✳︎この作品は、今から10年以上前に別サイトで公開した

「シティーハンター」の二次小説を加筆・修正したものになります。

二次小説について興味のない方、批判的な方は、

申し訳ありませんが、プラウザーバックをお願いします。


「りょう」の字は機種依存文字らしいので、「僚」とさせていただいてます。



なお、こちらの作品は、原作以上の二人の設定となっています。




以上のことをご了承頂いた方のみ、スクロールをお願いします✳︎

































「なあ、俺が銃を撃てなくなったらどうなると思う?」


僚が突然そう尋ねてきた。





「ん? どうしたの?」


とあたし、尋ね返す。




そんなあたしに、

さっきの言葉を繰り返すことなく、僚は煙草をくゆらせている。



二人でひとつ毛布に包まって、秋の満月を見上げている夜。








「そうしたら香、俺のこと撃てるか?」








僚が言ったのは、しばらくしてからのこと。


その瞳には、いつものおちゃらけた様子はない。








「そうね。僚はどうして欲しい?」


あたし、ちょっと考えて僚の右腕を抱きしめて言った。


それはパイソンを握る腕。

人を傷つけてきたそしてあたしをいつも護りつづけてくれた腕。


力強い、そして温かい

この中にいれば何よりも安心できる

あたしだけの場所。









「そうだな

と僚。


遠くを見るような瞳をする。


これは考え込んでいるときの僚の癖。

こんな時、僚はあたしをその心の中に入れてくれることはない。






でも、それが不安だったのは昔のこと。






今はこうして

僚をそばで支えていられる自分がいるから。


僚の言葉を焦ることなく待つことが出来る。






「いまさら…CITY HUNTERの引退はないだろうな。

 となると銃を持てなくなった俺はなぶり殺しだ」


















僚の言葉に、答えることは出来ない。


だって僚の言葉はある意味真実だから。











僚が、たくさんの人を救ってきたのも事実。



それは決して警察の手先だからでも

法の番人を気取っているからでもない、

僚なりの真実に則って動いてきたこと。









でも僚がたくさんの人の命を奪ってきたのも……事実。



あたしと組んでからはそういう仕事を受けることはほとんどなかったけど、

それでも垣間見てきた『殺し屋』としての僚は今でも確かに存在する。



そして、今も……その仕事を請けているらしいことを、

実はあたしは察している。


それも全て、僚なりの真実に基づいての行動だと思うから、

あたしは何も言うことはできない。









だからこそ今でも僚を恨み、憎むものは多い。




























僚の肩に頬を寄せて、あたしは彼を抱きしめる。万感の思いを込めて。



「そのときには香、俺を撃て」



「僚










なぶり殺しにされるくらいならお前の手で…”







そんな僚の言葉が聞こえたような気がした。








「俺からお前への最初で最後の依頼だ。

 請けるよな」


あたしは、唇を噛みしめる。


そんなこと、起きては欲しくない。

そう願う、祈る、切望する



でも。


プロとして、依頼されたことには応えなくちゃいけない。









だから。











「そのときは僚。

 あたしにあなたの最期の10秒間を頂戴」



あたしの言葉に、

僚は怪訝そうな顔であたしを見る。




今夜、この話を始めてから

初めてあたしを見るのよ、僚。

そのこと、あんたわかっている?




「ちゃんと10秒残せるように、

 ちゃんと銃の練習をするわ。

 だからあなたの最期の10秒間で

 あたしを殺して」





「香!?」




“CITY HUNTERを殺した女なんて称号、

 あたしには必要ない。

 そんなもの持っていたら、

 次はあたしが狙われる。

 だったら僚

 あなたの手であたしを危険から遠ざけて、

 逝って」









一緒に死にたいとか、

僚が死んだら生きていけないとか

そんなロマンシズムはもうあたし達の間にはない。



そんな域はもう、とうに超えてしまったところにあたし達は来てしまった。












「それが、僚の依頼を受ける条件よ」


わかった」


苦笑まじりの言葉。


でも

あたしの言葉はちゃんと僚に届いたみたい。




さっきまでの切ない光は、もう僚の瞳にはない。


あたしの好きな、優しい

総てを包み込んでくれるような僚の瞳があたしを映す。


きっとあたしの瞳にも、僚は映っているはずよね……僚。













あたし達はくすっと笑って、そしてお互いを抱きしめあった。