貧乏はお金持ち
橘玲 著 講談社文庫
「雇われない生き方」で格差社会を逆転する。
あなたの人生に「希望」はありますか?
税金ゼロで利益を最大化!
合法的に国家から搾取する方法
この国にはなぜ希望がないのか?
「楽園」を追われたアメリカのサラリーマン
マイクロ法人は、国家を利用して富を生み出す
マスオさん、人生最大の決断
国家に依存するな。国家を道具として使え
あのベストセラーが待望の文庫になって登場! グローバル資本主義の進展とともに快適な「楽園」を追われるようになったサラリーマン。正社員はもはや希少種となり、あらゆる人が望むと望まざるとにかかわらず、フリーエージェント化していく・・・・。残酷なまでに「自由」な世界を生き抜くにはいったいどうすれば? サラリーマンだけが知らない。「雇われない生き方」で不条理なニッポンに希望を掴み取る「ファイナンス」の技術!!!
まえがき グローバル資本主義を生き延びるための思想と技術
この本のコンセプトは単純だ。
自由に生きることは素晴らしい
自分の人生を自分で選ぶ
市場と資本主義
資本を市場に投資し、リスクを取ってリターンを得る
人的資本を最大化せよ
マイクロ法人とはなにか
マイクロ法人は、国家を利用して富を生み出す道具である
フリーエージェントという選択
不確実性の時代の思想と技術
[法外な収益構造は、本来、自由で効率的な市場ではありえないはずのものだ(経済学の大原則は、市場にはフリーランチ(ただ飯)はないだ)。ところが実際には、人格をひとつ増やしただけで、簡単にフリーランチにありつくことができる。
こうした奇妙な出来事は、国家が市場に介入することから引き起こされる。その最大のものは世界中の国家が好き勝手に貨幣を発行していることなのだが、それ以外にもしじょうには無数の制度的な歪みがあって、それによって理論上は存在しない異常現象が現実化するのだ。]
[ジャーナリストのトーマス・フリードマンは、『フラット化する世界』で次のように書いた。
グローバリゼーション1.0では、国が、グローバルに栄える方法か、最低でも生き残る道だけは考えなければならなかった。グローバリゼーション2.0では、企業が同じように考えなければならなかった。いまのグローバリゼーション3.0では、個人がグローバルに栄えるか、せめて生き残れる方法を考えなければならない。]
[マイクロ法人では、あなたは会社経営者として、ただ一人の従業員であるあなたに給与を支払う、自分で自分に給料を払うのだから、自分にとってももっとも都合のいい額を決めることができる。]
[起業を促進するためにベンチャー企業投資促進税制(エンジェル税制)が大幅に拡充された]
[なぜ世界中で、飽きもせずにポンジー詐欺(ねずみ講)が繰り返されるのだろうか。それは、資本主義そのものにポンジー詐欺が組み込まれているからである。
株式会社は、なにもないところから儲け話だけで資金を集める仕組みだ。その儲け話に実体があればビジネスで、実体がなければ詐欺になるが、おうおうにして両者の区別は不可能だ。]
[この会計操作を意図的に行った場合、①(架空利益を作り出す)を粉飾決算、②(利益隠し)を脱税と呼ぶ。粉飾決算と脱税は、じつは同じことの裏表なのだ。]
[税の世界では、節税と脱税の境界がしばしば問題になる。一般には、税法の範囲で合法的に納税額を抑えるのが節税、税金を逃れるために意図的に法律を逸脱するのが脱税とされている。だがこの定義では、両者の境界線上に広がる広大なグレーゾーンをうまく説明することができない。]
[失業率の上昇にともなって、政治家や労働組合が企業に対し、内部留保を取り崩して雇用対策をせよと要求するようになったが、株式会社の仕組みを考えればこれがいかに理不尽な要求かがわかる。内部留保とは、株主の資金を経営者がかわりに運用することであった。これを労働者の休業補償に流用するのは、株主から見れば強盗にあったのと同じことだ。]
[LBO(レバレッジドバイアウト)は資本にレバレッジをかけて企業を買収する投資手法で、LBOを使えば「小が大を倒す]ことが可能になった。
買収相手の会社をバランスシートで考えれば、事業活動から毎年一定の利益(キャッシュ)を生み出すのだから、キャッシュの流れは不動産投資と同じだ。マイホームを買うときは、不動産を担保に住宅ローンを借り、投資にレバレッジをかける。だったら、会社を買うときに同じことをしてはいけない理由がどこにあるだろうか・・・・。これがLBOの考え方だ。]
[90年に投獄されたミルケンは、93年に余命一年から一年半の前立腺がんと診断され、景気を短縮して出所を許された。ところが彼は、自分の病気を徹底的に研究し、ストレス解消とヨガの瞑想をはじめ、完璧な菜食主義に転向し、海の空気に触れるために別荘を借り、東洋医学の専門家を自宅に住み込ませることで、不治の病を克服してしまう。]
[言うまでもないことだが、人生のすべてに満足しているひとはそれほど多くない。幸福や不幸は他人との比較から生まれてくる感情だから、社会的に成功者と見なされていても、本人は屈辱と嫉妬の泥沼をのたうち回っていることだってあるだろう。だが、こうした不幸をすべて国家が救済するわけにはいかないので、どの国も外形的な基準を設け、それを満たさない人を「社会的弱者」として援助の対象としている。]
[日本国の税制や社会保障制度は会社に強く依存しており、国家はその莫大な財政赤字をサラリーマンにたかることによって埋め合わせしている。財務省などが主張するように日本の所得税率は諸外国と比べて高いとは言えないが、その一方で年金や健康保険の保険料は際限なく上がっている。制度の破綻を免れようとすれば、取りやすいところから取るしかない。]
[ひとは群れの中でしか生きられない動物だから、「どこにも所属していない」というのは根源的な不安である。中世の封建的束縛から解放された近代人は自己責任で行動する自由な個人を生み出したが、私たちはそれがもたらす孤独や無力感に耐えられず自由から逃げ出し、国家や民族といった権威に依存して自己同一性を確認しようとする。・・・ ひとはもろもろ自由になど生きたくないのである。]
[日本の社会制度は、自営業者や農業従事者、中小企業経営者などの「弱者」に有利なようにつくられている。彼ら「社会的弱者」たちは、制度がもたらす恩恵をずっと享受してきた。本書の提案はそれをサラリーマンにも開放しようということなのだが、それを「不道徳」といして抑圧してしまえば、既得権はずっと温存されることになるだけだ。]
[ひとびとはいま、自由な人生に背を向け、安定を求めて会社に束縛されることを求めている。自由の価値がこれほどまでに貶められた時代はない。その一方で、会社はもはや社員の生活を保障することができなくなっている。サラリーマンは絶滅しつつある生き方であり、彼らの楽園は、いずれこの世から消えていくことになるだろう。]
**********
自由は、望んでもいないあなたのところに扉を押し破って強引にやってきて、外の世界へと連れ去るのである。
2009年6月発行の作品を2011年3月に文庫収録した。