三宅島郷土資料館でトコロジストシンポジウムを行ってきました。
このシンポジウムは、次年度から三宅島郷土資料館で始まる「三宅島トコロジスト講座」の導入として企画したものです。
これまで自然関係の施設やイベントで話すことが多かったのですが、今回は歴史・考古学系の施設からのお招きということで、やや緊張しながら三宅島行きの飛行機に乗り込みました。
調布飛行場から、19人乗りのプロペラ機で離陸すると、すぐに我が家の上空を通過!いつも観察会を開いている城山公園やその奥の弾薬庫跡地がはっきりと見えます。



そうこうするうちに約30分で三宅島空港に到着。船だと6時間かかるのに飛行機は便利です。

三宅島は2000年に噴火し、5年間に及ぶ全島避難の末、2005年に帰島。今年は帰島後10周年の節目にあたります。
島では、噴火の影響で照葉樹の森が立ち枯れ、岩肌が露出した場所が目立っていましたが、今回数年ぶりに歩いてみると、新しい植生が回復し始めているのが分かりました。改めて島の自然のたくましさを思い知らされた次第です。

10周年だからというわけではないでしょうが、島民の間ではもう一度島の暮らしや歴史、文化を振り返り島の良さを再認識しようというムードが生まれつつあります。
これまで、様々な分野の専門家が島外からやってきて、島のことを調べていきました。そして、島民に対して、いかに三宅島がすばらしい貴重な島かということを伝えて行きました。
しかし、外の人がいくら「貴重だ」と説明しても、そこで生活している島民たちにとっては今ひとつピンと来なかったのではないか。多分、それは島民自らが調べていないからだろう、と今回の話を持ってきてくれた役場の人が話してくれました。これには私も同感です。しょせん自分の目で見て調べたことしか身につかないですから。

そこで、今回のシンポジウムは、トコロジストというキーワードを紹介しつつ、島民自身が自分たちの暮らしている場所をすみずみまで歩いて、自分たちの暮らしを調べようということを呼びかけてきました。

私からまずトコロジストの考え方を話し、その後3名の島民の方から、それぞれ島での暮らしと思いを振り返って話していただきました。子供の頃の島での体験を原動力に、子供達に島の自然や文化について伝えている学校の先生のお話や、島に憧れて移住し、自然ガイドを行っている方からのお話、先祖代々三宅島で暮らしてきた方から郷土料理のお話を聞いたりと、本当にいろいろな話題が出てきました。

次年度からは、そうした島の暮らしや歴史、文化、自然を見直し、島民自らがもう一度島のことを調べる講座を開講する予定です。自分たちで調べることが、これからの三宅島を作る原動力になる、そんな講座になればと願っています。