30代の後半、通信講座で朝日カルチャーセンターの文章通信講座を受講しました。文章を上手に書きたい、自分の文体の癖をなおしたいというのが動機だったように思います。添削が丁寧でとても勉強になったという思い出があります。
23年前の文通
23年前のことになります。高校1年の冬のことでした。中学時代の女友達の紹介で、ある女子高校の1年生と知り合うことになりました。僕が一目ぼれしてしまったのです。当時の男女交際に対する地方(会津若松)の閉鎖性もあって映画を見たり、散歩をすることなどは考えることさえできませんでした。一度も話をしたことのない人と心を通わせる手段は文通でした。
つきあうことになった翌日、僕は彼女に手紙を書きました。 僕の手紙が届いたと思われる翌々日、彼女から初めての手紙が来ました。その日、手紙に対する返事を書きました。 翌日、 彼女から手紙が届き、その日に返事を書いたのです。こうして1日も欠かさずに手紙を書き、また、1日も欠かさず手紙を受け取りました。初めの頃は 自己紹介や学校の様子、家族のこと、友人のことなどをつづっていましたが、毎日のことで話題も尽きてしまうこともありました。「 お手紙ありがとうございました」などと最初の1行は書けてもあとが続かずに期末試験の勉強そっちのけで2時間も3時間も費やし、もがきながら仕上げたこともありました。
そんな風にして2カ月くらい過ぎたある日、「どうしても同じ学校の応援団のKさんを忘れることができません」旨のことと交際に終止符をうちたいと、ていねいな文字で書かれた手紙を受け取りました。寂しく、せつなく、大泣きしてしまいました。
4、5日のち、過去の思い出を断ち切って自分は生まれ変わるんだ、などと決意し彼女からの 70 通余の手紙を河原で焼却してしまいました。興奮のあまり今までの日記帳や関係のない手紙なども全部灰にしてしまいました。あの時の、あのころのかけがえのない思い出を失ったことが悔やまれてなりません。
そんなことがあってか、いまは手紙は 保存用のコピーを取ってから投函する習慣になりました。「手紙」と背表紙に大書されたファイルは、僕の貴重な財産です。