···ミーン
ミンミンミーーー····ン
「お嬢さ~ん、お嬢さ~ん!」
外から、庭師さんが呼んでいます。
美麗は、いつもはオシャレなアパルトマンで
ひとり暮らしを楽しんでいます。
今月は、お父さまとお母さまがヨーロッパ周遊のため、
お留守番を頼まれました。
今日は、馴染みの庭師さんがお庭の手入れに来ています。
「は~い。すぐに伺いますわ」
美麗は、お庭に出ます。
「どうかなさいました?」
「あぁ、お嬢さん!これをご覧になってください」
「大きな石だと思って掘ったら、壺のようで…」
庭師さんは、困惑げです。
「あら、これはきっと古い土器だわ」
「そうでしょうか?」
「教科書に載っていた、弥生式土器とそっくりよ」
「どうしましょう、お嬢さん。やっぱり、埋め戻しますかい?」
「いいえ。床の間に飾りたいわ」
「え、床の間に?
旦那さまや奥さまにご相談されてはいかがでしょう?」
「大丈夫よ、庭師さん。
それより、さっそく、掘り出してみてはくださらないかしら」
「お安いご用です」
「やっぱり、弥生式土器よ。ヒビひとつ入っていないわ」
「本当に、床の間に運びますか?」
「えぇ、お願い。わたしはその間に、お花を摘んでまいります」
「そうですか。かしこまりました。いってらっしゃいませ」
つづく