✳︎この作品は、今から10年以上前に別サイトで公開した

「シティーハンター」の二次小説を加筆・修正したものになります。

二次小説について興味のない方、批判的な方は、

申し訳ありませんが、プラウザーバックをお願いします。


「りょう」の字は機種依存文字らしいので、「僚」とさせていただいてます。




以上のことをご了承頂いた方のみ、スクロールをお願いします✳︎




















一週間ぶりの我が家は静寂に包まれていた。









時刻はというと、草木も眠る何とやら。

後ろめたいものは、今回に限り!!決して何一つないというのに、
ハンマーやらとラップやらを警戒してしまう辺り、常日頃の行いの悪さが身にしみているようだ。


警戒が功を奏したのか。
 
無事に5階までたどり着き…
ここまで“何もない”事態にいささか驚きを感じて必要以上に警戒を強めてしまう辺りは、
これまた日ごろの習性の賜物とも言えるのやらどうやら。



 とりあえず、これまた習性で気配を消して、おれは部屋へと歩みを進める。








深夜の帰宅









 冴子からの依頼が厄介でなかったためしなどないが、
今回は久々に大掛かりなものだった。

 いつもどおり、なんだかんだと振り回された挙句、
人里離れた山奥のアジトとやらに1人放り出されたのが1週間前。

場所が場所だけにセキュリティーその他は甘かったが、
場所が場所だけにだだっ広いそこを壊滅させるのに2日を要し…

更にそこで更なる厄介ごとに巻き込まれて数日
(…というより、あれはあからさまに冴子の陰謀だと思う)。

結局そのまま、今度は陸の孤島というべき場所に放り込まれ……

なんだかんだあって、
人の住むところへ無事帰ってくるだけでなんと丸々2日ほどかかってしまったというわけだ。



 当然、その間携帯電話なぞまったく役にたつことはなく。

 結果として、音信不通とやらを1週間以上やってしまった後の
深夜の帰宅…と言う事になってしまったのである。


 なまじ、最初の依頼を香に黙って受けてしまっていただけに、
この1週間の音信不通の説明も当然出来ていないわけで。

 そうなると、高い敷居がより高く感じられるのもまた事実。



こういう事情が重なれば、
やはり“香大名神”さまのお怒りが怖いという
おれの思いもお分かりいただけるのではないか…と思う。



予想に反して何事もなく(本当にトラップのひとつ、手榴弾のひとつもなかったのだ!!)
たどり着いたリビングルームは、いつもどおりきちんと片付いていた。

灯のついていないそこには、当然、香の姿はなく。

無機質な“モノ”ばかりが並ぶその場所は、よそよそしい空気を持っておれを迎える。


いつもなら気にならないだろうそんな空気が妙にうっとうしくて…
おれは、ふと今朝から何も口にしていないことに気づく。
















アルコール…という気分にもなれず、
これまたいつも以上に片付いた火の気のない台所で、
コップに3杯の水を一気にあおる。


数年前までは、あまりに当たり前だった静寂。


あのさびしがりやで意地っ張りの相棒が、
この静寂の中で1週間を過ごしていたのかと、ふとその心情を思う。








そう言えば……あいつは?









静寂とわが身の安泰ぶりに、
ついにあいつに見捨てられたかな…とありえそうにないことを思ったりもして、

独白ですら冗談めかしてしかあいつに思いを寄せられない自分に、いささか困惑する。


1週間、音信普通となってしまったおれは、
またあいつに余計な心配をかけてしまったはず。




少しでも早くあいつを安心させてやりたい…という思いと共にあるのは、
早くあいつの声を聞きたいと思うおれ自身の願望。

そんな自分にいささか呆れてしまうのだが…。

なんだか思うことはあいつのことばかりだな。

そんな思いすらあいつに直結している辺り、おれもやきが回ったというか…

それとも疲れすぎて思考がまっとうに働いていないのだろうか。



















さて、その相棒殿はというと。



 
なぜかは知らんが、おれのベッドをしっかりと占領して眠っていた。



「ったく…男のベッドで、色気も何もねえんだから」





裸で待っていろ…となんて、口が裂けても言えないが(百年たっても無理だろうなあとも思うし)

それでも、深夜男の部屋に居る意味くらい考えろ…とは思う。




思うのだが…

おれの毛布の端をぎゅっと握り締めて、
それに顔を埋めて眠るあいつの様子はまるで迷子の子どもか何かのようだった。









「香…」





その名をそっと呼ぶと、香の表情が緩んだように見えたのは、
おれの欲目か、それとも願望なのだろうか。


どちらにしても、
今夜は、これ以上こいつを1人にしておいてはいけないような…そんな気がして。










「ったく…参ったよな」













夜明けまであと数時間。
 



この意地っ張りの寝顔を守るナイト役も、まあたまには悪くない、だろう。








ベッドサイドに腰をかけ、
香の癖毛をそっと指に巻きつけておれは軽く目を閉じた。