エジプト2

エジプト GIZAのピラミデ


ダーウィンの悪夢 (Darwin's Nightmare)


ビクトリア湖周辺の3カ国(タンザニア、ケニヤ、ウガンダ)には4,5回出張した。この映画を見た人には褒められることではないだろうが、まさに日本での受け皿として機能を果たしていたし、第一人者といっても良かった。 大手量販店にも供給した。当時の社長から同じ’スズキ’ですねという言葉もいただいた。それだけにどのような視点で捉えられているのか気になったし、現在は直接の仕事はしていないが、自分はこの映画を見る義務があると思った。

 映画を見ると監督が何を言いたいのか?焦点がボケているなと感じた。しかし、それはマスコミによる誤ったガイダンスと私の先入観によるものであり、監督が意図していることが映画のプログラムに明白に書かれていた。誤ったガイダンスというのは半世紀前にナイルパーチという異魚種がビクトリア湖に放たれ、大増殖末に欧米、日本などの輸出され、そのためにアフリカ人がさらなる貧困にあえぎ、エイズを蔓延させ、ストリートチルドレンを生み、環境を破壊させるということだ。しかしながらHubert Sauper監督はプログラムではっきりと謳っている。以下抜粋


 生命にとって最も大きな危険は「無知」だと思います。私はこの映画で「グローバリゼーション」という状況の中での愚かさの仮面をはぐ、ということを試みました。しかし、この映画のメッセージが一部で誤解され、「悪い魚の映画」という意見が拡がり、「だからこの魚を食べないようにしようと」と、ナイルパーチのボイコット運動が起こりました。しかし、この映画は魚についての映画ではなく、人間について映画なのです。

 バナナや魚や肉などにも破壊的な出来事が裏にはあり、ナイルパーチは特別な話ではありません。しかし、私はボイコットするならば、魚や映画ではなく、「武器のボイコット」をしていただきたい。「愚かな行為」のボイコットをしていただきたいと願っています。


 このような監督のコメントが掲載されているにも拘らず、「ダーウィンの悪夢」ドミノ倒しなどという無理やりこじつけた悪循環をマスコミは強調する。

 ナイルパーチの増殖ー水産業、加工業の反映ー貧富の格差拡大ー売春、エイズ、貧困 (ストリートチルドレン、飢餓、飢饉の発生)-空輸の飛行機が武器をアフリカに密輸し、魚を欧州に運ぶ


冷静にひとつひとつを解説しよう。

*ナイルパーチの増殖ーーこれもグローバリゼーションの問題なのだろうか? 映画でも報告されているように、明らかにビクトリア湖は死の湖となる。何を目的で放流されたのか?水産資源を増やし、ビクトリア湖を豊かな湖にしようと考えたためか? ナイルパーチは肉食ゆえに、生きた小魚を餌とする。そしてその逞しい繁殖力でついには餌がなくなり、ナイルパーチ自身も個体数を減らす、最後は限りなく0に近づくという事例がアフリカの別の湖で報告されている。ビクトリア湖でナイルパーチが漁獲されるようになってからすでに25年以上も経過しており、最近漁獲量が減少したり、個体が小型かしている話を聞くが、九州の2倍の面積を持ち、最深度も100mに至らない天然の大陸棚にはそれだけのビクトリア湖固有の生物が存在していたということだ。(ダーウィンの箱庭) マスコミが着目している漁民、周辺住民へのナイルパーチによる本格的な環境悪化や失業問題は後20-30年後に現われるだろう。

 日本でもブラックバースの環境問題が議論されていたことがある。釣りファンが真剣にブラックバースの駆除に反対していたという。おろかなことだ。やっと政府も腰をあげ、釣ったバースはリリースしない条例を設けた。すでに繁殖が始まった湖沼では何をやっても無駄だ。


*水産業、加工業の反映ーーその通りだ。ビクトリア湖の周りには一時30を超える加工業が建設され、欧州資本の入った工場も建設された。この点では富の一部は’北’に流れたことは事実だ。 しかし、工場は多くの雇用を生んだ。そしてケニヤ、タンザニア、ウガンダ政府は大手資本による漁業は許さなかった。従い、一日最低でも500トンは水揚げされるという魚はすべて地元住民が漁獲したものだ。 90年代半ばのタンザニア労働者の平均賃金はおおよそ月額2千円程度であったが、一尾10kgのナイルパーチを2尾釣り上げればキロ当たり1$が手に入り、一月分の給料を一日で稼いでいた。ゴールドラッシュならぬナイルパーチラッシュが沿岸に見られたし、どこにいっても’Nileperch is gold'という文字が見られた。 なかには水難にあった者もいるだろう、金貸しにだまされ家財道具を巻き上げられた奴もいるだろう、田舎から職を捨てて、沿岸に来たものうまくいかなかった奴もいるだろう。 しかし明らかに多くの富はビクトリア湖三国に流れたのだ。


*外国人パイロットへの売春ーー何機の飛行機が毎日舞い降りて、何人のパイロットが女を買うんだ。 沿岸の小さな村を訪れたことがある。そこはフリーセックスの村だった。売春がエイズを広めたのはごくごくわずかな事例だ。 ナイル云々よりグローバル化によりエイズが発症したタンザニアで何のエイズ対策を援助しなかった我々先進国が悪いのだ。


*ストリートチルドレンーーエイズ対策と南北問題、当該国の福祉の問題。 単にこれだけであれば顰蹙を買うところでもある。 現在のケニヤ大統領の名前は知らないが、以前の大統領はモイさんと言った。町中どこにいってもモイさんの写真が飾ってある。彼を始め、親族が国中のほとんどの企業の非常勤役員をしていた。ケニヤの友人は真面目にモイさんが世界一の金持ちであると主張していた。 弁明するならばキクユ、カンパ、ルオ、マサイ族など多くの種族から国が構成されているとアクの強い、傲慢かつ軍隊を抑えた人間でなくてはその国を統治できない。

つまるところ、貧富の差は南北にもあるが、アフリカ国々に中にもそれ以上の貧富の差が歴然と存在するのだ。 援助がどこまで援助となるか?援助する当事者としては頭の痛いところでしょう。


*旱魃、飢饉、水質問題、食料問題ーー地球温暖化、砂漠化など世界全体が取り組むべき課題がある。ビクトリア湖の水質問題にも触れているが、ナイルパーチによる生態系の変化より工場、生活廃水による富栄養化や森林伐採による土砂に流入によるところが大きい。


*武器の密輸ーーナイルパーチをボイコットするより、政府を弾圧しろフランス国民。アメリカ、ロシア、中国、フランス 死の商人はかれらであって、タンザニアでもケニヤでもウガンダでもない。


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深く考えさせられた。そして過去30年の水産物の輸入とはグローバリゼーションそのものだということに気づいた。 

真実を伝えるということはむずかしい。Hubert Sauper監督は納得しているのだろうか?