快適な個室でゆっくりと読書をしていると看護師さんが入ってくるなり、素っとん狂な声を上げました。

 

「え?この部屋、なに?いい匂いがする!アロマですか!」

 

「そうですよ。ジジイの親父臭がこもると気持ち悪いので、エッセンシャルオイルです。」

 

「めっちゃオシャレじゃないですか~。女子は大好きな香りですよ。」

 

「はい、女子力高いオヤジですから。」

 

「あはは~。いいですね~。この棟はお年寄りばかりですから、オヤジと言っても一番若いですよ~」

 

「それは、嬉しいですね~」

 

とたわいもない会話をして、静かな時間がやってきました。

友人が入院前に渡してくれたのは

「あした死んでも後悔しないためのノート」(ひすいこたろう著)

 

「なんでこんなノートくれたんだろう。」

パラパラと読みながら、時折瞑想してあっという間に夜中になっていました。

 

お腹に違和感があるもののお通じはありません。

看護師さんからお通じがあったらナースコールをするように言われていました。

どうも最初に出てくるウンコを気にしているようです。

 

朝になると心地よい日差しで目覚めました。

本当に寝心地の良い部屋です。

 

看護師さんが来て体温と血圧を測ります。

血圧が高いのはいつものことですが、なんと170-110。これはまずいという感じです。

 

そのまま一階へと降りてレントゲンを撮りにいきます。

すると、年老いた修道服のシスターが静かに座っていました。

 

さらに進むとまたシスターが。

レントゲン室の前にもまたシスターが。


確かにここはミッション系だしな~。

でもシスター多すぎない?

 

私はなぜかシスターたちと目が合うたびに会釈をして通り過ぎました。

 

そしてエレベーターの前のマリア像。

ふと目を合わせるとなぜか目があってしまったのです。

すごく涼やかな目をしていました。

 

やがて夕刻になり、ウンコが出た私はナースコールをします。

するとやってきた看護師さんは少し困った表情になりました。

 

下血がひどいのです。

血圧を測ると185-120。これはまずいという顔をして、すぐに医師のところに行き降圧剤を持ってきました。

 

「すぐにこれを飲んでください。もう我がままは言えません。血圧が高いと出血が止まらなくなりますよ。」

 

降圧剤を飲むことをのらりくらりと逃げていた私も観念するしかありません。

有無も言わせず目の前で飲まされ、とにかく安静にするように言われて大人しくベッドに入ります。

 

しばらくウトウトしていると看護師さんが来て再度血圧を測ります。

189-122

もう一度測ると、ピーっといって測定不能。

 

「なんで~。どうして効かないんですかね~。」

 

確かに私は普段は150-100くらいですから、それでも高いと怒られるんですが、これだけ高いと看護師さんも困りますよね。でも私もどうすることもできません。

 

すると違う看護師さんが来て、あまり急に下げてもよくないんだけどね~と言いながら少し強めの薬をくれました。

二つも飲んで大丈夫かな〜。

と一瞬思いましたが従うしかありません。


飲んで本を読みながらしばらくボーっとしていると、意識が飛んで私は天井から自分の姿を見ていました。

 

どうやら幽体離脱したみたいです。

久しぶりの幽体離脱ですが、昔はよくしていたので慌てることはありません。

 

しかし、しばらくして様子を見に来た看護師さんが慌てて部屋から出ていきました。

バタバタと医師とナースが部屋に駆け込んできます。

何やら慌ただしくなって、心臓マッサージなどを始めました。

それを私は天井の隅から見ています。

 

「あれ~~!どうやらやばくない???これって、本当に死んじゃった??」

 

と思っていると、場面がパッと変わり葬儀場の様子になりました。

そうです。私の葬式が行われていたのです。

 

「え~~~!死んでるじゃん!!あら~。どうしよ。」

 

「死んだとなると~。会社には娘が言ってくれるだろうし、アポの入ってるお客さんにも会社のクラークが断りを入れてくれるか。あ~facebookにも娘がオヤジは死んだと書いてくれるか。まあ、そんなもんで何とかなるか。しょうがないよね~。」

 

と思っている矢先、なんと葬式の場面にモヤがかかり、空間は薄~くなっていって、消え始めました。

そして声がしたのです。

 

「そんなん。死なせんよ!!まだ、お前何~にもやってないやろ?クンダリーニ上がっても、な~んもやってないよね。やるって言ったこと、何もできてないじゃん。そんなに簡単には死なせません~。はい、そういうことで~。いってらっしゃい!!」

 

すると、場面は変わり、暗闇の中でピンクの服を着た美しい女性が手招きをしているのです。

インド神話に出てくるようなちょっとぽっちゃりした女神です。

マリア様のような天使の姿ではないのです。

そしてフラフラとその女神に近づいてハグしようとしたら、フッと目が覚めたのです。

 

もう空は明るくなっていて、淡い光が窓から差し込んでいました。

2月29日の朝です。

 

そしておもむろに左手を開くとそこにラブラドライトの原石を握りしめていました。



一個だけ持ってきた原石です。

まさにラブラドライトの効果と言われる「意識の変革」がおこったのかもしれませんし、悪夢であったのかもしれません。

 

看護師さんがきて血圧を測ります。

131-90

「やっとまともになりましたね」

 

そうかもしれないけど、意識は飛んでたんだよね~。

 

しばらくしてある友人からメッセージが入りました。

どうやら、私が大学病院へ救急搬送されて死ぬ様子をビジョンで見たと。

 

「もう、ほんとに死んだかと思ってしまいました!娘さんがfacebookに死亡の報告でもしてないかと慌てて見ましたよ~」

 

なんでそんなビジョンを見るかな~。

 

さらに驚愕は走ります。

朝から開けたfacebookのページに8年前の自分が書いた記事が上がってきました。

つまり閏年なので、上がったのは2回目なわけです。

その記事の内容。

 

「死神が迎えに来て、最後はその姿が女神に変わる」

 

という内容なのです。

 

そんなものを8年前の同じ日に書いていたとは。(以下記事です)

 



そんな変な話を無事に退院した私を迎えに来た娘にすると、

 

「確かにパパが死んだらfacebookで報告もするかもだけど、まだレクイエムに弾いてくれと言われているシャコンヌは練習してないから急に死んでも困るけんね。でも、それ死ぬはずのパラレルから強引にこの生きてるパラレルに移されたのかもね~。仕方ないからもう少し生きてください。」

 

と言われました。

娘もこんなことをサラリと言います。

 

そして、無事に退院の時に違う友人からメッセージが入りました。

 

「入院、退院のこと聞いて引いて出たカードはアゼツライト。宇宙の中心セントラルサンのエネルギーが降り注いでいます。存分に受け取ってください。」

 

もう、本当に何が何だかわからない次元を行き来した数日間でした。

 

生きること、死ぬこと、その単純さ、複雑さ。

見えない世界とのつながり、パラレルワールドのジャンプ。

過去からのメッセージ、未来への導き。

 

狭間の時間の2月29日だからこそ得られた経験なのかもしれませんね。

 

                    了