伝説のアイドル・岡田有希子でリメイクしたかったテロリスト映画、それは『東京湾炎上』である。

 主演は、藤岡弘。

 原作は、田中光二の小説『爆発の臨界』である。

 1970年代の東京湾。

 そこに停泊中の巨大タンカーが、ゲリラ部隊にシージャックされる。

 犯人グループは、アフリカ系黒人ゲリラ部隊と謎のアジア系青少年が1人。

 青年だと思われるが、小柄なため少年にも見える。

 やがて、黒人部隊のリーダー、シンバがシージャックを宣言し、謎のアジア系の青少年げ声明文を読み上げる。

 それは流暢な日本語であり、彼が日本人であることが判明する。

 そして、その要求はというと……。

 『南九州の石油備蓄基地・喜山CTSを、自衛隊の戦闘機のミサイル攻撃で爆破、炎上させよ、そしてその情景を衛星放送で全世界に放送せよ』というものであった。

 この要求が受け入れられなければ、原油を満載しているタンカーを自爆させ、東京湾を死の海にするというものであった。

 そして自分たちが、メジャー、先進国の石油資本に搾取されているアフリカのコマンドーとその賛同者であると主張する。

 ちなみに、この日本人コマンド―を演じていたのは、若き日の水谷豊であった。

 ドラマ『相棒』の杉下右京しか知らない若いファンには意外な展開かもしれないが、これは水谷豊本人の希望によるものだという。

 当初、乗組員の役を設定されていたが、彼は、”自分の心情からすれば、このゲリラ部隊のコマンド―の方に共感する”と主張し、その代役として乗組員役になったのが藤岡弘だという。

 さて、到底受け入れられない要求だが、丹波哲郎演じる首相は、これを受け入れ、喜山CTSが爆破炎上する映像を衛星放送を通じて全世界に配信する。

 ただし、今でいうフェイク画像で、である。

 SF映画の戦闘画像と、喜山CTSの実写映像を組み合わせたモノだったが、それは間違いなく衛星放送を通じて全世界に流された。

 それを満足そうに眺めるシンバたち。

 だが、それはニセモノ映像であることがバレてしまい、シンバは交渉の打ち切りと、タンカーごとの乗組員ぐるみの自爆を宣言する。

『待て、シンバ!! 確かに今のはトリック映像だ! だが、この映像は、間違いなく衛星放送を通じて全世界に流れた!! だから、メジャーの、先進国の石油資本の横暴を弾劾、告発するという君たちの本来の目的は、どうにか果たされたのではないかな!? 君たちの思いはどうにか全世界に届いたのではないかな!?』

 そう叫ぶ丹波哲郎演じる日本国総理大臣に、シンバは宣言する。

『私たち許さない。今までこうやって何度も騙されてきた。これにて、交渉を打ち切る!!』

 そして……。

 アフリカ系黒人コマンド―にたいする乗組員の反撃が始まる。

 藤岡弘らが放った水中銃や仲間割れで次々に斃される黒人コマンド―たち。

 すべて制圧……と思ったその時、唯一生き残った日本人コマンド―が、”まだこのオレが残っているッ!!”と宣言し、AK47突撃銃を構えるが、藤岡弘によって水中銃で射殺される……。

 この映画を、岡田有希子でリメイクしたかった。

 

 舞台は、伊勢湾。

 そこに停泊中の巨大タンカーが五人の女性コマンド―にシージャックされる。

 メンバーは、リーダーの新間鮎子(吉田羊)。

 サブリーダーの水川あさみ。

 行動隊長の成海璃子。

 新人コマンド―の橋本愛と、同じく新人コマンド―の岡田有希子。

 その要求は、自然を破壊する長良川河口堰を自衛隊機の攻撃により、完全に破壊炎上させよ、さもなければ……(以下略)というものであった。

 日本国政府にとって到底受け入れられるものではないが、内閣はフェイク映像で乗り切ろうとする。

 だが、それを見破ったリーダーに交渉の打ち切りを宣言される。

『待て、新間ッ!! 確かに今のは……』という総理大臣の声を無視して、自爆態勢に入るコマンド―たち。

 この間、人質たちは次々と殺されていく……。

 殺害経験の無い新人コマンド―二人のうち、橋本愛は次々に返り血を浴びながら、銃器で、刃物で殺害を繰り返し、殺人マシーンと化していく。

 だが、気の弱い岡田有希子は、どうしてもそれが出来ずに、むりに強要されると吐いてしまう……。

 やがて、乗組員の反撃が始まる。

 女性コマンド―の銃器や刃物が奪われ、次々と殺されてゆく女性コマンド―たち。

 ただ、唯一生き残った岡田有希子がAK47突撃銃を抱えてこう叫ぶ。

『まだこのオレが残っている!!』

 そんな岡田有希子に水中銃を向ける乗組員。

『おいッ! そいつだけは殺すなッ!! 生け捕りにしろッ!!』

 そんな船長の指示に従い、水中銃を放ち、彼女の野戦服の袖を水中銃で縫い付ける乗組員。

 だが、コマンド―・岡田有希子は……。

 縫い付けられた戦闘服の袖を引きちぎり、隠し持っていた青酸カリ入りのカプセルを口に放り込む。

『やめろ~~!!』

『死ぬな~~!!』

 そんな乗組員たちの絶叫をかき消すほどの音量で岡田有希子が叫ぶ。

『長良川解放戦線、バンザーーイッ!!』

 そして、次の瞬間、彼女はカプセルをかみ砕き、絶命する……。

 

 さて、Tokiokakeo(朱鷺尾駆男)が好きなこの『東京湾炎上』だが、ザンネンな部分もある。

 最後、海上自衛隊のレインジャーヘリが出動し、タンカーの自爆を阻止するのだが、その際の隊長のセリフがあまりにも棒読みであり、ブチ壊しになっている。

 これはおそらく、否、間違いなく、撮影に全面協力する代わりに、自衛隊サイドの幹部隊員に出演させろ(いいヵッコさせろ)という要求があり、受け入れざるを得なかったのだろう。

 この手の税金ドロボーを、Tokiokakeo(朱鷺尾駆男)は憎む……。

 

 岡田有希子以外の配役を現在の日本映画を支えている女優達にしたが、より分かりやすい配役にした。ご理解ください。

 残念ながら、岡田有希子が幽冥界を異にしている現在、もしこのリメイク映画を作るとしたら、その代役はやはり、上白石萌音しか居ないだろうと思う。

 

 

※ 次回は、小説『あるぷす同心捕物控』の第二章『湯の街三助・玉吉の恋』を発表します。