恩師について書きたいと思います。

私の恩師は北イタリア、ロンバルディア、トスカーナで8年余り修業してきて日本にイタリア料理を広めた1人です。
お名前を

小澤唯治


と申します。

シェフは齢67歳にしていまだ現役の本物の職人です。


糞小僧で入社した時の料理長で、体を鍛えていた私の1.5倍の体格で、オールバック、テクノカットのような髪型に、眉毛がほぼ見えない御世辞にも優しい人には見えない佇まい。
大鍋にトマトソースが入っているにもかかわらず
『オラッ‼️』
の掛け声と共に片手で持ち上げてしまう怪力に怒らせたら命が無くなると思いビビりまくっていた方でした。


ただし昔の職人気質なので仕事は一切の妥協がなく、徹底的に拘り、食材も優しく丁寧に扱う背中は私達にとって憧れでした。





糞野郎であった私がイタリアンを一生の仕事にしようと決心した出来事がこの店でありました。

ある時、私の会社に中途入社で某有名高級リストランテから調理長を任されていた方がいらっしゃいました。
会社はその方の実力と適性をはかるために私の店に試用期間として配属しました。

最初の1週間は店の様子とシステムや動線を見せるために色々な部署を見させていました
そしてひと通り見せた1週間後にシェフはパスタやメインディッシュを作りながら指示を出すストーブの部署に一番忙しい金曜日に任せたのです。

有名店の調理長であったその方は自信満々でストーブに立ち余裕を見せながら鼻高々で調理を始めました。
そしてピークタイムに入り店が忙しくなった時に、中途の方が自信満々にパスタを仕上げ、デシャップテーブルに
『ビア!!(もってけ!!)』
と言ってパスタを出しました。
すると無言で小澤シェフが後ろから現れて、おもむろにパスタを皿ごと持ち上げ、
ドカン‼️
そのままゴミ箱に投げ込んでしまったのです。
凍り付く現場、驚き動けなくなった中途の方に、
小澤シェフはこうおっしゃいました。

『てめーの自己満足なっざ見たかねーんだよ💢💢
いいか、今日は金曜日、ピークタイム、ホールスタッフが料理を運ぶのに手間取り、いつもよりも遅くなっているのは見ればわかるだろ💢😠💢
それに金曜日で御客様はいつもよりもワインを飲みゆっくりと時間を楽しんでいらっしゃる
なのにてめーが作ったパスタはそれを無視した
ここで食べるのがベストの仕上がり
てめえは御客様の事を全く考えていない。
こんなパスタ食えるか💢💢💨
作り直せ馬鹿野郎💢😠💢
てめーの自己満足なざ要らねーんだよ馬鹿野郎💢😠💢』
と仰いました

仰ることは正論ですし、大先輩が御客様を常に意識している事に驚き、ただただビビっていました
するとビビっている私に振り向き、まだ配属されて半年しかたたない小僧の私に向かって

『おい!!杉!!』

と呼ばれました
驚いてビビっている私は何か失敗を私もしたんだと殴られる覚悟でシェフのところにすっ飛んでいきました。

すると
『わりーな、御客様のテーブルまで行って謝ってきてくれねーいかな、お待たせしているので説明してきて欲しいんだ、俺が旨いパスタを作るからよ、わりい、たのむわ』

私は予想外の言葉と、御店の真髄である御客様を大事にし料理に拘る職人魂に触れ、大役を糞小僧に託して頂いた事に感動して言葉もありませんでした
私は御客様のテーブルに行き、ご説明と謝罪をしに行ったのですが人生で初めての深い感動に言葉を発すると泣き出してしまいそうで、結局何も言えず引き下がってしまいました。
引き下がった結果、なにもしていない私はシェフにこっぴどく叱られてしまいました😆😆

この経験は瞼を閉じると今でも鮮明に思い出し感動が蘇ります。

私にとって大きな転換期でした。
そんな恩師は縁あって北海道に主戦場を変えて御店を開いていたのですが、私と同様なトラブルに巻き込まれ店舗を失いました

ところがさすが古き職人魂でただでは倒れず、
北イタリアトスカーナ特有のパン製造の技術を習得している事から、通販でイタリアにまつわるパン屋さんを始めています





私からすると、さすが‼️と感動しきりと、御姿が写真にあり拝見すると背筋が伸びると同時に凍り付く感覚ですらあります。



恩師がどんな環境でも立ち上がり拘った料理を提供なさる姿を見ると、体が震え心の深いところから無限の力が湧き出します。

ちきしょう‼️
俺はいったい何してんだ馬鹿野郎‼️
シェフに負けんじゃねー
下向いてんじゃねー
立て馬鹿‼️
そんな悪態を自分について奮い立ちます。

小澤シェフ、俺も頑張ります‼️
負けませんよ‼️
私は良い出会いに恵まれているとつくづく思い感謝を心に刻みました。