ゴールデンウィークが明けて、
いよいよ出産予定日も近づいていた。
夫の会社は金曜はノー残業デーということになっていて、
でもノー残業で帰ってきたことは、今まで数えるくらいしかなかった。
ただ一応、その金曜日は20時半には帰ってきて、一緒に夕飯を食べていた。
その日はビーフシチューを作っていた。
食べている途中から、なんとなくお腹が痛くなってきた。
妊娠後期も度々ちょっとした腹痛はあったので、
少し様子をみようと思っていたが、
夫からも無理せず2階のベッドで横になった方がいいと言われたので、
夕飯の片付けもしないまま、2階で休むことにした。
陣痛、と呼ぶような強い痛みではまだなかったが、
何しろ経験がないのでわからない。
病院に電話して、
痛みが規則的になったら来るように言われた。
あーいよいよなのかなぁと、
ベッドで考えているうちに、パンっと弾けるような感覚があり、破水していた。
そこからは慌ててバタバタと支度をして、
夫と病院へと向かった。
「確かに破水しています。ただ子宮口は開いていないので、産まれるまではまだまだかかります」
病院で診察をうけ、そのまま入院となった。
夫は一応朝までついてくれていた。
ただ、
私も陣痛が強くなってきたところに
夫は腰をさするような振りをして、
ベッドに入って一緒に寝ようとしてくるのだった。
まだ分娩室ではないが、
病室だ。
個室ではあるが、
なんでコイツもベッドに入ってくるのか意味がわからない、と思った。
看護師さんが様子を見に来ると一応起き上がるが、
心底恥ずかしくてやめて欲しかった。
「ねえ、まだかかるから一度帰って」
「ベッドに入らないで」
伝えてもなぜか帰らないし
何度も布団に潜り込もうとする
私を心配しているとかでなく、
単に横に立っているのが疲れたのだろう。
そのうち長い言葉を話すのも辛くなってきた。
痛みで自分の心境を説明するのもしんどい。
陣痛が始まって入院した妊婦と一緒に病室のベッドに入って寝ようとする夫って、
コイツ以外にいるのだろうか。
例えば仮眠用ベッドが病室にあって、そこで寝るならまだいい。
それでも、妻が自分の子を産むのに苦しんでる最中に、隣で悠々寝るのはどうなのかとなりそうなものだが…
でもまだ、
夜だし、仕事帰りだし、寝られるうちに寝なきゃね、と思える。
睡眠は大事だ。
だから寝たいのなら、さっさと帰って欲しかった。
拒否しても滑り込んでくる夫が気持ち悪かった。
自分の男を見る目のなさに情けなくなった。
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