年末年始の旅行でチベットの子どもたちが通う学校を訪ねてきました。

{AABB6AEF-5D7D-49CD-96C4-7163DF4FA7D4:01}

親と暮らす子、親と離れて暮らす子、親のない子、それぞれ事情が違います。

年末の31日に私が訪れた際は親と離れて暮らす子は里帰りをしていたのでグラウンドで遊ぶ子どもたちがちょっとだけ。

{904F1A0E-FDD2-4F79-B3D8-E0348AEC0DFE:01}

敷地内を歩いていると、どうみても他の子とちょっと違う8歳くらいの男の子がヒンディー語で話しかけてきました。

「ちょっと違う」というのは、来ているものがぼろぼろに汚れている、髪の毛の色が栄養の不足を表している、肌つやが悪い。鼻水が垂れていて目に輝きがない。「ヒンディーは分からないの」と言っても構わず話しかけてきます。

{F0952660-9E3D-4E48-B510-2AF9FCAB3608:01}

分からないなりに言葉というのは伝わるもので、一緒に学校の上にあるお寺に行こうと言っているのが分かりました

小さなお寺にたどり着くには何段もの階段を上ります。

「様子がおかしい」と思い始めたのはこの子が私の手を触り始めたとき。

どうも触り方がいやらしい。

目を合わせず、そのうちに私の胸やおしりを触り始めました。

この子が私を誘ったのは、お寺に行きたかったのではなくて二人にになって女性の体を触ってみたかったからだろうとすぐに分かりました。

人目を気にしているあたり、分別がついていないわけではない。

悪いことをしている意識があるのです。

私はこの子のこの行為をもう少し観察したくて一緒に歩きました。

「触りたいの?」「どうして触っているの?」と聞くと質問の意味を理解しているようで少し遠くへ逃げていきます。

戻ってきてまた触る。「楽しくないからやめてほしい」というとまた逃げる。そしてまた戻ってくる、その繰り返し。

この子の行動はどうやら真剣だから、私もこの子に真剣に付き合いたいと思いました。

やめなさい、いやです、やめないなら帰る、を何度か繰り返してもやめないので、細い腕を思い切りつかんで「やめなさい!触らないで!」と怖い顔で怒鳴りました。


するとそれまで英語を話す様子のなかったこの子が

「ねえ僕のことを愛してる?」「結婚してれる?」と英語で聞くのです・・・

 

この子の持っているバックグラウンドがこの言葉で見えたように感じ悲しくて泣いてしまいそうになりました。

「僕は愛を知らないし、愛されたいんだ!!」

そういっているようにしか聞こえない。

この子はどうやって育っていくんだろう。私はどうしたらいいんだろう。

{F3B1FD7C-DB03-42FA-A6F1-A0C345BF6C0C:01}

一人の旅人がこの子の記憶に残ることはないかもしれないけれど、出会ったのだから大人としてこの子ときちんと向き合いたい、ダメなものはちゃんと怒りたい。

「あなたは生まれたときから愛されている。

好きな人がいても勝手に体を触ったりしてはいけない!

相手がいやだといったらやめなくてはいけないの!」

男の子は話の途中で何も言わずに走って遠くのほうへ行ってしまいました。

もっとちゃんと話したかった。

{779B57BC-ACF4-4D51-9BE5-8C22F590C0F5:01}

例えば子どもたちの健やかな成長を支援する方法というのはたくさんある。

世界中にすばらしい活動家が居て多くの人間が手を差し伸べている

 

私は国際文化を勉強する高校を選び異文化理解を勉強してから自分も困っている人のために何かできる人間になりたいといつもどこかで思っていました。

子どもたちへの寄付やチャイルドスポンサーをすることは私のような普通の人間でもできることでした。

けれどこの日、この子のどうしようもなく悲しい行動に付き合ったとき、私がこれまで「支援したい」とか「できることがしたい」と思ってきたことはただの綺麗ごとで、現実を知らないからこそ言えたうわべだけの言葉だったと痛感しました。

エゴです。

助けたいとか良いことがしたいとか、それで自分の価値を実感して安心しようとしている。目的は真の人助けじゃなく、自分助けなのです。とても恥ずかしいけれど、そうなのです。

どうしようもない無力感に襲われ、ちょっとの間グラウンドに腰を下ろしヒマラヤを背景に元気に走り回る子どもたちをぼんやり眺めていました。

大事なことを教えてくれたあの子もちゃんと大人になってほしい。

学校の職員を訪ね、その日の出来事と私の考えをしっかりと伝え色々とお話しをしてきました。

そのようなことは認識しておらずとても残念だとおっしゃっていました。

その子は両親がなく身寄りもないということでした。

{8785BE88-60DE-484C-B5D7-8D72B1BA4DE3:01}

インドは特に都市部でのレイプ事件が絶えず、悲しいかな「危ない国」として認識されています。

例えば私が出会ったこの子がもう少し大きくなり力をつけていったらどうなるでしょうか。

簡単に想像がつきます。

レイプ事件が一向に減らない背景には数え切れないほどの理由があるのでしょうが、

欲のコントロールを教わる機会がなく、愛と欲の意味も違いもわからないまま育つしかない人たちがたくさんあるというのは大きな理由の一つと感じます。

自分のエゴと現実の厳しさを知る貴重な経験でした。

 

{277A6B7A-981E-4D89-AA6D-495AA9E6260F:01}

人間からエゴを取ると神様、だそうです。

人間にエゴがあるのは当たり前。

エゴのない人間はいない。

エゴがあるからこそ、人間なのです。

 

でも本当にやりたいことややるべきことはそのエゴを破ったところ

あるんだと思います。

親が子を理由などなく無条件に守るように。

そういうことを、この小さな男の子から教わりました。