更新します♫
【あらすじ】
麻里は同級生の田畑高志が弾く「亜麻色の髪の乙女」に魅せられた。
しかし、高志には板崎浅子という年上の恋人がいた。
浅子は麻里を挑発する「彼が欲しいのなら私から奪いなさいよ!」
やがて、あるキッカケで二人は結ばれることになる……。
一方で浅子はかねてから麻里に思いを寄せていた福山司郎と出会う。




琵琶湖の湖上に社がある。

「夏はいいけどね」

しおんは椅子に腰掛けて、外を見た。

ウォーターバイク、水上スキー、ヨット……。

北に行けば福井に原発、逆の方向に天橋立があるし。

そこまで言うと、ケタケタ笑った。

「あいつ、麻里に声かけてきた?」

「誰?」

「福山」

「私が声かけた」

「あのさ、福山って、麻里とアヴァンチュールってやつじゃないよね」

麻里はすぐに頷いた。

ふと、高志の背中が交錯した。

「遠鉄の写真のこと覚えてる?」

しおんは言った。

「うん」

淡い思い出が麻里の胸のなかでわきおこる。

そういうぶきっちょなところが懐かしい。

「あいつ、もっとズルくならなきゃダメよ」

麻里は壁にもたれてロッカーの上を見ていた。

「……あのさ、しおん」

「ん?」

「あいつ、充分ズルいと思うわよ」

麻里はアゴでジッポーライターとメンソールのタバコの方をしゃくる。

浅子さんが持ってたヤツだ。

麻里はまた浅子に腹を立てていた。

しおんはこのことは知らない。

「どういうこと?」

「私、関係ないし、でも、なんかムカつく」

多分、二人はできてるんだろう。

素直に祝福する気には到底なれない。

あいつ、告ったんだ……。

浅子さんに。

「私、今日で探検部やめるわ」

麻里は机の上に集めた思い出の品をダンボールに放り込んでいった。

「何怒ってるのよ」

しおんは仰天していた。

麻里はそのまんま、ダンボールを担いで焼却炉にそれを放り込んだ。

「ざまあみろ」

麻里は笑い始める。

彼女の隣でボケっと突っ立っていたしおんが「あっ、福山だ」と声をあげた。

「二人とも何してるの?」

12月の寒さのなかでも焼却炉の炎は勢いよく燃え盛っていた。

「あのさ、福山っ!」

「小寺っ、今度は何?」

「何で部室にジッポー持ち込むかなあ」

「あれは」

福山は麻里から目をそらした。

「浅子さんとデート、楽しかった?」

麻里は不敵な笑いを見せていた。

「いや、してないし」

「いや、したよ」

「俺、高志じゃないし」

「そんなの関係ないっ!何で私の前で悔しがらなかったワケ?」

「は?」

すでに麻里の空想力は勢いよく燃え盛っていた。

しおんはあたかもモニュメントの如く硬直していた。

「どういう……?」

「あんな女がいいの?福山っ!たぶらかされてるのよっ!」

福山は仰天していた。

「えっ!」

麻里は突然、手にしていた国土地理院の25万分の1スケールの地図を手にして、目を閉じていた。

「あの女の策略に引っかかってどうするの?」

「いや、先週の小寺は、浅子さんとどうなったの、とか……」

麻里は地図で福山の胸を叩いて、

「言ってない!」

「おいっ、これ高いんだぞ、勝手に燃やすなよっ!」

「しおん……」

麻里は乾いた声で言った。

「ダンボールの中の地図、全部出して……」

「えっ?」