ときドキ時計SS.04 仙台梨々子『チャイムが鳴るまでは』 | 《ときドキ時計》公式STAFF BLOG

ときドキ時計SS.04 仙台梨々子『チャイムが鳴るまでは』

みなさんコンバンハ・・・
担当Pの「sakura'萌え'zx」です。

さぁ!今日も出します!!!

ときドキ時計 CV.14 仙台梨々子(女教師)CV:中原麻衣

SS.04 仙台梨々子『チャイムが鳴るまでは』
シナリオ:関根聡子


時美ヶ丘は時を知らせる『時間の町』――。

この町ではどこにいても、時計の針と鐘の音色は一秒も狂うこともなく、軽やかに奏でられる――。

……なのにっ! なのにぃいいいーーっっ! 

遅刻っ! どうしましょう、どうしましょーーう!

ベッドから飛び起き、目覚まし音が鳴らなかった時計を睨みつけ……てる場合じゃない!

早く着替えて、出勤しなきゃっ!

しかも今日は新学期……! 先生は、先生なのにーー!

慌ててクローゼットを開く、こんなことなら昨日から準備しておけばよかった!

ええっと、今日は体育館で担当教科別に挨拶があるはずだから~~。

えっと、えぇっと、パリッとしたスーツに、ラメの入ってない黒のヒールと……。

きゃあぁあ!

ビリビリリ……。

履いてるそばからストッキングがやぶけていく。 

「もうっ生脚でいくしかない……!」

じゃあヒールじゃなくてサンダル? あ、でも校舎では上履きに履き替えるから……。

先生がウンウン考え込んでいると、バタバタと学生服を羽織った『彼』が飛び込んできた。

『彼』も相当焦っているらしく、まだ学生服の上着ボタンが止められていない。

が、先生が生脚で出勤しようとしているのを見るなり、叫んだ。

「生脚はダメです! ちゃんとストッキングでガードしてください!」って……。

急いでいても、見てるところは見てるのね……今時の男子学生って皆そうなのかしら?

……だとしたら、凄い洞察力ね。

って、感心してる場合じゃないわっお化粧だってまだ出来てないのに!

『彼』ったら、先に起きたのなら起こしてくれればよかったのに……。

だって……せっかく一緒に寝てるんだし?

私はちょっとふて腐れながらも支度を進めた。

えぇっと~~……。

お化粧は薄くナチュラルに、香水はNGだけど……コロンくらいはいいかしら?

その間にも、『彼』ちゃんと黒の低めのヒールを選んで出しておいてくれた。

女性の身支度の大変さをよくわかっているらしい。

あぁ『彼』ったら、ちゃんとゴミ出しまでしてくれてるみたい……。

なんかもう、涙でマスカラが……今日はウォータープルーフにしようかしら……。

って、そんな場合じゃなかったわ!

でも時間はなくても、朝食はとらないと!

『彼』が焼いておいてくれたトーストに、マーガリンをササっと塗ってレタスを置く。

あとは昨夜の作っておいたポテトサラダを乗せて挟んで~っと。

梨々子先生特製! 即席ポテトサンドの完成ー!

ザクッと包丁で半分に切って、『彼』の口に放り込む。


×  ×  ×


玄関のドアに鍵をかけたら、あとは二人で学校まで走るだけ!

もう始業のチャイムが鳴る時間!?

大きく高い時計台は、時美ヶ丘のどこでも見ることができる。

けど、時間がわかっていても遅刻するときはするのよね~……今日から新学期なのに……。

遅刻するおっちょこちょいな人なんているはずもなく、通学路を走っているのは私たち二人だけ。

先生の手を引いているのは一緒に暮らしている『彼』で、『生徒』のひとり。

そう、『彼』は『生徒』……! なのにっ!

先生が生徒に起こされて、しかも手まで引っ張ってもらっちゃってるこの状況って、どうなの!?

時美ヶ丘学園に着いたら、私たちはロミオとジュリエット――女教師と男子生徒の禁断の恋!

せっかく昨日から作ったお弁当だって一緒に食べられない運命……!

……ん? ……お弁当?

「あーーー!」

どうしましょう、お弁当忘れちゃった! せっかく昨日遅くまでかかって下ごしらえしたのに!

先生は、先生なのに! 『彼』とは言え『生徒』にお腹を空かさせるなんて!

と、取りに戻ろうかしら? ……でもそうしたら完全に遅刻しちゃうしっ……。

『彼』が「忘れ物ですか?」と聞いてきた。

なっなんて勘のいいコなの!

まぁ、これだけ手に汗かいて百面相で走ってれば気付くかもしれないけど……。

でもだめよ、だめだめ! 甘えちゃだめ!

先生は、先生だもん、ちゃんと生徒を正しい道に導かなくっちゃ!

一緒に遅刻させるわけにはいかないの!

『彼』の手を離すと、忘れ物をしたことを伝えて引き返そうとした。

そうしたら、「自分も行きます!」って、だめよ! だめだめ! 

え? 「先生ひとりじゃあぶないから」って?

「何もないところで転んだり、車にはねられたりしそうだから」って??

し、心配してくれてるのよね? そう、じゃあ……って、いやいやいやっ嬉しいけどだめ!

『彼』は先生の腕を掴むと、そのまま一気にいま来た道を引き返した。

ぅうう~~……思わず顔が赤くなってしまった。

なんなの? どうして先生より年下なのに、なんでこんなしっかりしてるの?

学園に着けば、先生と生徒、だけど、今だけ――今だけは――

「じゃあ、一緒に遅刻してくれる?」

それが当り前であるように、『彼』は笑顔でうなずいた。

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