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高志がシャワーから出てくる。

麻里は彼の家の居間でコーヒーを飲みながら、視覚でとらえていた。

「蹴らなきゃよかった」

「いいさ、痛かったが」

だが、彼女は行為が恐かった。

もし、その最中に彼が冷めるとどうしよう?

それこそ死刑宣告に等しい。

彼女は彼の袖をふいに掴む。

彼は察しているのだ。

「仲直りのキスな」

麻里は素直に頷く。

彼の顔が迫ってくる。

キスの音がする。

さっきまで飲んでいたコーヒーの味がした。

麻里の二度めのキスは、少し苦い。


裏口入学みたいだ。

すべては浅子のお膳立てでできたこと。

浅子は……奪えと、麻里を叱責した。

麻里はしばらく高志の腕の中で目を閉じる。

いろんなことでアタマは一杯だった。

ただ、後悔はなかった。

ふいにテーブルの下にレシートを見つけた。

浅子が渡したそれだ。


「あんなことするなよ」

「はい」

「それからヤケも起こさないように」

「わかってます」

「それから、最後にもう1つ」

「……?」

「愛してるぜ……」

彼は言い聞かせるように繰り返す。

麻里は頷く。

願わくば……、

この世界からあなたが私をおいて消えませんように。

誓いでもなく、願いでもなく。

あなたを愛することで、私は生きて行ける。


https://youtu.be/wkgF7FHtXJY