今日は本当いろんなことがあった。
疲れた。
こんな日は早く寝ちまうに限るな。
 

 

ちげーだろ!



いつもならとっと寝てしまうところだが、今日はそんなわけにいかねえ。
それにもう真夜中とっくに回ってるし。
これから
長年守ってきた童貞と決別するんだ、俺。



風呂に入っても胸のバコバコは収まらず、余計に血流が良くなりさっきより心臓が破裂しそうだ。
一応、勝負パンツとパジャマで決めて、平静装ってタオルでガシガシ頭を拭きながらカッコつけて風呂から出た。

江藤は卓袱台に可愛く肘をついてテレビの深夜番組見ながら、ケラケラ笑っていた。
こいつやっぱ最強かも。
俺にはそんな余裕ないぜ。

冷蔵庫からペットボトルの水を取り出して、一口飲み、卓袱台において、押入れに向かおうとしたその時、

「お布団敷くの手伝うね〜♡」

なんて江藤が言うから、思わず

「サンキュ」

と、いつもの調子で言ってしまった。
なんか俺たちベテランカップルみたいじゃねえか?


それから仲良く布団を敷いて、どういう訳か二人して布団の上に正座している俺たち。

「ねえ、一つ聞いてもいい?私初めてなの。真壁君の初体験は?」

はあ?お前、なんてすっとこどっこいな質問するんだ?!

「ねえ、教えて」

「知り合ってからほぼ同じ時を過ごしてきて、俺のどこにそんな時間あったんだよ?結構、自由時間のない波乱万丈な人生送ってんだけど」

「だってー、今年の夏、私が打ちひしがれてた間は?真壁君、女の子たちに猛アタックされてたの知ってるんだから!手当たり次第遊んでたって噂もあったし」

「はー?いい加減にしろよ。お前ら女は話をつくるつくる!俺、毎日、部活の後、ジムでしぼられて、その後バイトで突貫工事やって、そんな体力ねえよ。あの頃は他の女のことを気にとめる余裕なんてどこにもなかった」

なんで?

「なんで?ってお前なー。俺もお前と離れて相当きつかった」

「本当?」

「ああ、あの時はあれが最善策だと思ったけど、すげー後悔した」

「あの後も私のことを思っててくれたってこと?」

「ああ」

「でも、今も部活、ジム、バイトの日々でしょ。くたくたに疲れててそんな体力ないんじゃないの?」

「お前は特別。それに、ちょっとくらい魔力を使っても。あいててて

江藤は俺の口をつねった。

「じゃあ、真壁くんも初めて?」

「ああ」

「同じだね」

あれ、あれだけバコバコしてた胸のドキドキがちょっとおさまってきたぞ。
俺は主導権を取り戻すべく、深めのキスをして、布団に江藤を倒した。

「もう一つ聞いていい?」

「ああ」

「真壁くんがやりたくて、でも私があやふやにして帰ちゃった日とかどうしてたの?日野くんのエッチなビデオで発散してたとか?」

「お前な、調子にのるなよ!いい加減怒るぞ!!人の気も知らないで!!」

「じゃあ、どうしてたの?」

「そ、そんなこと…、お前は知らなくてもいい!」

「鈴世に聞いたんだけど、そういう日は色々想像してお風呂でとか…。真壁くんも?」

「はあ?!マセガキめ!!お前ら姉弟でどんな会話してんだよ!!!そんな下品な会話、俺、アロンとだってしたことねえぜ!」

「嘘よー!フィラさんからダダ漏れよ!!様子がおかしいからサンドに探らせたらアロンてば、真壁くんちに遊びに来る日は魔界中のエッチなレンタル屋に入り浸ってお土産を物色してるらしいから」

あんの野郎!

「ああー、俺、もう脱力だわ。さっきも言ったけど、俺も初めて。ビデオとか見て知識はあっても、色々想像しても、現実には初めて。これからすることすら、手探り状態。でもさ、お前の想像するものと違っても、俺に幻滅しないでくれ。だから…」

もう一回、キスをした。

「あれー?だめだー、また緊張してきたよ、真壁くん。心臓破裂しそうだよ。真壁くんはドキドキしないの?」

「俺もさっきまでヤバイくらいドキドキしてた。今もちょっとしてるけど」

と言って江頭の手を俺の胸元に置いた。

「よかった〜。真壁くんも同じだー」

「ああ」

「ねえ、お酒ある?飲んだら緊張おさまるかな?」

「ねえよ、そんなもの。お前、飲んだらとんでもなくなるだろ」

口封じのキス。
あいつの呼吸に合わせて徐々に深く口付ける。

「真壁くんてズルい。いやっていえなくなったじゃない」


俺は、小さな花柄の模様の真新しいパジャマのボタンを外しにかかった。
江藤の白い肌がだんだん露わになる。
あれ、なんだこれ?
風呂上がりだというのに江藤はブラジャーをしていた。
またハードルを高くしやがった。
ホックの外し方なんて知るかよ。
もう、冷静に考えて外す余裕なんてねえよ。すまねえ、ここは力を使わせてもらうぜ。

江藤の全身が露わになろうとした時、また江藤が話し出した。

「ねえ、真壁君、電気消して」

「いやだ、お前を見たい」

「ええ、恥ずかしいから、お願い」

「恥ずかしいのも、感じてるのも俺に見せて。どんなお前も恥ずかしがるな」

俺は力を使ってほんの少しだけ部屋を暗くした。

「なあ、江藤、これから先、やり始めたら俺は止まれない。まだ迷ってるなら、止めるなら今だぞ」

「ううん、いいの、続けて。我が儘言ってごめんね。私も真壁君とそうなりたい。大好きよ」

「俺も」

俺は、これまでになく激しいキスを降らせながら、俺を覆っていたパジャマを脱ぎ捨た。

「可愛すぎるよ、お前」

「真壁くんからもっとそういう甘いセリフ聞きたい」

「そんな余裕ねえよ。また今度な」

「けーち」

それから俺はあいつの肌を撫で唇を這わせ、無我夢中で初めての快楽の世界へと溺れていった。

 

 

 


これからはガンガンだからな。