···ミーン

ミンミンミーーー····ン

セミの声が聴こえ始めた、七月のある日。


「お嬢さ~ん、お嬢さ~ん!」

外から、庭師さんが呼んでいます。



美麗は、いつもはオシャレなアパルトマンで

ひとり暮らしを楽しんでいます。

今月は、お父さまとお母さまがヨーロッパ周遊のため、

お留守番を頼まれました。

今日は、馴染みの庭師さんがお庭の手入れに来ています。


「は~い。すぐに伺いますわ」

美麗は、お庭に出ます。

「どうかなさいました?」

「あぁ、お嬢さん!これをご覧になってください」


「大きな石だと思って掘ったら、壺のようで…」

庭師さんは、困惑げです。

「あら、これはきっと古い土器だわ」

「そうでしょうか?」

「教科書に載っていた、弥生式土器とそっくりよ」

「どうしましょう、お嬢さん。やっぱり、埋め戻しますかい?」

「いいえ。床の間に飾りたいわ」

「え、床の間に?

旦那さまや奥さまにご相談されてはいかがでしょう?」

「大丈夫よ、庭師さん。

それより、さっそく、掘り出してみてはくださらないかしら」

「お安いご用です」


「やっぱり、弥生式土器よ。ヒビひとつ入っていないわ」

「本当に、床の間に運びますか?」

「えぇ、お願い。わたしはその間に、お花を摘んでまいります」

「そうですか。かしこまりました。いってらっしゃいませ」


つづく