昨年6月に自宅マンション9階から転落し、重傷を負った俳優の窪塚洋介(25)が28日、東京・赤坂プリンスホテルで記者会見に臨んだ。本格復帰作となる映画「同じ月を見ている」(監督深作健太)の製作発表で、公の場への登場は事故以来初めて。約2年ぶりの主演映画での完全復活に向け、「初心に戻って取り組もうと思います。捨て身でやる」と不退転の決意を示した。
 転落事故から326日。黒のスーツにネクタイという“正装”で、緊張の色をたたえながらの会見。窪塚は長い闘病のためか、幾分やせた印象だったが、顔色は良く、復帰への第一歩を踏み出した感慨を語り出した。

 「すったもんだありましたが、復活できることの喜びは言葉では追いつかない。その思いを映画に込めて、素晴らしい作品にしたい。応援してください」

 転落事故では、全身打撲や両大腿骨など5カ所を骨折しながら、奇跡的に一命を取り留めた。昨年11月に映画「鳶(とび)がクルリと」に1シーンだけ出演したが、今回は主演の重責を担うだけに思い入れも違う。

 「落っこちる前に言っていたことが、全部自分に返ってきた。大切なもの、役者の仕事や家族や友達…当たり前のことに気づくのに遠回りした。初心に戻って取り組もうと思う。1仕事して99のメッセージではなく、99仕事して1のメッセージで伝わるんですよね」

 事故直後に東映の岡田裕介社長(55)が「復帰第1作はウチで」と明言し、10本以上の企画の中から選んだのが「同じ月を見ている」だ。関係者によれば、闘病中に筋肉が落ち、現在の体重は55キロほどで、撮影中に5キロの増量を目指している。

 アクションシーンもあるが、「走ったりするのは、子供の方が速いけど、だんだん良くなっているので当たって砕けろ、捨て身でやるのみです」と全力投球を宣言。ファンに対しては「お待たせしました」とアピールし、29日のクランクインに向け「もうやるのみなので、皆さんも見るのみです」と窪塚らしく締めくくった。

 映画は、00年の文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した土田世紀氏(36)の同名コミックが原作。ある事件がきっかけで、それぞれの道を歩むことになった3人の幼なじみが、再会することで心の奥に秘めていたものを打ち明け、成長していく姿を描く。窪塚の相手役は香港スター、エディソン・チャン(24)。11月公開予定。