカついたのか、しおんにガンをとばしていた。

しおんは、そんなこと気にしておらず、ズケッと一言、

「愛は永遠ではない、わかる?」

しおんのアタマのなかでそれが自分と岡倉の関係にも「いつか来る」ことを受け入れざるを得なかった。

「そうッスねー、別れますよねぇ」

「そう、だから私は恋をしながらいつも、醒めてる」

しおんは絶望を恐れていた。

彼女にはある種のニヒリズムがあり、それを意識しないレベルで生きていける強みがあった。

抱かれながら、醒めていく。

「岡倉先生、可哀相……」

智恵は呟いた。

「無常……」

と、しおんは言った。

万物は流転するのである。


この世に真実はなく、解釈のみ存在する。

byニーチェ……。


しおんは哲学者のコトバを引用した。

えっ、そうなんですか?

しおんは両手をあげた。

「まあね、本で読んだ」

しおんは窓の外に目を転ずる。

「なんか、今年の秋は虚しいな」

まあ、いいよ。

しおんは呟く。