「アマテラスの子であるオシホミミについてはあまり知られていませんが、お話しの中で出てくる内容からして実際にはかなり活躍された方であると思えるのですが、そのあたりを教えてください。」

 

「オシホミミはアマテラスとセオリツヒメの子であり跡取りです。古事記にもあまり出てきませんが、アマテラスとセオリツヒメが手塩にかけて育て上げた立派な王です。幼少時はイザナギに預けられて帝王学の教育を受けていたこともあまり知られていません。この辺りは古事記からも日本書紀からも全部削除されています。アマテラスが興したヤマトの国は、二代目オシホミミの人格が素晴らしく、政も素晴らしかったゆえに大きく発展繁栄していったと言っても過言ではありません。どの組織も初代に比べ二代目は目立たなく描かれますが、大きく成長した組織ほど二代目が卓越した能力を持ちすさまじい努力を行っていたことが多いのです。」

 

「オシホミミが産まれた時はすでに上の兄弟がいたのですよね。」

 

「はい、オシホミミが産まれた時には、すでに腹違いの子、モチコの子の長男ホヒ、ハヤコの子の三姉妹がいました。」

 

「ということは、本来ならばモチコの子のホヒが跡取りとしてアマテラスを継ぐことになっていたわけですね。にも関わらずオシホミミが後を継ぐことになったということはやはり大きな理由があったのですか?」

 

「オシホミミを跡取りとして決めることは、実は早い時期から決まっていました。一般的な人には分かりにくいことですが、アマテラスの時も行われましたが、天皇となるべき皇太子を迎えるときはしかるべき手順を踏んでの神事が延々と行われ、それに対しての天界からのメッセージもあるのです。世界的な救世主と言われる方々、イエスキリストや仏陀もそうですが、必ず天界からのメッセージを受けたうえで周囲が準備を整え誕生してくるのです。このオシホミミもしかるべき神事がアマテラスと周りの神官たちによって行われ、生まれるべくして生まれてきたのです。また母親となるべき母体の霊格によっても違いが出てしまいます。どうしても霊格の高い魂は母体の霊格が低いと宿ることはできません。セオリツヒメという母体が現れ、その母体が清らかであるがゆえにオシホミミを誕生させる環境が整ったともいえるのです。」

 

「古事記にはオシホミミの人物としてのことなどは記述がないのですが、どのような人だったのですか?」

 

「オシホミミは先ほど話したように非常に有能で人徳も高い方でしたが、生まれてすぐの幼少期には身体も弱く、周りもかなり心配した乳児期を過ごしました。オシホミミが産まれたのはアマテラスが伊勢の井澤に落ち着き正室セオリツヒメを迎えて治世を始めたころです。幼少期になると祖父であるイザナギに預けられ教育を受け、イザナギが天に帰ると叔母のヒルコヒメにも預けられ情操教育を施されます。この辺りも他の子たちとはすでに待遇が違います。そして成人し独り立ちしたころにオオナムチの一族が津軽へと移住することになるのです。」

 

「オオナムチの出雲の一族が国譲りをした後もオシホミミが治世をすることになるのでしょうが、そこは大丈夫だったのですか?」

 

「実際にはオシホミミを補佐する形でタケミカズチ(鹿島神宮)とフツヌシ(香取神宮)がアマテラスの命によりついていましたので反乱も起きることはありませんでした。オシホミミはタクハタチチヒメをはじめ十二人の后をもち、アマテラスより三種の神宝(三種の神器)が授けられます。その際にアマテラスからオシホミミに対して御言宜(みことのり)が伝えられます。これは~自分自身の身と心を常に正し、日々に民を慈しんで祭りごとに心を尽くしなさい。そのためにこの真光り瓊(まかりたま)をそばにおいておくのである。そうすれば天の神々の御霊の導きにより、心は清らかに常に天とつながり正直を保つことができるであろう。~という内容のことを言われました。ここで出てくる、真光り瓊(まかりたま)が曲珠(まがりたま)、勾玉(まがたま)となっていき、天皇が常にそばに置いておくべきものとなったのです。」

 

「三種の神器の勾玉はそこから来たのですね。」

 

「そうです。このアマテラスの語った内容は日本書紀にも記述されていますが、本来伝えたかったことは、真光り瓊の意味するところはもうお気づきでしょうが、己自身の裡に広がる宇宙の中心に光る真の珠ということであるのです。そこと常につながっていることが一番重要であると。そことつながりさえすれば、神々のご加護もあるしブレることもないということ。そのようなことを後継のオシホミミに伝えたかったのです。そしてオシホミミは言い伝えに従い、常に自己を省みながら、その徳の高さから得る信頼をもとに人々がどんどん活躍できるような人事を行い、国を大発展させていきます。」

 

「オシホミミはその後、二人の子供に後を譲っていくのですよね。」

 

「そうです。長男ホノヒカリと次男二ニギの時代へとなっていきます。このあたりのことは前回も少し触れましたが、兄弟で仲良く治世を行っていくようにと、やはり御言宜を残して箱根の山にて最後を遂げます。」

 

 

                        次回につづく