岡本喜八監督の名作「肉弾」を見た。

 

天皇陛下の玉音が放送され、

終戦を迎えた太平洋に魚雷を抱えたドラム缶が浮いていた。

そのドラム缶の中には、

魚雷で敵の空母を撃沈せよ!

と命じられた「あいつ(寺田農)」が入っていた。

あいつは、戦争を疑問に思って上官(田中邦衛)に殴られたことや、

特攻に行く前日に許された休日に会った女郎屋の少女(大谷直子)のことなど、

それまでのことを

ドラム缶の中で思い出していた。

 

淡々と語られる事実はシニカルな反戦映画になっている。

声高に唱えなくても、

提示された事実は戦争の愚かさを鮮やかに描き出す。

ラスト、骸骨になったあいつが叫んでいる姿は滑稽であって、

しかも現実的だ。

教訓なんてなくていい。

それぞれが考えればいい。

 

脚本も岡本喜八。

出演は他に、笠智衆、北林谷栄、頭師佳孝、雷門ケン坊、

伊藤雄之助。

ナレーターは仲代達矢。