雲ひとつない。 | 十年も二十年も

雲ひとつない。

41  谷川俊太郎


 空の青さをみつめていると
 私に帰るところがあるような気がする
 だが空を通ってきた明るさは
 もはや空へは帰ってゆかない

 陽は絶えず豪華に捨てている
 夜になっても私達は拾うのに忙しい
 人はすべていやしい生れなので
 樹のように豊かに休むことがない

 窓があふれたものを切りとっている
 私は宇宙以外の部屋を欲しない
 そのため私は人と不和になる

 在ることは空間や時間を傷つけることだ
 そして痛みがむしろ私を責める
 私が去ると私の健康が戻ってくるだろう

        出典「六十二のソネット」谷川俊太郎 講談社

◇◇◇

出逢ったのは学生の頃

最初の4行がとても印象的で
いまでもきれいな青空を見ると思い出す
今日の空はまさにこんな感じ

深呼吸